妄想に耽る神童
友人間で遊び半分で作った駄作です。
それでも宜しければお読みください。
俺の名前は葛木湧。頭脳明晰、スポーツ万能。出来ないことはない天才だ。見た目も学校一カッコ良いと噂になっている。人望もあり、学級委員長を任されている。
今日は学校一の美少女である一ノ瀬真衣に告白することにした。最近、よく目が合うから真衣は俺のことが好きなんだろう。まったく、モテる男は辛いぜ。
振られてしまった。きっと、俺が天才だから釣り合わないとか思っているんだろう。学校の中ではまだ俺と釣り合う方だろうに。やれやれ。
今日は朝から唯一無二の親友である日野翔太と遊びに行く約束をしている。学校の近辺で遊ぶ予定だ。今は待ち合わせ場所で待っている。楽しみすぎて早く着いてしまったぜ。
時間になっても翔太が来ない。スマホを使って連絡を取ろうとしたら家に忘れてしまっていた。しまった、この俺としたことがなんたる失態。にしてもまったく、この俺を待たせるなんて親友じゃなければ怒っているところだぜ。
夕暮れになっても翔太は来なかった。家に帰ってスマホを見ると、彼女とデートをするから来れないという連絡が来ていた。仕方ないか、俺と比べてモテないからな。許してやろう。
今日は一限からテストだ。ふっ、この俺にかかればこんなテスト、全問正解なんて余裕だぜ。本気を出すまでもないから、テスト勉強なんてやってないぜ。
テスト返しが行われた。赤点だった。ふっ、こんなテストでは俺の頭の良さは分からないようだな。翔太のテストを覗き見ると、俺よりも点数が高い。はっ、こんなテストに本気を出すとはな。
今日は三学年合同での球技大会が行われる。俺よりも才能がない奴らばかりだな。引き立ててやるために本気は出さないでおいてやろう。
ボロ負けだった。ふっ、あっちのチームに三年生がいたから手加減してやっただけだ。俺が本気を出せば一点もやらなかったからな。
今日は散歩をすることにした。散歩をしていたら、真衣が俺の知らない地味な面の奴と歩いているところを見かけた。俺というものがありながら、他のやつと出かけるなんて……。よく見ると、手を繋いでいた。あれは恋人繋ぎだろう。許せない。
次の日、真衣のところに行って怒った。俺というものがありながら他のやつと手を繋いで出かけてるんじゃない、と。すると、真衣の友達の柊紫苑が机を叩き、立ち上がった。
「さっきから聞いてたら、何ふざけたこと言ってんの?!みんな気を遣って黙ってたけど、良い機会だから言ってやる!アンタ、キモいのよ!振られたくせに、遠慮してるだけだとかバッカじゃないの?翔太に対してだって、勝手に親友呼ばわりして、都合も聞かずに出かけようとか、テストを勝手に見たりとか、人の迷惑も考えなさいよ!他にも「もう良いよ」」
紫苑が訳のわからないことを言っていたら、真衣が止めた。
「こんな奴、無視すれば良いじゃん。ほっとこ」
そう言って、紫苑の腕を掴んでどこかに行った。
部活が終わった後、サッカー部部長の麻倉隆一に話しかけられた。
「ねえ、練習真面目にやってくれない?やる気がないなら辞めて。みんなそう思ってるから」
それだけ言い残して、真衣や紫苑、翔太達と一緒に帰っていった。この俺を辞めさせようとするなんて、見る目がないな。こっちこそそんな見る目のない奴らはこっちこそお断りだ。
高校時代、俺に対する周りの評価は中学校の頃と同じだった。虐めを受けていた時期もあった。出る杭は打たれると言うしな。これが天才の宿命か。
俺は天才だから東大には余裕で合格できるだろう。本当ならハーバード大学が良いが、海外に行くのは面倒だからな。
東大に落ちた。ふっ、日本一の大学でも俺の天才的な頭脳は測れないということか。仕方ない、就職することにするか。
この俺が入ってやろうというのに、俺を落とす会社が多すぎる。この天才を採用しないとは、本当にこの世には見る目がない奴らばかりだな。
就職が出来なかったから家で色々なことをして暮らすことにする。小説を書いたり、絵を描いたりしようと思う。
二十年後、ニュースでニートの世話に疲れた母親が息子を殺したというニュースが流れた。殺された息子の名前は葛木湧と言った。息子の部屋にはたくさんの小説や絵があったそうだ。それらは見たものによると、「平凡」の一言に尽きるそう。