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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第3章 女神と親友

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試しの宮殿(ミサオ)

 ミサオの入った部屋は真っ暗だった。一寸先も闇とはよく言ったものだ。正しく言葉通り。自分の体すら見えない状況。


「何これ。なんにも見えないじゃないの。こんなので試練なんて出来るの?」


 ミサオは夜目が少しでも利くようにと、その場にじっとしたまま立っていた。


「おかしいよ。全然、暗闇に目が慣れない」


 数分もすれば少しは見えてくるかと思っていたミサオだが、いくら時間が経っても暗闇に目が慣れない。ミサオはここが試練の場である事を再認識すると、GDを召喚した。何もない闇の中に召喚陣が浮かび上がり、GDが召喚される。


「召喚出来たよね? GDいる?」


 ミサオの呼び掛けにGDは頷くが、ミサオには分からなかった。


「召喚陣も見えなかった(・・・・・・)んだけど、GDも見えないし……」


 ミサオは自分の召喚陣が発動した感覚はあったが、GDの姿が見えない事から不安が募る。そんなミサオの心情を察してか、GDがミサオの肩に手を添える。


「うん? GD?」


 GDはそうだと肩をポンポンと叩く。


「良かった。居るんだね。それにしてもおかしいな。何で全く見えないんだろう?」


 GDをきちんと召喚出来ていると認識したミサオは少しだけ落ち着きを取り戻していた。そして、落ち着いたことで、ふと気が付く。何故、GDは自分の居場所をすぐ分かり、肩を叩く事が出来たのか?


 辺りは真っ暗で何も見えない。本当に何も見えないのだ。GDが人形とはいえ、この暗闇では流石にすぐに自分を見付けることは出来ないはず。


「GD、周りが明るいなら、あたしの肩を一回、見えていないなら二回叩いて」


 ミサオの命令に対するGDの答えは、一回。それが意味することは、ミサオの視界だけが見えない状態になっているという事だ。


「うーん。あたしだけ状態異常に掛かっているってことかな。そもそも人形には状態異常効かないから、これが試練っていうことか……」


 漸くミサオは自分の状態が分かり完全に落ち着きを取り戻した。取り戻したが、逆に不安は大きくなった。


「盲目状態で、試練を受けるとは、これはこれで大変だなぁ。きっとモンスターもいるよね」


 GDだけだと攻撃面が心許ないとミサオは、FDも召喚する。


「二人共、頼んだよ」


 FDとGDは頷き、ミサオは二体の人形に手を取ってもらって、先へと進み始めた。目が見えない状態で十分も歩くと、体力としては問題無いが、精神的にかなり疲れていた。


「もう嫌だ。何か神経使うから疲れたぁ」


 ミサオが愚痴を吐くと、FDとGDが足を止める。


「どうしたの?」


 ミサオが二体に尋ねると、二体がこの先に対して警戒しているのを肌で感じ取った。


「何、何か居るの?」


 ミサオは目が見えない分、耳に意識を向ける。すると、ズズズと何かが這いずる音が聞こえた。


「何、何よ!?」


 ミサオは這いずる音に恐怖を感じるが、共に居るのは自身が召喚した人形二体。話すことが出来ないため、目の前に居るはずのモンスターがどんなモンスターでどのくらい居るのかも全く分からない。


「二人共、あたしを守ってよ。FD! 先制よ。GDはあたしの傍から離れないで」


 FDはミサオの命令に従い、まだ距離が離れているモンスターに向かって駆け出す。


 ズザザザザッ


 モンスターがFDに反応し、素早く動き出したのが分かった。音からするとかなり大きいモンスターのようだ。


 ゴキンッ


 FDがモンスターを殴った音が響く。その音は硬い金属を殴ったような音。


 ゴキンッ


 再びFDが攻撃した音が響く。すると、FDが戦っている方向とは別の、ミサオの右前方からズズズッと何かが這う音が聞こえた。


「もう一体!?」


 その音の元であるモンスターは自分の方へと向かって来ているのが分かった。這いずる音が近付いて来る。


「GDお願い!」


 ミサオは自分に迫ってくるモンスターから身を守るようにGDへ指示を出す。


「シャァアアアア!」


 モンスターの雄叫びなのだろう。掠れた声が聞こえてきた。そして、似たような声を昔テレビで聞いた事があるかもとミサオは思う。動物をテーマにした番組やよくお笑い芸人がその動物を体に巻いた時のリアクションなんかを楽しんでいた動物。そして、自分は苦手な動物。


「まさか、蛇なの……?」


 姿は見えないが、近くまで来たことから、気配で何となくその姿が分かる。うねうねと地面を這いずりながらこっちに来る感じが。


「勘弁してよ。あたし、爬虫類駄目なのよ!」


 そう、ミサオの予想は当たっていた。今、FDとGDが戦っているモンスターは巨大な蛇のモンスター、ヒュージヴァイパー。体長は十メートル。胴回りは直径で八十センチはある大型のモンスター。目が見えていたら、蛇が苦手なミサオは気絶するのは間違いないものだった。


