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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第3章 女神と親友

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エンペラータイガーとの遭遇

 神聖樹の樹液を入手するため試しの宮殿から神聖樹の下へ向かってから三日目、トナペレ族の族長から気を付けろと言われていたエンペラータイガーの姿を見付けた。名前負けしないその体躯は、全長で五m程。大きな牙が口からはみ出している。虎というより、サーベルタイガーといった方が良いかもしれない。


「まだこっちには気付いていないみたいだな」

「大きいね」

「俺が試練で戦った鰐と同じ位のデカさだ」

「どうするの?」


 ノシノシと森の奥へと歩くエンペラータイガーを見ながら、俺たちは一戦交えるのか、回避するのかを話し合った。


 話し合った結果、トナペレ族の族長の言葉を信じ、まだ向こうがこっちに気付いていないのだから、無理に戦うまでも無いだろうという事で、姿が見えなくなるまで、じっとしていることにした。


「中々あっちに行かないね」

「倒した方が早くねぇか?」

「ノゾム、無理に戦って大怪我したら大変だろ?」

「ミコトの回復があるから大丈夫なんじゃないか?」

「私の回復魔術は蘇生術は無いの。もし、死んだらそれまでだよ」

「そうよ。ミコトの言う通りだよ。さっき皆でやり過ごすって決めたばっかじゃん」

「そうだけどよ……」


 少しずつ、ほんの少しずつ離れていくエンペラータイガーを見て、ノゾムは溜め息を吐く。


「さっさと神聖樹に向かいたいじゃん」

「いや、寧ろ戦闘になった方が時間掛かると思うぞ」


 正直な事を言うと、俺も腕試しに戦ってみたいとは思っている。


 思っているが、先の事を考えるとここであまり時間を食うのは得策では無い。


「少し回り込んで移動しようか?」


 エンペラータイガーの動きがあまりにゆっくりなので、いよいよ痺れを切らし、俺は皆に提案した。


「そうだな。戦わないなら距離を取りながら移動した方が早いな」

「そうね」

「賛成。あれ、スロー過ぎるよ」

「よし、じゃあ行こう」


 俺たちは前方のエンペラータイガーに気付かれないように大きく右に回り込みながら、移動を再開した。


 だいぶ遠回りをしたため、エンペラータイガーに気付かれる事なく、無事やり過ごす事が出来たようだ。


「それにしても、何であんなにゆっくり動いていたんだろうね?」

「さあな。モンスターの考えることなんて、分からねぇよ」


 ミサオとノゾムは、さっきのエンペラータイガーの様子を不思議に思っていたみたいだ。


「何か警戒していたようにも見えたね」

「そうか?」


 ミコトの言葉にノゾムが疑問の声を上げる。でも、そう言われると何かに見つからないようにゆっくり動いていたようにも思えてくる。


「あっ!そんなことより、あれ見て」


 ミサオが指差す方向を見ると木々の間から、一際大きな木がそびえ立っているのが目に入った。


「おぉ、でけぇ!」

「凄いね」

「あれは、やっぱり俺が試練を受けた時の大樹と同じなのか」


 まだ距離はあるが、近付いて来た事で、見えてきたようだ。ただ、神聖樹の先端は見えない。周りの木々がなくなれば別なのかもしれないが。


「さぁ、先に進もう」

「「「Ok」」」


 神聖樹の姿が確認出来た事で、足取りも軽くなった気がする。距離的には、明日到着する位か。


 この後、マンイーターとクレイジーモンキーに遭遇し、昨日と同様、無難に撃退。エンペラータイガーとはその後は遭遇することが無かった。そして、四日目。神聖樹の下に辿り着く予定だったが、そうはいかなくなってしまった。遠くから悲鳴や爆発音が聞こえてきたのだ。


