５，森での苦難
「カブちゃん！そいつでラストだよ！」
「－－－－！！」
私が声を上げたのと同時に、カブちゃんの角がレッサーラビットを横なぎにフッ飛ばす。
「キュゥゥゥ……」
フッ飛ばされた兎は光の粒子となり消え、私のアイテムボックスのいちアイテムとなっていることだろう。
戦闘の緊張感から解放された私はほっと息を吐き自分のステータスを確認する。
レベルアップは…まだないか、さっきしたばかりだもんね。それにしても…
私はステータス画面から移動し、アイテムボックスを開く。そこでドロップアイテムである肉の量がだんだん増えてきたことを確認しため息を吐く。
進んで行くにつれて、敵がまとまって襲い掛かってくることが多くなってきた。１体だったら無双できてたカブちゃんも２，３体が相手だと無傷では済まない。いや、軽傷なんだけどね囲まれても。
問題は私だ。カブちゃんが一対一で戦っている間、私は他のモンスターを１，２体は引き付けておかなければならない。全部カブちゃんに頼っていたらいつか破綻する。
最初のうちは光魔法の「ライトボール」も使うことで、ある程度うまく立ち回れていた。私には「逃げ足」もあるからヒット＆アウェイでヘイトを買う役回りは割とはまっていたのだ。しかし、そこから３つほど問題が起きた。
一つは、MP切れ。単純だけどとても大きい痛手だ。もう一つは、「支援魔法」の誤算。
私の支援魔法はLv１で、この状態だと「ヒッティングエンチャント」という命中率強化の魔法しかつかうことができない。正直、補正がかかっているか体感ではわからないため戦力になっていない。
そして最後の問題が「薬草」が切れたこと。
そう、最初に採った薬草がもうないのだ。理由は私の細かい被弾。情けない主人ですまん…
自動HP回復は戦闘中に働かないため、私のHPが戦闘中に減るとどうしても使わざるを得なくなってしまうのだ。ほんに申し訳ない…
私は再びため息を付き、カブちゃんに寄りかかってうなだれる。
しかし、カブちゃんはまだ子犬ほどの大きさ、邪魔だと言わんばかりに押しのけられてしまう。
厳しい…環境とカブちゃんが厳しい……
森の中を進んできた私たちに取れる行動は四つ
一つはここでMPが回復するまで休憩すること。
これは不採用。歩いていても座っていてもMP回復量は変わらないので行動した方が得だ。ここで回復を待ったとしても、回復するまでに一度でも集団戦闘をしたらすべてがおじゃんだ。
二つ目は、一度街に戻るということ。
これも不採用。今から街に戻るということは、結構な時間歩いてきたことも考えると、死に戻りすることを意味する。そんな選択をする気はさらさらない。
三つ目は新たなスキルをとり、現状を打開するということ。
これも不採用、というか不可能。今、私たちのLvは４。そのためスキルポイントも４ある（カブちゃんは６）これを使ってスキルをとる…というのはありなのだが、初期スキルツリーには残念ながら生産スキルしかない。そのため取れるスキルは全て初心者生産セットが必要なものとなってしまう。つまり取る意味がない。
何らかの行動によってスキルツリーを開くことができるのは攻略サイトに書いてあったはず、はずなのだが……その方法を覚えていない…覚えていないんだ………。掲示板を森の中で見ることは危なっかしすぎてできないし、攻略サイトはログアウトしないとアクセスできない。つまりは何も取れないというわけだ。悔い改めます……
４つ目は、セーフティーエリアを目指すということ。
正直打つ手がこれしかない。ベータ版の攻略サイトに記載されていたセーフティーエリアは第一エリアの南の森にも存在していた……はず。そこにはモンスターが入ってこないので、そこでゆっくりと休息をとることができる。たどり着けるかはおいて置いて。
ということで選択肢は一つしかない。とりあえず薬草を採りつつセーフティーエリアを目指そう。
ふーっと息を吐き、立ち上がると、周囲を警戒していてくれたカブちゃんもこちらに近づいてくる。
「カブちゃん、迷惑かけるけどすまんね。」
私はカブちゃんに向かって謝罪の言葉を投げかけるが、とうの本人は気にもしていないのだろう。あっけらかんとした目で「行かないの？」と訴えてくる。すみません、行きましょう。
わかりやすいとこに薬草生えていてくれ…１００本ぐらい！
そんなにとってたら確実に襲われるのだが………
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名前：カブト Lv４
種族：ピクシー
職業：テイマー
体力：８
攻撃：５
魔力：１２
防御：５
魔防：７
素早：１６
器用：９
【スキル】
支援魔法、光魔法、逃げ足、テイム、錬金
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カブちゃん Lv４
体力：１４
攻撃：１８
魔力：４
防御：８
魔防：８
素早：６
器用：３
【スキル】
突進、突き上げ、ぶん投げる、飛翔、孤軍奮闘
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