新たな種族
分体デイジーに女神デイジーが居る場所を聞いた俺たちは早速その場所、試しの宮殿へと向かった。
「それにしても、デイジーちゃんの本体が試しの宮殿に居るとはなぁ」
「その試しの宮殿ってのは?」
「神器の持ち主となる試練を受ける宮殿だよ。デイジーちゃんからレベルが三十になるまでは挑戦させないと言われていたからな。丁度受けたいと思っていたんだよ」
「それで、この間レベルを聞いてきたのか」
「そういう事」
「それにしても、何でレベル三十なんだ? そう言えば、ヒデオもレベル三十にも満たないだのなんだの言っていたな」
「ヒデオ? セドニーが召喚した奴か?」
「そう」
まあ、何となく察しはつくのだが、レベル三十がこの世界の一般的な一人前と認められるレベルなのだろう。
「あいつもレベル三十超えているのか。ちっ」
「ノゾム、ヒデオを知っているの?」
「そりゃな。まだあいつがレベル二十位の時に襲われたんだ。もっとも、その時は、デイジーちゃんに返り討ちに合っていたけどな」
「あいつ、どこにでも現れるな」
自分のことを救世主と思っているみたいだったから、他の召喚者や、女神達を倒そうと思ったというところか。悉く失敗しているみたいだけど。寧ろ、成功したことがあるのか?
「まあ、レベル三十は冒険者ならベテランのやり手といった所みたいなんだよ。それに、ここを超えると成長値もこれまでより高くなるらしい」
「へぇぇ」
それは思ってもいなかった。それなら、俺のステータスもそれなりに上がるかもしれない。そんな話をしながら歩いていると、遠くから大きな爆発音のような音が聞こえてきた。
「何だ? 今の大きな音は?」
「戦闘?」
ドォオオオン!
今度ははっきりと聞こえた。
「やっぱり。今度ははっきりと聞こえたよ!」
「どうする?」
「行こう!」
ノゾムの掛け声に俺たちは頷き、爆発音のした方へと駆け出した。暫くすると、再び爆発音が聞こえてくる。
かなり近くまで来たようで、煙が木の間から見えてきた。俺は武器を装備し、いつでも攻撃出来る準備をする。
そして、目に入ってきたのは、再びマンイーターの群生。そして、
「象?」
「象だね?」
「あれは、トナペレ族だ。所謂、象人族」
身長は二メートル位。体格もかなり大柄で、ティバル族やタク族と違い、その顔は正しく象。大きな耳に、長い鼻がある。亜人というより、獣人と言った方が分かりやすいかもしれない。
そのトナペレ族が六人、マンイーターの群生、サウザート兵十人の三つ巴中だった。
「こんな所にまでサウザート兵が来ているの?」
「どうするの? アスカ」
「俺に聞くのかよ」
「だって、あんたがあたし達のリーダーじゃん」
「そうだぜ。俺との勝負に勝ったんだからな。お前がリーダーなんだ。どうするか決めてくれよ」
ミサオとノゾムからリーダー扱いされ、目の前の状況をどうするか聞かれる。ミコトも俺の答えを待っているようだ。
「あぁ、もうっ! 分かったよ。なら、トナペレ族は勿論助ける。サウザート兵は、助けるのは助けるけど、きっとこっちに仕掛けて来るだろうから、その後は撃退するぞ。でも、殺すなよ。特にノゾム!」
「何で、俺だけ……」
「お前が一番危ないからだ!」
俺の指摘の後、小声で敵なら別に良いじゃないかという呟きに溜め息を吐く。こいつ、こんなに過激だったっけ?
そんな事を考えていると、サウザート兵がマンイーターごとトナペレ族を殺そうと魔術を放つ所だった。
「あいつか。爆発音の元凶は!」
その男が放とうとしている魔術は、<ファイアボール>だ。あんなものを何発も使われたらこの樹海が炎の海に包まれてしまうぞ。
「ミコトは、<ウォーターアロー>で周囲の鎮火を頼む」
「分かったわ」
「ミサオは、サウザート兵を」
「OK」
「ノゾムはマンイーターを刈ってくれ」
「雑草刈りか……。まぁいいや」
「やるぞ!」
俺は三人に指示を出した後、<フラッシュムーブ>でサウザート兵との距離を詰める。突然目の前に俺が現れ、サウザート兵が驚きのあまり<ファイアボール>を霧散してしまった。
「しまった! 貴様、誰だっ!? 邪魔をするなら……」
大きな声で怒鳴るサウザート兵の腹に一発拳を叩き込み黙らせると、俺たちに気が付いたサウザート兵が標的として、俺たちにも刃を向ける。
「こいつら! 構わん。全員殺せ!」
小隊長らしい男が指示を出すと、サウザート兵は見境なく周りの敵に攻撃を始めた。
「鬱陶しいよ!」
ミサオがFDを召喚し、サウザート兵を打撃で沈黙させ始めた。ノゾムもマンイーターを次々と刈っていく。
トナペレ族はというと、突然現れ、自分達と戦っていた相手を次々と倒していく俺たちにどうしたら良いのか分からず、呆然と立ち尽くしている。
そこをマンイーターが根を伸ばし、足を絡めとるがトナペレ族は足を上げ、引き千切ってしまった。元の世界の象と同じでかなり力が強いみたいだ。
サウザート兵は、<ファイアボール>を使える兵以外は大した力は無かったようで、俺たちの介入で直ぐに片が付いた。
マンイーターの方も母体となる巨大マンイーターを二体倒し、残りは全て消えていった。
「何方か存じませんが、ありがとうございました」
トナペレ族の一人が俺たちに礼を言う。他のトナペレ族は、俺たちが気絶させたサウザート兵を捕縛中だ。
「ノゾム、お前の事知らないみたいだぞ」
「そりゃそうだろ。俺はこっちの方に来るの初めてだからな。俺が知っているのは話を聞いていたからだし」
「?」
トナペレ族は俺たちの話に首を傾げている。何を話しているのか分からないようだ。
「あ、すみません。こっちの事は気にしないで下さい。それより大丈夫ですか?」
「はぁ、あ、はい。私達の種族は、力と体の頑丈さが特徴なので。所で、貴方がたはどうしてこのような所に?」
質問してきたトナペレ族の表情を伺うに、普通なら訪れないような場所に現れたため、助けてくれたとはいえ、安心は出来ないといった感じだ。
「俺たちは……」
「爆発音が聞こえたから、助けが必要なのかもと思って駆けつけたんだ!」
俺の言葉を遮り、ノゾムが答える。トナペレ族は、ノゾムの言葉に何か思うところがあるのか、少し警戒心が強くなったように見える。
「えっと、俺たちは召喚者です。こいつは、デイジー様に召喚されたノゾムです。この先にある試しの宮殿に向かう途中、ノゾムが話した通り、爆発音が聞こえたので、何かあったのではと、駆けつけたら戦闘中でしたので、要らない世話だったかもしれなかったですけど、手伝わせて戴きました」
「そうですか。要らぬ世話など、そんな事はありません。助かりました。成程。召喚者の方々だったのですね」
漸く信用を得たのか、トナペレ族は警戒を解いてくれたようだ。ミコトとミサオもホッとしている。
「あいつらはお任せしても?」
俺はトナペレ族が拘束したサウザート兵を指差すと、トナペレ族は頷く。
「大丈夫です。それより、試しの宮殿に行かれるのでしたら、どうぞ私達の村にお寄りください」
トナペレ族は、俺たちにそう言うと頭を垂れた。




