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異世界呪われた救世主〜異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす〜  作者: 陽月純
第3章 女神と親友

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試しの宮殿(ノゾム)

 一番に部屋の中へと入ったノゾムは自分の目を疑っていた。頬を抓ってみるが、


「痛っ……」


 夢では無い。ノゾムの目の前に広がる光景は、ジャングル。転移した感覚は無い。確かに部屋に入ったはずだが、明らかにおかしい。振り向いてみれば通ったはずの扉も無い。


「夢でも転移させられたって訳でも無い。だとしたら、そもそもあの扉が別の空間に繋がっていて、そこを通ったから違和感無く、こんな所に来たって所か」


 ゲームやラノベ好きなノゾムは、自分の持つ知識から推測を立てる。実際、その推測は正しかった。試しの宮殿にある部屋の扉は、それぞれが異空間への入口となっているのだ。


「後戻りも出来ないなら、進むしか無いな。後戻りするつもりもねぇけど」


 ノゾムは大鎌を手に前へと進む。鬱蒼と生えた木々に絡まった蔦が鬱陶しい。大鎌で斬り落としながら暫く進むと、ジャングルの中にぽっかり開けた空間を見付けた。


「あからさまに何かあるってかんじだけど、周りにはモンスターの気配も何もねぇな」


 いつモンスターに襲われても対応出来るように警戒しながら開けた場所へと足を踏み入れる。


「?」


 何か起きるかと思っていたのにモンスターどころか、転移させられるとかの罠も何も無く、ただ開けているだけの空間のようだ。


「拍子抜けだぜ。仕方ない。先に行くか」


 ノゾムはそのまま奥へと進む。一向にモンスターと遭遇する気配も何もなく、暫く進んでいると、さっきと同じようにぽっかり開けた空間に辿り着いた。


「今度こそ何かあるか?」


 だが、さっきと同じで特に何かが起きることもない。


「ここも外れか。くそっ。試練はいつ始まるんだよ」


 ノゾムは、大鎌の柄を地面に突き立て、周囲を探るがやはり何も感じられない。


「はぁっ……。しょうがねぇ。進むしかねぇな」


 ノゾムは大鎌を持ち直し、先へと再び進み始める。三度、開けた空間へと出て来た。


「何かおかしい……」


 いくら異空間に来たといえど、ここは試練を受ける場所。こんなにも何も起きず、延々と歩き続けるだけのはずがない。


「もしかして、すでに何か起きているのか?」


 ノゾムはこの開けた空間がやはり怪しいと考え、ここを詳しく調べてみる。


「うん? これは?」


 すると地面に小さな窪みが一つだけ出来ていた。その窪みには身に覚えがある。ノゾムは、窪みの近くに大鎌で地面に×マークを付ける。そして、再び進み始めた。暫く進むと、また開けた空間に辿り着く。そして、ノゾムの予想が的中していた。


「くそっ。永遠と同じところを進んでいるのか」


 その空間には、さっきノゾムが地面に付けた×マークがしっかりと残っていた。既に試練は始まっていた。この部屋に入ったその瞬間から。


「これはきっと迷いの森と同じ仕組みになっているんだろうな。くそっ。普通にここに来ていたら、本当は楽な試練だったのかもなぁ」


 文句を呟きながら、どうしたものかと頭を抱えるノゾム。とりあえず、さっきつけた×マークを基準に前後、左右に進んでみて、どういう風に無限ループしているのかを確認する事にした。それぞれスタート地点に進む方向に対し矢印を付けて歩く。その結果分かった事は、どの方向に歩いても辿り着くのは、基準とした×マークの位置だった。


「これは、どの方向に進んでも意味が無いという事だな。だとすると……」


 ノゾムは再び考える。どの方向に歩いて行っても必ずここに着く。つまり、ここが無限ループを起こす原因。何かがあるという事だ。


「やっぱり、セオリー通りだったら、この空間の中心。ここだな。そして、たぶん、単純な物理攻撃は駄目なんだろ! <ディメンジョンスラッシュ>!」


 ノゾムの放った一撃は、何かを斬り裂いたのか、パキィと乾いた音が空間に響く。そして、周囲を囲っていた木々が一部を除いて消えていった。残った木は、まるでゴールまで続くかのような一本道になっている。


