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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第3章 女神と親友

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森の死神の最後

 森の死神の怒りが頂点に達したからなのかどうか分からないが、体を黒いオーラが包み、異様な気配を漂わせていた。


 分身が全てやられた割には、次の分身を増やす素振りも無い。そして、森の死神はゆっくりと俺の方へと歩き始めた。今までのように駆け回るのではなく、ゆっくり、一歩、一歩と近付いてくる。その異様な光景に俺は気圧され、構えを取るだけで、動けなかった。


「威圧感が上がった。今まで本気じゃなかったということか?」


 確かに今思えば、神聖樹に向かう前に戦ったエンペラータイガーよりスピードやパワーは上だが、死神と呼ばれる程の力の違いは感じなかった。


「ここからが、本番なのか?」


 森の死神の黒いオーラがゆらりと揺れたかと思うと、姿が消えた。


「消えた!?」


 スピードが上がった? いや、違う。気配が消えた。逃げた? それも違うだろう。あの怒りに満ちた表情。絶対に俺を殺すつもりだ。


「<探知>」


 駄目だ。索敵スキルを使っても奴が見付からない。森の死神の気配を感じられないまま、五分位の時間が経過した。


 ミコトたちもこっちの状況が分からないからか動こうとしていないようだ。


 どうすればいいか分からない状況で一切気を緩める事も出来ず、じっとしていると、汗が頬を伝い、顎からぽとりと一滴地面に落ちた。


 ゾクリ。


 背筋に悪寒が走る。咄嗟に前へ転げるように倒れ込むと、森の死神の右前足が空を切った。


 背中に痛みが走る。どうやら爪が少し掠ったらしい。幸い傷は浅かったので、直ぐに<癒やしの光>で傷を癒やす。だが、俺を攻撃してきたはずの森の死神は居ない。


「くそっ。何処だ!?」


 辺りを見渡しても、姿は見つからない。気配も感じない。これが、死神と言われる理由か。姿も見えず、気が付いた時には命を刈り取られる。この能力、飛爪なんかより厄介だ。一体、どんな能力なんだ。


「落ち着け。焦ったら負けだ」


 息をふぅと一息吐くと落ち着きを取り戻し、森の死神の能力について考察を始め、独り言ち始めた。


「まず、あいつの気配が完全にしない。つまり、ここに居るけど(・・・・)居ない(・・・)という事か。異空間に隠れている? それなら、<探知>にも引っかかる筈がない」


 そうだとするとノゾムの<ディメンジョンスラッシュ>なら、あいつを攻撃出来る可能性がある。


「そういえば、あいつら何やっているんだ?」


 横目で見ると、ノゾムがこっちに走ってきているのが見えた。すると、俺の意識が外れるのを待っていたと言わんばかりに、視線の反対から森の死神の殺気を感じ、すぐに視線を戻せば、右前足が、下から振り上げられる所だった。


「ちぃっ!」


 すぐに後ろへ飛ぶことで、その攻撃もギリギリ躱す事が出来た。出来たが、本当にギリギリだ。○.一秒でも遅れていたら、その鋭い爪で体は引き裂かれていただろう。そして、攻撃が終わると共に右前足が姿を消す。


