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「もしかしたらユーリックくんなら、私に何があったのか言えるのではないのかな?」
急にギルドマスターから声をかけられたユーリック、驚いた様子をギルドマスたーに見られてはいけないと思いながらも、体が一瞬硬直してしまう。
「ごめんなさい….」
「そうか、それは残念だ。では、とにかく原因がつかめない限り暫くの間、A級以下の冒険者による王都周辺での依頼は即刻に中止だ」
「そんな!それでは、私たちはどうやって食べていくの?」とカトレアが即座に反発する。
「しばらくは王都内の依頼を消化してくれ。報酬は低いが危険性は皆無なのでな。まあ3週間ほど様子見だな。その間、A及びs級の冒険者たちに調査の依頼をギルドから出す。」ギルドマスターが立ち上がり「手間をかけたな。これで私は失礼するよ」といいなり、部屋を出ていく。
部屋に残されたユーリックは、悩んでいた。真実を話さなかったため冒険者たちの依頼が減り、それに伴い報酬も減る。一般の冒険者たちは蓄えも微々たるもので、もし日々の報酬が減ると生活も困窮してくるだろう。
「お姉ちゃん、僕がギルドマスターと話せば…」
「駄目よ、ユーちゃん。もしあなたの力が世間に知れ渡ったらどうなるかわからない。この国はともかく、他国の権力者に目をつけられたら厄介なことになる」
「でも、この国の王家は女神の信者を受け入れていてくれるし、国内ではそんな問題にならないでしょう?。それにギルドマスターもエルフさんだし」
「今日のところは、帰りましょう。皆で一緒に話し合って、ギルドマスターに打ち明けたいのなら、明日でも良いでしょう?」とシンシアに言われ、ユーリックはうなずく。
部屋を出て、ギルドのホールまで階段を降りると冒険者たちがカウンターに集まり何やら騒いでいる。よく見るとリーシャやほかの受付嬢たちが何やら説明をしているようだ。
「ですから、今のところは王都内の依頼しか受け付けておりませんのでご承知お願いします」と懸命に説明する受付嬢たちに対して、冒険者たちが大声で「そんなちっぽけな報酬で食っていけねーだろ!どうして外へ行けないんだ?」と怒鳴っている。
依頼が張られているボードを見てみると、依頼数がだいぶ減っている。王都周辺の依頼が取り下げられたのだ。
ユーリックが心配そうにリーシャの方を向くと、それに気が付いたリーシャが弱弱しい笑顔を見せて手を振ってくる。これだけで彼はギルドマスターに真実を伝えたい気持ちでいっぱいになる。
悲しそうな表情をしたユーリックに、「あー、もう!分かった。ギルドマスターにだけよ?それに、このことは必ずギルドマスターから王家へと伝えられるから」とシンシアが苦笑する。
「うん。分かった。ありがとうお姉ちゃん」
「でも、ここで待っていてもいつギルドマスターが戻ってくるのかも分からないし…」
「サナお姉ちゃん、僕に考えがある。一応家に帰ろう」
外に出ると夜空にはまばゆいほどの星が散らばり、通りに立ち並ぶ家々から暖かい明りが窓から漏れる。
肌寒い空気に包まれながら家への帰路を歩くユーリックは、思った。女神さまの剣と言われてもあまり実感も湧かない、だが自分の正体を隠し続けながら自由に魔力も使用できない。それなら一層のことギルドマスターと王家にはすべてのことをあかし、女神さまのためにできることを実行する。
「ユーちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、カトレアお姉ちゃん。僕のせいですごい迷惑をかけちゃって、ごめんね」といい、彼女の手を歩きながら握る。
「そんなことは気にしなくていいのよ。私たちはユーちゃんの味方だからね」
「うんうん」「そうよ」と、それに静かに同意するサナとシンシア
「ところで、ユーちゃんの考えって何なのかな?」と言ったサナの質問に対し
「ギルドマスターを待つより、うちにお誘いしよう。探さなくてもいいし。それに、あのくまさんもギルドで買い取ってもらえないとね」と笑顔で返すユーリック。
「そっか、大体わかった。ねえ、カトレア、おなかもすいてきたし、ゲーテさんのところで夕飯食べていこ」
「賛成、そうしましょうか」といい皆で食堂へ向かった。




