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「カトレアじゃねーか!」
ユーリックたちが食堂へ行く途中の夜道、10人ほどの冒険者たちにからまれた。即座に彼女たちの表情がこわばり、手が武器へと延びる。
「バロー。久しぶりね」カトレアが声を掛けたクマのような男に返事する。
「なんだ、3人そろって仲良く夜のお散歩かと思ったら、ガキのお守りも兼ねてか?そんなガキは放っておいて、俺たちとちょっと付き合ってくれねーかな?」
『駄目だ、この人たちはやばい』ユーリックが瞬時に悟る。彼にはこの冒険者たちが、どす黒いオーラを放っているのが精霊たちを通して見えるのだ。同時に彼の中で怒りがわき始める。
「毎回断っているでしょう」カトレアが2,3歩後退りし、バローたちから距離を置く。
魔物化したクマのような無差別の凶暴さではなく、彼女らが女神さまの信者であるゆえに悪意を向ける者たち。それに比べ女神の信者たちは皆、魂の清らかな者達。特にカトレアたちは純粋な魂の持ち主たちだ。
ユーリックの怒りを察し、精霊たちが姿を現し、彼の頭上を飛び交う。『フィアンナ、ナイレリア、アリエッサ、魔力をフルチャージにして、彼女たちを守る』と伝える。一瞬で巨大な魔力がユーリックを中心に放射される。男どもが下手な動きをとれば、すぐに使用できる状態だ。
一方、精霊たちが現れたことに驚きを隠せない男たち。「おい!あれって精霊か?」「捕まえて売れば大金になるぞ!」
バローが薄気味悪い笑顔でカトレアに告げる「その子供と妖精たちをこっちによこしな。お前らは見逃してやるよ」ユーリックと妖精たちを闇市で売りさばけば膨大な金になる。
「何をばかなことを言っているの?王都の中で騒ぎを起こしたらただでは済まないわよ」
「なーに、お前ら全員かっさらうこともできるんだ、そのガキ一人で済むんだぞ。安いもんだろ?」
男たちがゆっくりとカトレアたちに一歩一歩近づいてくる。
ユーリックも、もう怒りをとどめておくことができなかった。彼女たちがこのような者たちに脅されていることが。
「もう、いい加減にしろ」そう言い放つと同時に男たちが黄金の結界で覆われ、身動きを奪われる。
「お前たちは女神さまの敵だ。この世に必要ない」ユーリックがそういうと、男たち全員が一瞬のうちに結界の中でチリになり、結界が解除されると彼らの武器がけたたましい音を立てながら地面に落ち、その上にサラサラと男たちだったものが粉のように地面に振り散る。
暗闇がユーリックたちを包み、何事もなかったように静かな夜が戻ってくる。
「ユーちゃん、何をしたの?」しばらくの間の沈黙を、サナが破る。
「結界の中の水分を一滴も残らず分解したんだ」男たちの武器を素早く時空格納しながら答える。
「…ユーちゃん、私たちを守ろうとしてくれたことはわかっている。でも…」
「殺さなくてもよかったとか思う?サナお姉ちゃんの言っていることはわかるけど、あの人たちはもう救いようのない人たちだった」
サナに歩み寄り、手を握る。「それに、女神さまと会ったときに頼まれたんだ。女神さまの信者さんたちを助ける。そして幸せになれるようにって」
「ちょっと待って。ユーちゃんは女神さまと話したの?」それを聞いたカトレアとシンシアもサナと同じく急に真剣な表情になる。
「うん、信じてもらえないかもしれないけど、確かに女神さまと会って話したよ」
「まさか、そんなことがあり得るなんて…」シンシアがつぶやく。
「本当だよ。もっと詳しく説明するけど、ちょっと待っていてね。そろそろこっちへ来る頃だから」
「え?誰が?」カトレアが聞こうとしたときに、後ろから声をかけられる。
「カトレアたちか?なぜここにいるのだ?」「え?精霊たちがなぜ?」
振り向くと、ギルドマスターとアゼベスがそこにいた。




