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王都にたどり着いた時には、もう太陽が地平線へとだいぶ傾いていた。ユーリックとシンシアたちの目に入ってきたものは、50人ほどの兵士たちが閉ざされた門前を守るように立ちはだかり、そして門の上で周囲を警戒しているギルドマスターともう一人のダークエルフ。
『え?何があったの?』とシンシアが思うのもつかの間、数人の兵士たちがシンシアたちに気が付き駆け寄ってきた。 「よかった、大丈夫だったか!」「何か異変がなかったか?」などと問われるのに対し、シンシアがあたふたと対応するが、「え、別に何も異常なことは」とか、「いつもより、森の中が静かだった様な?」と答えられるだけで真実を言えないために返答に困っている。
その状況に割り込んでくるギルドマスター。 「まあ、待て待て。済まないが事情を聞きたいので、彼女らをちょっと借りるよ」とギルドマスタ-が兵士たちに声をかけ彼女たちを救う。「一応聞いておくが、森の様子はどうだった?何か危険性を感じることがあったか?」それに対し、カトレアが「いいえ、少なくとも、私たちの依頼現場は安全だったと思います」と述べる。ギルドマスターは、「皆、聞いただろう。今のところはまだ大丈夫そうだ。引き続き森の方角に警戒していてくれ」と兵士達に言い残し、街へと進む。
兵士たちが門を開け、ギルドマスターに連行されるシンシアたち。『本当にどうしたと言うの?まだ何も知らせていないのにこの体制。それにあの兵士の数は何なの?』などと考えを巡らせている間に、ギルドに到着、扉を開けて中に入ると、リーシャが駆け寄ってくる。ギルドマスターが「お茶を頼むよ」と彼女に頼み、あっという間に接待室に通された。
『さて、どうしたらいいのかしら』サナが同ギルドマスターの質問に答えるか迷う。女神さまに誓うということは、絶対的なこと。ユーリックの真実のことは、口が裂けても言えない。これはカトレアとシンシアも同じく質問に答えられなくなったときは、黙秘するしか選択肢はない。皆が昨日と同じくソファに座って一息つくと、リーシャがお茶と菓子を持ってくる。リーシャが「彼女たちをあまり問い詰めないでくださいね」とギルドマスターに笑みを浮かべながら部屋から出ていく。
「さて、あなたたちはなぜこのような事態になっているのか説明しなければならないな」とギルドマスターが話し始める。
曰く、急に発生した大規模な魔力の放出を探知したギルドマスターと他のエルフたちのこと。
その事情はもはや王家までに届いていること。
そしてもし原因がわからないとなると、ギルドから調査を冒険者たちに依頼をし、比較的に大規模の調査を行うこと。
「それにあれほどの魔力が放出されたんだ。依頼中に何か変わったことがあったか聞きたかったのだが」ギルドマスターが一人一人を見つめ答えを待っている。
「えーと、そんなに膨大な魔力だったのですか?」と質問で返すシンシア。答えはわかっていても、ギルドマスターの反応がどのようなものか知りたいと思って聞いたのだ。
ギルドマスターがため息をつき、「一瞬でこの王都が消し去るほどの魔力だ」と言った。流石にこれには、三人とも何も言えなくなった。人間なので、魔力には敏感といってもエルフには程遠い。まさかユーリックがそれほどの魔力を持っているとは夢にも思ってもいなかった。
ユーリックも驚いて『え?どうして⁉』と精霊たちに聞くと『ユーちゃんは並みの魔術師の1000人分の魔力があるのよ?それに私たち3人の恩恵を得たから、その1000倍。理解できるでしょう?』とフィアンナの声が脳内に響く。
「そ、そんなに」とつぶやきながら、無意識にユーリックにチラッと視線をむけてしまうカテリア。その視線をギドマスターが逃すはずもなく、
「これほどの脅威を原因不明のまま放置しておけないしな」とギルドマスターが続ける。
「それにな、私も長く人間とかかわっているのでな、会話をしている相手が何かを隠しているかなんとなくわかる。」
女神の信者たちは、うそをつくことが苦手だ。、この三人はそれに輪をかけたような正直者。三人そろって、ギルドマスターの前でおろおろしている。
この様子を見ながらため息をつくギルドマスター『何かを知っていると私に言っているようなものではないか』と苦笑しながらも話を進める。
「それでな、私は君たちが何か事情を把握していると思っているが、話せないとなるとギルドからの信頼も落ちる。何か話せないわけでもあるのかな?」と問い詰める。『リーシャにはあとで謝っておこう』と思いながら。
「すみません、私たちは何も言えない」と、サナが言い切る。
そこまできっぱりと断れると思っていなかったギルドマスターが「何故そこまで?」と聞くと、「女神さまに誓ったのです、その秘密は守ると」と答えが返ってくる。
ギルドマスターも驚く。女神に誓うということは、絶対的なこと。よほどのことでなければ、女神さまに誓うことはない。
暫く黙って考えるギルドマスター、これ以上情報を彼女たちから得られないことは理解した。
「わかった。そこまで言うのなら、無理を言ったな。しかしギルドからすでに王家にこの事件のことは、もう報告済みだ。真実がわかるまで調査をせねばいけないのでな。君たちが真実を知りながら、話せないという事になると女神さまの信者たちの名前に傷がつく恐れもあるかもしれない。」
「決して悪意のために使用される魔力ではないのでそこのことは信じてください!」とシンシアが説得する。
「それは言い切れます!絶対に悪用されるようなものではありません!」とカトレアが後を押す。
「それでも、私が状況を把握していないかぎり、国王にも充分な説明ができないのでな。」と静かに言うギルドマスター「悪いが、君たちが何を隠しているのかを理解できるまで君たちは、ギルドからの依頼は受けられない。冒険者たちが何らかの情報を持ってくるまで待機だ。」
「それでは日常生活の収入が…」サナが頭を抱える。
「悪いが、これは君たちの安全を思ってのことだ。あれほどの化け物じみた魔力を安全と言い切れるのがなぜか理解できないが、それが君たちの思い込みだけであって王都が破壊されるような大災難も起こりかねないのでな」ギルドマスターも申し訳なさそうだが、さすがにこれだけは関与できない。
そして、ユーリックをまっすぐ見つめ、「もしかしたらユーリックくんなら、話せるのではないのかな?女神様の誓いなどしていないだろうし」と答えを求めてきた。




