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8,1.5エリア

「カブちゃん、ありがとう」


「---!」


 森の後半部分に入ってきた私たちは、セーフティーエリアから出て10分もしないところで、採集を行っていた。


 1.5エリアとでも言えばいいのだろうか、ここは同じ第1エリアであるはずなのだが、より木々が太く、枝もたくましくなっているため、空からの光が入りにくくなっていた。

 日があたらないため、空気は冷たく、肺に入る空気がひんやりとしていて気持ちがいい。


 人間にとっては涼しいこの場所はカブトムシにとってはどうなのだろうと思っていたが、カブちゃんは特に気にもしていない様子。リアルのカブトムシは20℃ぐらいの温度を好むはずだけどそのあたりは問題ないのだろう。



 1.5エリアでの収穫は今のところ2つあった。


 1つは新モンスター。

 第1エリアではイノシシとネズミ、それとウサギの三体がいた。掲示板にも同じように書いてあったので間違いはないだろう。

 新しく私たちが1.5エリアで見つけたのはリスだ。森にすむ生き物の習性なのかはわからないが、イノシシと同じように奇襲を仕掛けてこようとしていた。しかし、リスの場合はこちらがリスの存在に気が付くと一目散に逃げていった。

 リスが逃亡したため戦っていないが、鋭い歯を持っていてモロに食らえば致命傷になるだろう。さらに彼らの奇襲はイノシシと違ってあまり音を立てないため余計に気が抜けない。


 そのため、私たちは当初と予定を変更。

 カブちゃんにも採集を手伝ってもらおうと思っていたがそれを取りやめ、周りの警戒を頼んでいる。おかげで今もリスを追い払うことができた。

 リスのドロップアイテムが何かわからないが、戦闘になるためには一撃受ける必要があるため現時点では試すことが難しい。わざわざかカブちゃんに傷ついてもらうわけにもいかないしね。


 もう一つの発見は新しいアイテムだ。

 名を「ミドリダケ」。薄緑のあからさまに危ないキノコだ。

 例の如く鑑定が名前しか表示しないので、このきのこが何に使えるのかわからないが、おそらく錬金で使えるのだろう。


 MPポーション作れたら苦労しないんだけどな…


 私はミドリダケをストレージに放り込みながら考える。過度な期待はしないほうが身のためだ。そう言い聞かせても期待感はぬぐえないが。



「カブちゃん、もう少し採集したら一度セーフティーエリアに戻ろうか。」


「---」



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・



「戻ってきましたセーフティーエリア」


 だんだんと薄暗くなってきたところで一度セーフティーエリアに帰還。さすがに一組ぐらいは来てるかと思ったが、未だ私たちだけの様子。掲示板にも書き込みがないし本当に誰も辿りついてないんだろう。落ち着けると言えば落ち着けるがMMOでなんの交流もないのもどうかと思う。交流といってもパーティーは組めないんですけど。


 私は哀愁まみれた目でアイテムボックスを操作する。後悔はしていないんだけどね。


 そんな私たちの今日のトータル戦利品はこんな感じ。


 肉(小)

 肉(中)

 皮(小)

 皮(中)

 獣の牙(小)

 薬草

 ミドリダケ

 ミドリグサ


 数はネズミ、ウサギからとれた肉(小)が最も多く、獣の牙に関しては一本しか手に入っていない。多分レッサーボアのレアドロップなのだろう。

 皮も第一エリアの獣たちから、イノシシが中で他が小だ。肉よりもドロップ率が低かったのは何か理由があるのだろうか。


 ミドリグサはあの後1.5エリアで新しく見つけた植物だ。ミドリダケに続き何に使うのかわからないが最終的にはキノコよりも集まってしまった。


 1.5エリアはミドリの森とでもいうべき場所なのか…


 そう思ってしまうほど恣意的な名前だと感じた。



「よし、カブちゃんは少し休んでいていいよ。私はこれからいろいろ錬金してみるから。」


「-----」


 カブちゃんをひと撫でしてそういうと、カブちゃんは再びゆっくりとエリア内を飛び回り始めた。好きなのかな?飛ぶの。好きなら私的にはうれしいけど。


 今のところはカブちゃんのレベル上げは順調だ。カブちゃんの体がいつ大きくなるのかはわからないが、この調子なら近いうちに一緒に空を飛べるだろう。


 よーし、私も!


