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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第3章 女神と親友

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試しの宮殿(アスカ)1

 アスカが部屋へ入ると、部屋の中心に巨大な木が一本そびえ立っていた。その木は直径で百メートルはありそうな本当に巨大な木だ。神樹と言っても過言ではない。巨木に感心していると、背後の扉が消えたことに気が付く。


「まぁ、予想はしていたけど、部屋というより、異空間に転移させられたんだな」


 しかも、これは扉を通った者の力に合わせて自動で転移先を決めるものだろうと、予想を立てていたアスカは巨木に驚いただけで、この部屋自体には全く動じていなかった。


 その巨木の枝から、一羽の鳥のようなものが飛び降りてきたのが見えた。降りてきたのは真っ赤な鳥で、体長は一メートルくらい。尾羽根が長く、姿はオウムを連想させる。


「この鳥が俺の試練の相手なのかな?」


 アスカは鳥を<鑑定>してみる。その鳥はイミテートパロットという名前のモンスターだった。モンスターとしては、特に強い訳でも無さそうだ。


「このモンスターが俺の試練? いくら俺のステータスが他のメンバーより低いからって、舐め過ぎじゃないのか?」


 アスカが試練が簡単そうで自分を過小評価されたような気がして、少し腹を立てた。だが、それはアスカの思い違い。他のメンバーよりもアスカの試練は過酷なものである事をアスカは知らない。


「直ぐに終わらせるよ」


 アスカは、キマイラブロウとフェザーピックルを装備し、<アクセルブースト>、<パワーライズ>を使うとイミテートパロットに向かって駆け出す。イミテートパロットは、慌てる様子もなくアスカの様子を見ていた。


 アスカの右拳がイミテートパロットの顔面に届く直前、イミテートパロットの体が輝き始める。


「何だ? こいつ、まさか」


 アスカの右拳はイミテートパロットの顔面に届かなかった。というよりも、アスカの右拳は掴み取られ、攻撃を防がれた。


「おいおい、勘弁してくれよ」


 掴まれた右拳を振りほどき、後ろへと飛び退く。イミテートパロットは鳥だ。手を掴まれるなんて有り得ない。だが、今アスカの目の前にいる者なら掴むことも可能だ。


「何で、俺なんだよ」


 そう。アスカの目の前にいるのは、アスカ。自分と全く同じ格好をしている。そして、巨木から三体のイミテートパロットが更に降下してくる。


 緑、黃、青とそれぞれ色の違うイミテートパロットたちも地上へと辿り着くと、輝き始める。そして、ミコト、ミサオ、ノゾムの姿へと変化するのだった。


「まさか、自分のパーティと戦えと。無茶苦茶な試練だな」


 ノゾム(偽)が大鎌を構え、アスカへとその鎌を振るう。アスカは体を半身捻り、振り下ろされた大鎌を躱すと、反撃に出る。くるりと反転しながら裏拳をノゾム(偽)に叩き込んだ。


「くそ。姿だけじゃないのか」


 裏拳を食らっても全く怯まないノゾム(偽)を見て、ステータスもノゾムと同じになっていると判断すると、アスカは、ノゾム(偽)の腹を蹴り、その反動で後ろに飛ぶ。

アスカが飛び退いた後を、炎を纏った拳が空を切った。


「ステータスが同じならやっぱりアーツもそうだよな」


 アスカ(偽)が右拳に<紅蓮>を使い、ノゾム(偽)の隣に立っている。さっきはおそらく<フラッシュムーブ>で距離を詰めて来たのだろう。自分のスキルとはいえ、中々厄介だ。自分の偽物とノゾムの偽物に注意を向けていると、二人の後ろから殺気を感じ、横に飛ぶ。それに合わせてノゾム(偽)も動き出す。


 アスカの立っていた場所に闇の矢と水の矢が突き刺さった。あのまま動かなければ、二つの矢を受けていただろう。


 ノゾム(偽)が大鎌を連続で斬りつけてくる。縦に、横に、斜めにとアスカはそれを全て紙一重で躱す。一発でも当たれば無事では済まないからだ。そうしていると、背後からアスカ(偽)が<フラッシュムーブ>で現れては、ノゾム(偽)の攻撃に合わせるように連打してくる。


「連携が様になってるな! 本物以上だよ! くそっ」


 二人の連携に隙が全く無く、反撃すら出来ない。突然、二人が攻撃を止め、後ろに飛び退くと、上から闇の矢が降ってくる。慌てて、飛び退けば目の前に水の矢が迫っていた。アスカの動きを読んで、ミコト(偽)が撃っていたのだ。


