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精霊国への遠い道のり  作者: お菓子大好き
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「こんばんは、やっぱりばれましたね」挨拶がてらにそうつぶやくユーリック。

ギルドマスター、それにアゼベス。彼女らはまたしても強力な魔力を察知、緊急にその場へたどり着いたところだ。

そしてギルドマスターが目にしたものは、少し前にあの魔力の件で質問した4人、それにユーリックの周りを飛び交う精霊たちが三体。精霊たちが人と一緒に行動し、もしくは仲間になっている。

現に彼女らの目の前にいる精霊たち、しかしそれでも信じられない光景であった。アゼベスも信じられないような表情で精霊たちを目視している。


アゼベスの記憶に残っている言葉が、よみがえる。『精霊たちに愛された子供が、三人の女神さまの信者ともに現れた時に、そなたたちの願いが叶い始める一歩だ。その時に必ずその子のことを頼むぞ』

まさかこのような形でエルフ種族の希望に遭遇できるとは。

「君が私達の救世主なの?」震える声でユーリックに歩み寄るアゼベスだが、精霊たちに拒まれる。

「ユーリックに近づくな」フィアンナの驚くほど冷たい声がアゼベスを襲う。「お前たちエルフ族は、女神さまの信者たちが粛清されているときに何をしていた?」

「そうね、何をしていたのかしら」とナイレリアが同じく恐ろしいほどの低い声で足し合わせる。

『え?何これ、超怖いんだけど』と思うユーリックに、アリエッサが「女神さまの信者たちに対する罪をエルフ族は背負いながら生きているのよ」と血の気が引いた顔色で佇んでいるアゼベスをにらみながら説明する。

「ま、待ってくれ、その件については、せめて弁解する機会をもらえないだろうか?」ギルドマスターが必死に精霊たちに訴える。「それに、50年ほど前に聖獣様にも予言を伝えていただいたのだ。精霊たちに愛された子供が、三人の女神さまの信者ともに現れた時に、私たちの願いが叶い始める一歩だ、と!」


「と、とにかく込み入った話になるようですから、場所を変えませんか?」奇跡的にまだ人の気配はこの辺りにはないが、それも時間の問題と焦るユーリック。彼の言葉が皆を現在の状況に引き戻した。

「確かに、ユーちゃんにもっとものことを言われちゃったわね」カトレアが微笑みながらユーリックの手を握る。「お姉ちゃんたちのおうちに帰ろう?みんな、僕の周りに集まってください。アゼベスさんとギルドマスターもお願いしますね」怒りをあらわにしている精霊たちに怖気づいてしまうギルドマスターとアゼベスだが、言われたように彼に近づく。皆が寄り添うとユーリックが一瞬で全員をカトレアたちのリビングルームまでテレポートする。


「ここは、…」言葉を失うギルドマスター。魔力が流れたのは察知できた。だが、何が起こっているのか全く分からなかった。アゼベスも瞬時に場所が変化したことに驚きが隠せない。

「あまりあの場所にいてもよくないと思ったので、テレポートしました」ユーリックが皆にそう告げる。精霊たちも相変わらず彼の両肩、それに頭の上に座っている。かなりエルフたちに怒りを抱いているようだ。今だに精霊たちに睨まれている。

「まさか瞬間移動か…」ギルドマスターがいまだに信じられないように、テーブルを触っている。

「まあ、とにかくできるところに座って。話も長くなりそうだから。それにあなたたちに対する精霊たちの反応にもいろいろと聞きたいし」カトレアが皆に座るように促す。

皆一息ついて落ち着きをとりもどししだい、カトレアがギルドマスターに「女神さまの信者たちに対する罪とは、一体何なの?私たちもそのようなことは初耳なので」と問う。

「それは…」ギルドマスターがちらりと精霊たちのほうに目を向ける

「あなたたちが偽りなく説明しなさい。私たち精霊の前で話すことは、女神さまに筒抜けなことを忘れないことね」フィアンナがそう言って念を押す。


ギルドマスターが大きくため息をついた後、語り始める。

女神さまの信者たちが人族の秩序を保ち、それが千年以上続いたこと。

その時代は、主に人族の間に平穏な時代であり、他の種族とも好意的に接触していたこと。


しかし、次第に悪意を持った人間たちが女神さまの信者たちを憎み始める。権力を欲する人間たちには、女神さまの信者たちは邪魔でしかない。この者たちは、組織として部下たちを動かし、100年ほどで女神の存在を教会から消すことに成功する。また、信者とマークされた者たちは抹殺された。まれにこの時代も精霊たちと契約できる者たちもいた、だがそれでもせいぜい一体とだけ。人間は、魔力が少なすぎたのだ。それでも精霊一体との契約者は、強力な魔術師である。契約していた信者たちは追ってから逃れることができた。


女神さまの存在を次第に忘れていく人間たち。時がたつにつれ人の心も汚れ、女神さまの信者に選ばれる絶対数が絶望的に減る。


エルフたちの罪、それは、女神の信者たちに手を差し伸べることなくただ、人間同士の争いと決めつけ目をそらし、助けなかったこと。

否、それだけではない。この時代に、エルフ族は精霊の森に精霊や聖獣たちと住んでいた。事の始まりに精霊たちが気付き、エルフの長に信者たちを援助してほしいと嘆願しても聞き入れてもらえなかった。


精霊たちは信者たちを助けることもできなかった。魔力を持った人間と契約していない精霊たちは、基本的に森の周囲から離れないのだ。なぜなら、魔力が枯渇してしまうため。精霊たちにとって、森が魔力の源。離れると精霊たちも消滅してしまう。

そこで、最悪の事態が起こった。精霊と契約していた人間が殺されてしまったのだ。魔力の源を失った精霊は、森へ戻ろうとしたが、途中で消滅してしまった。その精霊の痛み、悲しみ、絶望を共有した精霊たちが激怒し、結果的にエルフ族を森から追放してしまう。


そして今に至る。


精霊たちによって淡い光に照らされた部屋の中で、カトレアたち、それにユーリックは言葉を失っていた。

気が付くと、アゼベスは涙を惜しみなく流していた。

「これがすべてだ、今更謝罪しても無駄かもしれないが、信者たち皆に、謝りたい。本当にすまなかった」頭を下げたギルドマスターも声が震えていた。


しばらくして、ユーリックが皆に「僕だけでは、何とも言えませんが、皆に幸せになってもらいたい」と言いながら精霊たちに告げる。「女神さまに会いに行こう」と。


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