「へへ。予想通りだ」


 ノゾムは出来上がった道を歩いていくと、その先には大きな泉が広がっていた。


「部屋の中にジャングルの次は、泉かよ。別の空間に繋がっていたんだろうけどさ……」


 それよりも気になるのは、間違いない。何かいる。それも複数。たぶん、ここが試練の最終地点でここにいるモンスターを倒せば試練クリアとなるに違いない。


「さあ、来いよ! 俺は負けないぜ!」


 ノゾムは、モンスターを挑発するように大声を上げると、泉の水面がゆらりと揺らぐ。それも一か所だけじゃない。十か所程。


「これ、ちょっとやばくないか……」


 ノゾムがぼやいた瞬間、泉の中から飛沫を上げながら、三体のモンスターが勢いよく飛び出して来た。


「でけぇな! おい!」


 泉の中から飛び出して来たのは、体長5mくらいの巨大な鰐のモンスター。その大きな顎を開き、ノゾムに喰らいつこうとしている。ノゾムは目の前に迫って来る鰐に大鎌を振るう。ノゾムの大鎌は鰐の硬い鱗を裂き、胴に傷を付けるが、鰐の勢いは止まらず、ノゾムは鰐の体当たりで吹き飛ばされた。


「くぅ……、こいつ、強い。まじかよ。こんなの十体を一人で相手しないといけないのかよ」


 鰐が次々と泉から上がってくる。あっと言う間に囲まれてしまった。さっき斬りつけた鰐は胴から血を流しているが、全く気に留める様子もなくノゾムに向かって再び突進してきた。


「陸に上がったら、そこまでスピードは無いな。なら、いける!」


 鰐の突進を避けながら、大鎌を横薙ぎに振るう。鎌の先が鰐の肉に食い込むが、切り裂くには至らなかったようだ。鰐がそのままノゾムを引き摺っていく。


「馬鹿力だな、くそっ」


 鰐が引き摺っていく先には別の鰐が大きな顎を空けて待っていた。ノゾムは鎌を一旦手放し、鰐の咬みつきを避ける。閉じた口を足場にして、大鎌を引き摺っている鰐まで飛び上がると、鰐の体の上に乗った。


「武器は返してもらうぜ」


 ノゾムは大鎌の柄を掴み、鰐から飛び上がる。飛び上がった勢いで、鰐の体を裂き、大鎌が抜けると鰐が大きな声で吠える。


「グギャアァアアアア!」

「痛ぇか! ほら、これで止めだ! <ソニックエッジ>、追加で<サークルエッジ>!」


 空中から放った<ソニックエッジ>が傷付いた鰐に命中するとその鰐を中心に真空の刃が周囲の鰐を襲う。<ソニックエッジ>が命中した鰐は光の粒子となり消えると、<サークルエッジ>の効果で傷を負った鰐が怯んでいる。追撃をしようと着地をしたノゾムを無傷の鰐達が一斉に襲い掛かって来る。


「遅ぇんだよ」


 鰐の動きはノゾムの半分以下しかなく、鰐達が一斉に襲い掛かろうとも、ノゾムにその攻撃が当たる事は無いはずだった。だが、鰐達の攻撃を躱し切ったと思っていたが、一体の鰐が通り過ぎ様に振った尻尾がノゾムの背を強打した。


「ぐぅっ……」


 尻尾で強打されたノゾムの骨が軋む。たった二発。体当たりと尻尾による攻撃を受けただけでノゾムの体はそのダメージで悲鳴を上げていた。


「や、やべぇ。あと一撃でも喰らったら、やられちまう……。なんてパワーだよ……」


 全ての鰐がノゾムの前方に固まって、ノゾムを喰うつもりなのだろう。じりじりとノゾムの方へと詰め寄って来る。


「俺を舐めるんじゃねぇ。こんな所で死んでたまるか! 出し惜しみしている場合じゃねぇな。俺のとっておきを喰らいやがれ!」


 ノゾムは残った全魔力を大鎌に集めると鰐達に向かって走り出した。


「おぉおおおおおおおお!」


 鰐達は向かって来るノゾムを大きな顎で咬みつき、尻尾を振り迎え撃つ。ノゾムは尻尾攻撃を躱し、咬みつかれる前に後ろへ飛び退き、閉じた口に飛び乗ると、九体の中心に居る鰐の体の上へ飛び乗る。


「全員、くたばれぇえええええ!」


 そして、全魔力を込めた大鎌を足下の鰐に振るう。


「<ソウルブレイク>!」


 ノゾムの振るった大鎌は黒い斬撃の軌跡を描いたかと思うと、その黒い斬撃が周囲の鰐達にも襲う。追加効果で<サークルエッジ>を発動していた<ソウルブレイク>はその名の通り、鰐達の魂を直接攻撃し、残った九体の鰐は全て光の粒子となって消えた。


「へへ……、やった……ぜ……」


 全魔力を放ったノゾムはそのまま自身も気を失ってしまった。暫くして、気が付いたノゾムは、家具など何もない部屋の中心に倒れていた。


「ここは、どうやら試練はクリアしたみたいだな……。ギリギリだった……」


 ノゾムは力を使い果たし、疲れ切った体に鞭を打って、起き上がるとデイジーの部屋へと戻っていった。

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