「いつ来るか分からない攻撃にカウンターを当てるなんて流石に無理だな」

「アスカ、大丈夫か?」


 ノゾムが漸くやって来た。さっきの森の死神の攻撃を見て、俺と背中合わせになる形で、お互いの死角をカバーする。


「今の所はな」

「そうか。それより、お前、そのおっぱい。やっぱり大したものだな」

「お前、戦闘中に何言っているんだよ」

「いや、だって、しょうがねぇだろ。見えるんだから。それ見て何も感じない男は居ないって」


 見える? ふと下を見てみたら、服がばっさり切れていて、切れ目から俺の胸がもろ見え状態だった。


「さっきの攻撃が掠っていたのか。危なかったな。それより、俺の胸にいちいち見惚れているんじゃない」

「そんなこと言われてもなぁ。ま、だから、背中向けたんだけどな」


 そういう意図か。死角をカバーするためと思っていたのだけど、なんか微妙な空気が流れ始めてしまった。


「それより、アスカ、あいつとの戦い早く終わらせられないか?」

「何でだ?」


 二人で会話していると、俺たちの足下から森の死神の気配を感じた。


「ノゾム!」

「分かっている!」


 俺たちは、その場で跳躍すると、森の死神が大きな口を開き、足下から現れた。


「おらっ!」


 ノゾムが大鎌を一振り。だが、その一振りは空を切るだけ。刃が触れる前に姿を消した。


「うわ、めんどくせぇ。早くどうにかしないといけないっていうのに」


 着地した瞬間に再び森の死神が足下から両足を伸ばしてくる。俺とノゾムは反対に飛び退き、その攻撃を躱す。


「何で、早く片付けないといけないんだよ。さっきも聞いたけど」

「ミサオのPDだっけ? あれが暴走してな、今、ミコトが<ホーリーバリア>で取り押さえているんだ」

「何でまた暴走なんて?」

「ミサオが気絶しているんだよ。さっきの爆発、あれ、PDがやったんだけどよ、その直後にぶっ倒れて、PDが暴走始めた」


 いまいち状況が掴めないが、早々に森の死神を片付ける必要がありそうだ。


「分かった。なら、とっておきの一撃をあいつに喰らわしてやる。ノゾム、あいつをおびき出せないか? <ディメンジョンスラッシュ>で引き摺りだしてくれ」

「成程。いいぜ、任せな」

「よし、じゃあ、準備する。俺の合図と共に頼むぞ。<連環>!」


 レベル三十になって取得した最後の取って置きのスキル。<連環>。闘気と魔力を連結させ、一時的に全てを闘気として使うスキルだ。つまり、<烈波>二発以上分の威力を一撃で放てる。まさに<烈波>のためにあるようなスキル。


 俺の体から紫の光が立ち上がる。闘気と魔力が混ざり合うとこんな色に光るのか。まだ完全に混ざり合うまで時間がかかる。


「危ねぇ!」


 俺の足下から右前足が伸びてくる。その前足に向けて、ノゾムが大鎌を振ると、俺に届く前に再び姿を消す。いい加減にしろと言いたい。


「逃がさねぇよ! そこだ!<ディメンジョンスラッシュ>!」

「ば……、まだ準備出来てない。早ぇ」


 ノゾムが大鎌を振ると、俺の影から森の死神が飛び出して来た。よく見れば、右前足に傷がある。ノゾムの攻撃が掠ったようだ。


「掠めただけか。っとぉ!」


 森の死神を覆っていた黒いオーラが消え、空中からノゾムに向けて飛爪を放つ。そういえば、今まであれだけ攻撃していた飛爪を姿を消してから、使っていなかった。どうやら、あの黒いオーラを纏った時は、姿を消せる代わりに、飛爪を使えなくなってしまうのだろう。ノゾムは後ろに飛び退き、飛爪を躱すが、森の死神が放っていた次の飛爪を受けてしまった。


 何とか大鎌で防いだのか直撃ではないようだが、傷がかなり深そうだ。血が噴き出している。


「うぉおおおおお!」


 俺の目の前に着地し、こちらへと振り向いた森の死神の顔面に、右拳を叩きつける。


「<烈波>ぁっ!」


 <連環>で闘気と魔力が一つとなった一撃が森の死神の顔面に突き刺さる。オレンジの光が顔面へと浸透し、


「グルァアアアアアアアア!」


 体内で闘気が爆発すると、森の死神が断末魔を上げて、光の粒子となって消えて行った。


「勝った……」


 <連環>を使ったせいか、普段なら気を失わないようにOPを一残すのだが、全て使い切る羽目になり、OPが無くなった事で、気が遠くなっていく。


「駄目だ……、意識が……」


 目の前には大量の血を流し、地面に倒れているノゾムが視界に入るが、そのまま俺も気を失ってしまった。暫くして、気が付くと、ミコトが俺の傍に座っていた。


「あ、気が付いた。良かった」

「ミコト……。ノゾムは?」

「大丈夫。<ヒール>で傷を癒したから、今は眠っているだけ」

「そうか。ミサオは? PDが暴走していたんだろ?」


 ミコトは首を横に振ると、


「まだ気を失ったままなの。PDは、<ピュリファイ>を使ったら大人しくなったよ」

「それって、PDの中のモーリスが昇天してしまったんじゃ……」

「えぇっと、そうかもしれないね……」


 ミコトの目が珍しく泳いでいる。これはやらかしたっぽい。でも、暴走していたというからしょうが無いだろう。ミコトと話をしていると、ノゾムも起きて来た。


「アスカ、やったみたいだな。ミコトも傷を癒してくれてありがとう」

「うん。ノゾムも起きた事だし、トナペレ村に戻りましょう。ミサオを頼むわ」

「分かった。ったく、世話の焼ける奴だ」


 ノゾムは、ミサオを背負って、歩き始めた。俺も立ち上がると、足下に何か落ちているのに気が付く。


「おっ、久しぶりに素材ドロップしたんだな」


 それは、森の死神の爪と牙だった。それらを拾い上げ、俺たちはトナペレ村へと帰って行った。

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