7,セーフティーエリア
引っ掛かった木の枝から、カブちゃんによって何とか降ろしてもらい(落としてもらい)、私たちはようやくセーフティーエリアに入った。
「ここがセーフティーエリアか…」
エリアの中は、木がないということを除けば、外と変わった様子はなく、本当にここで休んでいいのかと心配になるほどだ。
セーフティーエリア内ではHPとMPの回復速度が速くなるはずだけど…。よし!目に見えて早い!正真正銘セーフティーエリアみたいだ。
それがわかればもう遠慮はいらない。
私は仰向けになって草原に寝転び、深く深呼吸をした。
ふぅー、ようやく一息つける…薬草もMPもかっつかつだったからなー、MP問題はひとまずこれで解決だ。それに…
私は寝ころんだままステータス画面を表示し、自分のスキルを確認する。
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『ライトキュア』
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これは確実に回復魔法だろう!いやー、私が初めに使える魔法が光魔法でよかった。これで私のHP問題はMPを何とかすればいいだけになった!ふー良かった良かった。
ま、MPを回復させる方法がわかってないからまったく解決してないけどね!今後も薬草はとっていこう。
少しばかり遠い目をする私の横にカブちゃんがたたずむ。
この魔法は、おそらく私の「光魔法」がレベルアップしたことで手に入れた物。先の戦闘で実際の私とカブちゃんLvも5に上がった。
カブちゃんの方はっと…お、新しいスキルがある!
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『溜める』
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…まだ火力を求めるというのか……飽くなき探求心とはまさにこのこと。
スキルの効果はおおよそ検討が付く。
行動不能の溜め→次の攻撃火力アップ
そんなところだろう。弱めのモンスターで試してみたいが、一撃で屠ることに変わりはなく検証にならなさそう。難儀な力よ、かっこいい。
「あっ、そうだった。」
掲示板見るの忘れてた。森の中では見れなかったからね。
錬金のレシピとかも知りたかったし、スキルツリーの解放の仕方も調べなきゃ。
いそいそと起き上がる私を見て、なにか思い至ったのか、カブちゃんは地面を離れセーフティーエリアの中をゆっくりと飛び回り始めた。
そんなカブちゃんを見てほほえましく思う反面、少しばかり心配してしまう気持ちもある。
大丈夫だと思うけどセーフティーエリアからでないよね?
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ひとまず掲示板を見回ってほしい情報は手に入れることができた。
まず、スキルの取得法について。
これはベータ版から変わらない、一定行動によるスキルツリー開放と、既存スキルがレベルアップしていく、という感じであっているらしい。
今回のように魔法スキルは、皆5レベルで新しい魔法を手に入れているみたい。まだ10レベルに到達した人がいないからわからないけど、おそらく5の倍数で魔法が増えていくのだろう。
魔法と言えば私の支援魔法もそうだがこちらも増えている。「ガードエンハンス」という魔法だ。
こちらも掲示板で調べたところ「防御力を上げる」ということが分かった。まぁ、名前の通りではあるが。
錬金レシピだが、薬草が2つで低級ポーションができるようだ。HPの回復量は5。薬草が1つで2回復ということを考えれば少しではあるが回復力が上がっている。こちらの熟練度も錬金術のレベルが関係してくるのだろう。
その他に見つけた錬金レシピは、モンスターを集める匂い袋だけだ。まだゲームが始まってあまり時間がたっていないとはいえ少し寂しい結果だ。私含めて今後の発展のために尽力せねば。
そして、掲示板本部ではワールドアナウンスについて。
今まであのようなアナウンスがなかったことから予想はついていたが、あのワールドアナウンスはゲーム初のことだった。
それによって掲示板は大盛り上がり。他のエリアにもベータ版にはいなかった中ボスがいるかもしれないと、プレイヤーの気合の入りようがすごかった。
私も、初めはセーフティーエリアについて書き込もうと思っていたが、この熱の入りようにビビってしまった。なんせ、「あってみたい」だとか「話を聞きたい」という声が多いのだ。
そのため、書き込みは匿名で行っておいた。カブちゃんの名を売ってあげたいという気持ちはあるが、その点はまぁ、大丈夫だろう。カブちゃんの実力なら今回名前を出さなかったからと言ってさしたる問題にはならない。なんせ最強ですから、うちの子は。
匿名機能があることによる誹謗中傷についても問題はない。運営がすべてのID、書き込みを管理しているし、個人情報もある程度収めている。変な書き込みをしたら永久BANかつ警察に通報だ。安心して匿名機能を使わせてもらうことができる。
「今できるスキルツリーの解放の仕方も少しわかったしこんなところかな。」
私は掲示板の書き込みで見た通り、自分のスキルツリーを見てみる。
書き込み通りスキルツリーが解放されていた。Lv5になった時点で解放されていたみたいだ、ちゃんと確認すればよかった。
解放されているのは魔法スキル。
『火魔法』と『水魔法』、『土魔法』と『風魔法』だ。私の光と対になっていそうな『闇魔法』は解放されていなかった。
この魔法スキルもとるかどうか迷いどころだが、今はひとまずおいて置こう。他のスキルで手に入れたいものがあるのでそちらが優先だ。
そろそろMPも回復したので一度外に出ようかな。
そう思って私が立ち上がると、カブちゃんはゆっくりとこちらに降下してきた。そのカブちゃんを撫でながら次の方針を考える。
まずはセーフティーエリアを起点に森の中盤以降のアイテムやモンスターを調べよう。前半でこんなにキツかったんだ、多少は調査をしておくべきだと考えた。
そうだな…他のパーティーがここに来るまでってのはどうだろう。すぐに来てしまったら考え直すが、ひとまずそれを目安に行動しよう。
「じゃあ、カブちゃん。また薬草みたいなのを見つけたらよろしくね。」
「---」
コクリと返事をするカブちゃんを再びなで、セーフティーエリア外に足を踏み出す。
マナポーションの材料、あるといいなー。
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名前:カブト Lv5
種族:ピクシー
職業:テイマー
体力:9
攻撃:6
魔力:13
防御:6
魔防:8
素早:18
器用:10
【スキル】
支援魔法Ⅼv5、光魔法Lv5、逃げ足、テイム、錬金Lv1
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カブちゃん Lv5
体力:16
攻撃:20
魔力:5
防御:9
魔防:9
素早:7
器用:4
【スキル】
突進、突き上げ、ぶん投げる、飛翔、溜める、孤軍奮闘
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