 順調に育っているカブちゃんにご主人である私が負けるわけにはいかない!

 そういきこんだ私は初心者用錬金セットを取り出し、実験を開始する。


 まずは薬草とミドリダケの組み合わせ。

 あいにくミドリの森(仮称)では戦闘が無かったためMPが全あまりしている。今日はもう探索する気もないしこのまま全て使ってしまおう。


 私は薬草とミドリダケを錬金セットの壺に入れゆっくりと混ぜ始める。これは「簡易錬金」というスキル。錬金スキルに初めからついているもので、これを使うと品質が下がるが手早く物を作ることができる。

 薬草を乾かしたり、ゆでたり、そういった細かい部分を手作業でできたりもするがそのあたりは私は求めない。

 特殊なアイテムや品質向上が見込めるみたいだけど、そこまで食指を延ばしていたらきりがないしね。


 ボンッ!


 お、考え事をしていたら錬金が終わったみたいだ。早速鑑定してみよう…


『失敗品』


 …おう、ソーリー……


 私手ずからの一品はミドリと黒の絵の具を混ぜたような形容しがたい何かとなってしまった。キノコと草でどうやったらこうなる。


 気を取り直して再錬金。今度は薬草とミドリグサだ。


 ボンッ!


『低級ポーション(劣)』


 う、うーん、まあ理解できなくはない、よね?

 薬草二つで低級だったわけだからそれを少なくしたらこうなるんだろう。

 薬草増やしてみる?


 試す価値はあるので、今度は薬草×2とミドリグサを投入。

 これなら普通にやっても低級ポーションができるはず!頼むぞ~…


 ボンッ!


『低級ポーション』


 うん!最低限!

 いや、まだ使ってないからわかんないけどね?回復量が5以上になってたら成功だから…


 と言っても望んでいた新しいアイテムが手に入ったわけではないので、少しへこみながら錬金を続ける。

 お次はミドリダケとミドリグサだ。

 同じ森でとれたこの二つなら何かが起きると期待してもいいはず!



『失敗品』



「FA○K!!!」


 頭を抱えて思わず叫ぶ。

 何なんだお前ら、住んでるところが一緒だからって仲良くはないですってか?社会に出たら同郷はマレぞ?大事にしろよ!!!

 理不尽な切れ方をするが失敗は失敗。錬金は続く、今度はミドリダケ二つだ。

 くっそぉー、これで失敗品ができたらミドリダケを食ってやる!ただのやけ食いだけど!


 さぁ、錬金スタート!!


 ボンッ!



『低級毒薬』


 あっっぶなっ!!!死ぬところだった!絶対このきのこ毒入りだろ!!試してみてよかった!やけ食いしなくてよかった!

 というか、毒薬か。使ったら毒になる…んだよね?仕様が今のところわからないから何とも言えないけど、いつか大きな攻撃手段になってくれそうだ。防御力の高い敵に固定ダメージ、とかだったら使いやすいしね。


 薬草×2とミドリグサで錬金が成功したので、ミドリダケ×2とミドリグサで錬金してみる。

 低級毒薬のちょっと変異版になると思うけど。もう、成功してくれればなんでもいいや。


 ということで錬金!



 ボンッ!


 さあ、何ができたかな~



『低級解毒薬』



 っ…て、低級解毒薬…これ、とある方角の方々が喉から手が出るほど欲してるやつなんじゃ…

 どこからか表れた瓶の中に詰められた液体を、私は誰に見られるわけでもないのに恐る恐るしまう。


 これ、一応掲示板に書いておいたほうがいいよね?いや、どうせいつか誰かが見つけるんだしわざわざ私が注目を集めなくても…いや……


 正直錬金の結果でこんなに悩むことになるとは思っていなかった。

 私はストレージからもう一度解毒薬を抜き出すと瓶の中の液体をワインのように回す。

 諸悪の根源である液体は私の苦悩なんぞつゆ知れず揺蕩っている。


 一応書いておこう。うん、皆欲しがってるものなんだし…後のことは知らん!

 

 考えるのが面倒になった私は今日見つけたものや先ほどの物を掲示板に書き込んでいくのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 焦らず落ち着いて行いましょう。(一応)女の子なんですから♪ [気になる点] イノシシ部隊に吹っ飛ばされて響き渡る叫び声が目覚まし代わりになったりして(笑) [一言] 嵐の予感♪逃げるか進ん…
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