 そして、その巨体を覆う蛇鱗は金属のような硬さを持ちながら、柔軟性に優れており、FDの攻撃を物ともしていなかった。全く効いていない訳では無いようだったが、ヒュージヴァイパーの勢いは全く衰えない。


 対して、FDはヒュージヴァイパーの攻撃を受ける事なく躱し続けていた。なぜなら、その攻撃を一度でも受ければ、一発退場となるのが分かるほど、強力な一撃を有していた。


 今もFDを丸呑みしようとその大きな口を開けて、噛みつきにかかる。FDは大きく後ろに飛び、噛みつきを回避すると、すぐさま横に飛ぶ。FDが立っていた場所をヒュージヴァイパーの巨体がズシンと音を立てて落ちてくる。噛みつきを躱された瞬間に体当たりをしてきていたのだ。


 FDはヒュージヴァイパーの横腹を蹴りつけるが、ゴキンという音が鳴り、大したダメージを与えることが出来ないでいた。一方、もう一体のヒュージヴァイパーから主人であるミサオを守るためGDが魔力を使って盾を構えていた。


 ヒュージヴァイパーの体が赤黒く光ると、その盾に向かって突っ込んでいく。ドォオオオンと大きな音を立て、GDが後ろへと飛ばされる。


 幸い、盾に攻撃が当たったことでGDはダメージを受けずに済んだが、一撃で盾が砕けてしまった。GDは再び盾を出現させると、ミサオとの間に立ちふさがる。


「凄い音がさっきからするけど、どうなっているの? 見えないから、状況が全く分からないよ」


 ミサオは、まだ二体が無事という事しか分からず、戦況が有利なのか、不利なのかも分からなかった。その上で、ヒュージヴァイパーの突進なんかで起きる大きな音を聞いては、不安が募るばかりだ。


 魔力は無くなるが、FDとPDを変更しようかと考えるが、この先まだ戦闘が続く場合の事を考えると、躊躇ってしまう。またゴキンという音が響く。FDの攻撃が当たった音だ。だが、その後にドカッと鈍い音がすると、FDの反応が無くなった。


「嘘っ。FDやられたの!?」


 たった一撃を受けただけで、FDは光の粒子となり消えてしまった。残る人形はPDとMD。だが、FDが一撃でやられたのならMDも一撃でやられる。ましてや、MDは近接戦闘は不向き。FDを一撃で屠れるモンスターなら自分も一撃でやられる。迷っている場合じゃない。


「PD! お願い」


 ミサオの呼び掛けにPDが召喚される。PDは現れると同時にさっきまでFDが相手をしていたヒュージヴァイパーに走りながら<ダークアロー>を放った。


 ヒュージヴァイパーはその矢を体をうねらせ回避するが、その隙にPDがヒュージヴァイパーの目の前に近付くと、今度は超至近距離から<ダークアロー>を放つ。今度はその矢はしっかりと顔面に刺さり、ヒュージヴァイパーは光の粒子と化す。


 仲間がやられたことに気が付いたのか、GDと戦っていたヒュージヴァイパーがPDにターゲットを変え、地面を這いずりながらPDへと向かっていく。それをチャンスとばかりにGDが尻尾を掴み取った。だが、ヒュージヴァイパーの力が強くそのまま引き摺られてしまう。


 PDは、自分に向かって来るヒュージヴァイパーに<ダークアロー>で牽制すると、ヒュージヴァイパーへ向かって駆け出した。その瞬間を待っていたと言わんばかりに、ヒュージヴァイパーは、尻尾をPDへと振り抜く。


 そこには、GDが必死に離れないように掴んでいた。勢いよく振り抜かれた尻尾を掴んでいたGDはその遠心力に負け、PDへと放り出される。GDを受け止める素振りも見せず、PDは避けると、避けた先にヒュージヴァイパーが口を開けて待っていた。


 ガツンと大きな音が響く。ヒュージヴァイパーの閉じた口の端から噛みつかれたPDの頭と足がはみ出ていた。


「何かヤバい。GD下がって! MD!」


 ミサオは嫌な予感から、攻撃力の無いGDをMDに変更し、<ダークアロー>を連射させる。MDの放った闇の矢は、見事にヒュージヴァイパーを光の粒子へと変え、その場にはボロボロのPDが横たわっていた。


 MDに連れられ、PDの下へと向かったミサオは、<ドールリカバー>でPDの傷を癒やす。傷が癒えるかと思った、その時ドサッという音とゴキッという音が鳴ると、ミサオとPDは、三体目のヒュージヴァイパーに巻き付かれてしまった。MDは上から乗られたタイミングで潰されてしまったようだ。


「ぐぅっ、P、PD。あ、あぁあああああ!」


 自分の骨がバキバキと鳴る音が聞こえる。痛みに絶叫し、気を失ってしまった。そして、ミサオが気が付いた時は、目の前に心配そうに覗き込むノゾムの顔が見えたのだった。

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