トナペレ族
試しの宮殿へと向かう途中、サウザート軍、マンイーターと戦っていたトナペレ族を救った俺たちは、トナペレ族から村へと招待され、村へ訪れていた。分かってはいたが、周りを見れば、象の鼻と耳の巨漢。男も女も皆、身長二メートルを超えている。
圧倒されてしまい村の入り口に立ち尽くしている俺たちをここまで案内してくれたトナペレ族が、ノゾムの手を引いて村の中心へと向かう。
「な、ちょっと、こら、引っ張るな」
「さあ、こちらへどうぞ」
俺たちは微笑すると引っ張られていくノゾムの後を付いていった。村の中心に着くとそこには、一際大きな家のような建物があり、その中から身長が三メートル位の男が出て来た。
「長老。この方々に救って頂き、皆無事に戻る事が出来ました」
長老と呼ばれた男は、見た目は若い。俺たちをここに連れてきたトナペレ族とそんなに変わらない。
「そうですか。それは、それは。して、そっちのは?」
「サウザート兵です」
「成程、成程。では、その者達は、あちらへ」
長老が指を指した先には、何かの儀式でもするのか、祭壇があった。
「おい、我々をどうするつもりだ!」
「捕らえられたとはいえ、俺達はサウザートの兵だぞ。妙な真似をすれば、仲間が黙っていないぞ!」
祭壇を見たサウザート兵が何をされるのか心配になり、長老に向かって喚き散らし始める。
「おや、おや。私は何もしませんよ。私は」
その言い方。自分は何も手を出さないが、それ以外は知ったことかと言っているようにしか聞こえない。サウザート兵も同じ事を考えたのだろう。さっきよりも大きな声で怒鳴り始めた。怒鳴った所で、しっかりと縛り上げられ、身動きご取れないサウザート兵達は、祭壇の方へと引き摺られ、祭壇の前に置かれる。
「では、では、ご機嫌よう。捕虜の扱いは、あちらにお任せしているので、ご心配なきよう」
長老の言葉のあと、祭壇の前が輝き出し、地面に魔術陣が現れたかと思うと、サウザート兵達は一瞬で消えてしまった。
「さて、さて。この度は私達の家族を救って頂き、村を代表して、お礼を申し上げます」
長老は、俺たちにその大きな体で一礼をする。
「いえ、俺はこの国に召喚された者として当然の事をしただけですので、頭を上げてください」
ノゾムが、長老に頭を上げるように頼む。
「ほう、ほう。では、貴方がデイジー様が仰られていた……」
長老はノゾムの体を頭から足まで舐めるように観察する。
「そんなに見られると照れちまうよ」
「いや、いや。これは、失礼、失礼。ここに来たという事は、試しの宮殿ですな」
目的を言い当てられ驚いている俺たちを見て、満足したのか案内したトナペレ族に宿を手配するように伝えると、家の中へと戻っていった。
「では、こちらへどうぞ」
トナペレ族が宿へ案内してくれている間に質問をする。
「すみません。失礼かもしれないですけど、長老さんは、見た所、貴方とそう年が変わらないと思ったのですけど……」
「別に失礼ではないですよ。長老と私は、年はそんなに変わらないですよ」
「え? そんな見た目で、おじいちゃんなの?」
ミサオが聞き辛かった質問をド直球で投げつける。
「あはは。おじいちゃんでは無いです。長老とは、村の長であることを指す呼び名で、実際に年老いている訳ではないです」
昔は村長に村の中の長老が就いていたことから、村長と呼ばず、長老という呼び名で呼ばれるようになったのだということらしい。
その割には、あの長老の喋り方は、年寄りみたいだったけど、あの人は昔からああいう喋り方なんだとか。ああ見えて、村一番の戦士らしく、怒らせると怖いらしい。
「さあ、着きました。今日はこちらでお休みになってください」
宿はトナペレ族の身体のサイズに合わせた作りになっていてかなり広かった。ベッドも一台で俺たち四人が寝れそうな位広い。
ノゾムと俺たちを見た宿屋の主人が一部屋にしようかと言い出したから、俺が断り、それぞれ一部屋借りるように申し出た。
ノゾムが残念そうな顔をしていたが、俺が睨んだら、ふいっと明後日の方を見て、素知らぬ顔をしている。部屋に移り、今は俺の部屋に皆が集まり、これからの話をしているところだ。
「で、今日は彼らの厚意に甘えて、宿に泊まったのは良いとして、明日はどうする?」
「どうするって、試しの宮殿に向かうんでしょ?」
ミサオは、俺の質問に質問で返す。
「それは当たり前だよ。いつ、出発するかってこと」
「なんだ。そうなら、そういう風に聞きなさいよね」
「俺は早く出発したいと思うんだけど、皆は?」
ノゾムとしては、早くデイジーの所に行きたいと思っているようで、早朝に出発したいようだ。
「早く出発するのは構わないけど、私はあの長老さんの言葉が引っ掛かるの」
「ミコト、どういう事?」
「長老さんは、何で私達の目的が試しの宮殿って直ぐに分かったの?」
確かに。ここが試しの宮殿に向かう途中に位置するのなら、長老の言うことも分かる。でも、俺たちは、向かう途中、爆発音を聞いて、試しの宮殿へ向かう道を外れた。そして、この村も試しの宮殿への道から大きく外れた場所にある。
「試しの宮殿に向かう冒険者達がここに寄るからじゃないのか?」
「ノゾム、それは違うんじゃないか? だって、俺たちが進んでいた道とはかなり外れた場所だぞ。ここは」
「そう言われりゃ、そうだな」
俺たちは少し考えているとミサオが何を考える必要があるのと言わんばかりに、
「なら、明日、長老に話しを聞いて見ればいいじゃない」
と言って、そうだなと皆納得した。
そうすると、朝早くから訪ねるのも失礼だろうと、朝食を取って少し経ってから、長老の家を訪ねる事とし、解散した。解散した後、<空納>からアルが姿を現す。
「アル、珍しいな」
「酷いなぁ。僕はアスカの事を思って隠れているのにぃ」
サウザート兵達にアルと居る所を見られると、面倒そうだから、ここ最近は出て来ていない。
「僕の事ぉ、忘れてないよねぇ?」
「当たり前だろ? 何を言っているんだよ」
「まぁ、いいやぁ。それよりぃ、ここ、何か不思議な村だよぉ。デイジーの力を凄く感じるよぉ。何かあるねぇ。ここはぁ。気を付けた方がいいよぉ」
デイジーの力を感じる。アルはそう言った。
「ノゾムから感じる訳じゃないんだよな?」
「うん。違うよぉ。デイジーの気配は無いけどぉ、何か力を感じるぅ」
長老が俺たちの目的が試しの宮殿だと直ぐに答えたのと何か関係があるのかもしれない。明日にはそれも分かるはずだ。