「何か、このバラトレストに来て、このパターン多くないか?」

「そうね」


 俺のボヤきにミコトが同意する。


「どうするの?アスカ?」

「どうって、放っておくのか?」

「いや、流石に放っておく訳には行かないよなぁ」


 俺は溜め息を吐き、皆の顔を見ると、皆もしょうがないという顔で溜め息を吐いた。


「行くか」

「うん」

「人助けといきますかぁ」

「行こうぜ」


 悲鳴のする方へと駆け出した。悲鳴が聞こえたのは神聖樹のある方向からやや北西の方角だった。方角から、俺は嫌な予感がしていた。それは、エンペラータイガーが向かっていた方角だからだ。そして、その予感は的中してしまった。エンペラータイガーが人の集団を襲っていたのだ。そして、その集団はサウザート兵だ。


「おい、どうする?」

「エンペラータイガーとサウザート兵なら、無視しても良いんじゃない?」

「でも、セドニーもアルの本体と会えば戦争もする必要が無くなるから、助けた方が良いんじゃないの?」


 俺は暫く考え、


「そうだな。ミコトの言う通り、アルの本体とセドニーを会わせるのが次の目的だし、邪神との戦いに戦力として、必要になるかもしれない。助けよう」

「お前がそう言うなら、俺は構わねぇぜ」


 ノゾムとミコトはサウザート兵を救う事に賛成する。直接サウザートと戦争をすることになってしまったミサオは、まだ若干の抵抗があるようだったが、皆が賛成したことから、渋々了承した。


「よし、じゃあ行くぞ。ミサオ、牽制頼む」

「よぉおし!やると決めたら、早速、新戦力試してみよう!おいで!SD(スナイパードール)


 俺とノゾムが駆け出すのと同時に、ミサオが新たな人形を呼び出した。FDの上位体で、遠距離特化型の人形。呼び出された人形は、FDより一周り小さい体だった。


「前方のエンペラータイガーを狙って!」


 SDはコクリと頷くと左手をエンペラータイガーに向けて伸ばすと、左手に白光の弓が現れた。右手を白光の弦に掛け、引き絞ると同時にその手に白光の矢が現れる。SDは狙いを定め、十分に引き絞った弓から指を離すと、勢いよく白光の矢が放たれた。その矢は音も無くエンペラータイガーへと飛んで行くと、見事に左肩に命中、爆発する。命中した左肩からは血が大量に吹き出したが、その強靭な筋肉で圧迫止血をする。突然の矢と爆発でサウザート兵、エンペラータイガーが動揺している所に、アスカが<フラッシュムーブ>でエンペラータイガーの側面に現れる。


「魔力の矢か。ミサオ、やるな。負けてられないな」


 アスカの気配に直ぐに気が付いたエンペラータイガーが、アスカに顔を向けた瞬間、


「まずはこいつだ!<瞬迅>!」


 エンペラータイガーの顔面に超高速右ストレートを叩き込んだ。<瞬迅>。<疾風>の上位アーツ。スピードもパワーも<疾風>の二十五パーセント増し。レベルアップに伴って、取得したアーツの一つだ。元々のSTRが低い俺の一撃では、大したダメージは入っていないようだったが、それでも不意を突かれたような形で、顔面に攻撃を受けたエンペラータイガーの注意を引くには十分だった。


「ほらっ、早く逃げろよ!」


 ノゾムがサウザート兵に怒鳴りつけると、サウザート兵の一人が今がエンペラータイガーを倒す好機とばかりに、剣を構え、向かって行った。


「たかがモンスターの分際で、俺たちの邪魔をしやがって!おらぁ、死ねぇ!」


 エンペラータイガーは、向かってくるサウザート兵をチラリと視線だけ向けると、尻尾を一振り。その間にもアスカに向けて鋭い爪を振るう。


 アスカのバックステップによって、爪は空を切るが、尻尾はサウザート兵の首に直撃すると、ボギッ、鈍い音を鳴らし、首をあらぬ方向にへし曲げ、吹き飛ばす。


「尻尾であの威力!」


 一発も攻撃を受ける訳にはいかなさそうだ。ノゾムも追いつき、エンペラータイガーとサウザート兵の間に入り込み、二人で囲む。


「アスカ!やるぞ!」

「あぁ。虎狩りだ」


 エンペラータイガーに構え直し、エンペラータイガーもその獰猛な牙を俺に向けて身構えた。

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