「ちぃっ」


 首を横に倒し躱しはしたが、頬を掠めたのか、血が滲んでいた。


「この試練、厳しくないか?」


 俺たちにもこんな連携をしろとでも言いたいのか? そうだとしても、こんな風に簡単に連携出来るものじゃない。いや、今はそんな事を考えている場合じゃなかった。目の前の戦いに集中しないと死にかねない。


 とにかく、まずは一体でも倒して連携に少しでも隙が出来るようにしなければ。ノゾム(偽)が大鎌を後ろに構え、その場で横に振った。


「<ソニックエッジ>か!?」


 大鎌の軌跡から斬撃の軌道とタイミングを予測し、垂直跳びをすると俺は右拳に<雷迅>を使い雷を纏うとノゾム(偽)に向けて雷を飛ばす。ノゾム(偽)は自分に向かってくる雷に向けて<ソニックエッジ>を放った。


 雷と見えない斬撃がぶつかり、空中で雷が四散する。その間に着地した俺は再び雷を纏わせ、ミサオ(偽)の下に<フラッシュムーブ>で移動する。


「悪いな。まずはお前からだ」


 ミサオ(偽)の顔面に雷を纏った右拳を叩き込み、左拳を右脇腹に叩き込んだ。ミサオと同じステータスなら殴打でもダメージを入れられると思っていたが、正解だったようだ。


 ミサオ(偽)の顔が痛みで歪んでいる。更に追い討ちをかけようと<疾風>の構えに入った所をアスカ(偽)が邪魔に入り、それ以上の攻撃は出来なかった。


「もう少しだったのに。邪魔……」


 自分の偽物に文句を言っているとミサオ(偽)の体が光り始める。これはいつも見ている光。


「あ、回復しやがった」


 ミコト(偽)が、ミサオ(偽)を回復してしまったのだ。


「やっぱり、回復役を一番に倒さないときりがないか……」


 回復役が戦闘に参加しているなら、最初に倒すことが重要だ。攻撃役や防御役が邪魔だからと先に倒そうとしても、回復役が居ると、今のように折角与えたダメージを回復されてしまい、返り討ちに遭うこともある。


「さっきのミサオの偽物のダメージとHP残量から考えると、HPは元のモンスターのままみたいだから、<衝波>なら一撃で倒せるか?」


 問題は当てる事とOPの配分だ。<衝波>の効率の悪さから言ってかなりの量を消費しないといけないはず。あのモンスターのHPの量的に六割から七割は必要だと思う。


 もっと具体的な数字で見えると助かるけど、今の<鑑定>では、全体量がHPバーの形でしか分からないから、しょうがない。


 俺の偽物の邪魔が入って不発に終わったら、<練気>で回復させるにしても、ノゾムと俺の偽物を相手するには残りがきつくなりそうだ。


 これまでの戦いから推測するに、職業固有スキル、アーツ、魔術はあの偽物たちは使えないとみて間違いない。ノゾム(偽)は、アーツの効果合成はしてこないし、ミサオ(偽)は人形を召喚しない。そして、ミコト(偽)も<ホーリーバリア>を使っていない。使わないじゃなく、使えないとみた。


 尤も、そう思わせておいて、実は使えるというような事があってもまずいから、使えないと思うが、使える前提で考えておいた方が良いのだろう。


「さてと、どうやって……」


 ノゾム(偽)が俺に考える時間を与えないとでも言うように、三度、斬り込んできた。当然、斬り結ぶ事など不可能だから攻撃を躱し続ける。中々攻撃が当たらない俺に苛立ってきたのか、少しずつ大鎌が大振りになって来る。


 これは、ミコト(偽)の前にノゾム(偽)を先に倒せるか? などと考えていたが、その考えは簡単に消されてしまった。


「ピッ」


 俺自身驚いたが、俺の偽物がノゾム(偽)の顔面を殴った。殴られたノゾム(偽)は、一瞬驚いていたが、冷静さを取り戻し、二人で俺に連撃を繰り出し始めた。


「こいつ、俺の偽物とはいえ、折角のチャンスを」


 回避で精一杯の俺を何としても倒そうと、偽物二人が攻撃の手を緩めることなく続けている。反撃の一撃でもと、攻撃準備をすれば、上から魔術が降ってきてその邪魔をする。


「またこのパターンか。何とか一体、それだけでこの状況が好転すると思うけど……」


 一体倒す。たったそれだけの事だが、その隙が作れない。何かきっかけが欲しい。きっかけが。

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