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精霊国への遠い道のり  作者: お菓子大好き
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「二週間ちょっとで銀貨50枚ね」


「悪くはないわよ、カトレア」シンシアがそう言う「でも私たち3人が何とか暮らしを立てるには、最低銀貨80枚は必要ね」


「金貨一枚稼げたら、一か月間でも意外と余裕で暮らせえるのに」サナもため息をついて、悲しい顔をしている。


「四週間であと銀貨50枚は、今となっては難しいわ」カトレアも稼ぎたいが、ギルドマスターが遠出の依頼を禁じたので今の稼ぎ場は限られている。

依頼もこの近くのものしか受けれない。一掃のこと迷宮に潜り、魔物を倒して魔石を得るか。それか森に出て狩りをして肉と素材を売るか、選ばねばならない。


ギルドから10分ほど西方に向かい、シンシアたちの家に着く。家の前に石垣の運河が流れ、街の中にしてはのどかな雰囲気が漂っている場所だ。家自体は二階建てのこじんまりとした家。裏庭に馬を馬小屋に入れ、家に入る。1階は共用部屋のようだ。台所と食卓が奥にあり、前にはソファとテーブル。シンプルだが、居心地のよさそうな部屋。2階には、シンシアたちそれぞれの寝室があるようだ。


「素敵なお家だね」とシンシアたちに言うと、「ユーちゃんもお姉さんたちと住むのよ」と言ってくれた。


「ありがとう、シンシアお姉ちゃん」


「うんうん、いいのよユーちゃん。こっち来てお姉さんとソファに座って!」


「ねえ、お姉ちゃん、僕も依頼できるよ」


「え?何を言ってるの?」


「薬草探しとか、素材探しとか、いつも村でやっていたから」


「ユーちゃん、そうなの?」カトレアが興味深く聞く。


「うん、薬草だったら大体わかる」


「そうか、明日は皆で、狩りでもしよう。ユーちゃんは薬草探しを頼むわ」


「うん!」


「じゃ、今日はゲーテの食堂に食事しに行こうか?サナ、シンシア、どう思う?」


「いいんじゃない?帰ってきたばっかりだし」サナは賛成。


「うん、私もいいや。疲れてるし」とシンシアも同意。


家から運河を平行している道を北に5分ほど歩いて、その食堂に着いた。大きな3階建てだ。下が食堂、上の2階が宿のようだ。中に入ると、テーブルが20個ほどあちこちに置かれている。

4人が後ろのテーブルに座ると奥から猫耳の女将さんが出てくる。


「カトレアさんたちじゃないか。お久しぶりだね!」


「ゲーテさん、ただいま。2週間ほどの依頼をこなして、今日帰ってきたところなのよ」


「そうなのかい。ご苦労様。それで、その子は?」


「ユーリックよ。ファーソングの襲撃を生き延びた子なの」


「そうなのかい。大変だったね。何か食べて元気をお出し」ユーリックを元気づけようとする女将さん。


「今日は何がおすすめなの?」シンシアが聞くと「いいワイルドボアの肉が入ったから、ボアのシチューとパンだね。一人分で銅貨50枚だよ、御代わりも一回余分につけるわよ」と勧められる。


「それ4つ、ちょうだい」シンシアが銀貨2枚を渡す。


「はいよ。ちょっと待っててね」と言い、また奥に戻っていく。辺りを見回すと、まだ夕食には早いのか、お客の入りもまばらだ。皆が冒険者のような身なりをしている。


「ねえ、シンシアお姉ちゃん、食べた後に依頼を受けに行くんでしょう?」


「うーん、どうしようかと思っていたところなのよ。今ギルドに行ってもいい依頼があるかどうかわからないし、それに明日の朝にいい依頼が入ってくるかもしれない。でも、もし明日の朝にギルドに行くと依頼をするのに少し出遅れるわ」


「今夜中に依頼をと取った方がいいわよ。この辺りじゃそんなに変わらないでしょうから」サナは、今夜ギルドに行き依頼を受けたいらしい。カトレアもそれに同意。


ゲーテさんがそこでシチューとパンをテーブルに運んでくる。たっぷりとシチューの入った大きな皿に、バスケットに入っているパン、それに水の入ったコップが四つ。


「いい匂いね、いただきましょうか」と言って、皆が女神さまと8柱の神々に感謝の祈りをして、食べ始める。


「お姉ちゃんたちは、食事の前に女神さまにも祈るんだね」


「そうね、でも女神さまの信者でなかったら、普通は8柱の神々さまだけよ」サナがユーリックに教える。


「じゃあ、僕もそうするね」


「ユーリックは、女神さまの声が聞こえたの?」意外だという表情でカトレアがそう聞く。


「うーん、ずっと前に聞こえた」まさか、自分が転生したときに女神さまによってこの世界に送り込まれたとはとても言えない。


「そうなの。道理でシンシアがユーちゃんのこと好きになったわけね」


「ああ、なるほど。そうだったのねー」とシンシアも納得した様子


ユーリックが、解らないという顔をしていると、「私は女神さまの信者に何故か引かれるのよ。特に子供には敏感でね。女神さまの子供たちを見つけると、保護したくなっちゃうの」シンシアが明かす。「ユーちゃんはまだ小さいから、まさか女神さまの声を聴いてるとは思っていなかったわ」


ワイワイと話しながらユーリックたちはみな御代わりをゲーテさんに頼む。食事が終わると、ゲーテさんが奥から戻ってきて、パンと干し肉、それに少しの果物が入った袋をカトレアさんに渡す。「これは、明日にでも食べてね。ユーちゃんの分も入っているから」


「ありがとうゲーテさん。助かるわ!」


「いいえ、カトレアさんにもお世話になっているからね。時間があったら、またいらっしゃい」と笑顔で見送ってくれた。


「この街の人たちは、みんないい人たちだね、カトレアお姉ちゃん」


「そうね、世界中の国がこのような国ならいいのだけど」


『やはり、王族が女神さまを信じているから、こんなに良い国なのかな?』と思うユーリック。


しばらく歩いて、ギルドに戻ってきた四人。以来の張ってあるボードに行くと、丁度いいワイルドボアとぺリスレムの薬草の依頼が張ってある。


「両方とっちゃいましょうね」とシンシアが二つの依頼を手にして、受付カウンターへと。目指すのは相変わらずリーシャのカウンターだ。


「あら、シンシアさんたち、またギルドへ?」リーシャがそう伺う。

「ええ、明日の依頼も今夜に取っておこうと思って」リーシャに二つの依頼を渡す。

「承知しました。シンシア様たちのパーティはEレベル。依頼のレベルは、DとEなので問題ありませんね。それでは、ワイルドボア1頭につき、銀貨25枚です。依頼主は3頭まで買い取ると言われていましたので。それにぺリスレムの薬草は、最低10個につき一束銀貨1枚でお願いしますね。この依頼主も最大5束まで買い取ると言われていましたので。期限は3日間ですので、三日以内に達成してくださいね」


「ユーちゃん、ぺリスレムの薬草って、どういうのか知っている?」シンシアが訪ねる。


「うん。お肌のお薬を作る薬草でしょ?」


「そうよ。よく知ってたわね!」


「村の周りでいつも見つけていたから」


「偉いね、ユーちゃんは」微笑みながらシンシアがユーリックの頭をなでる。


「ありがとうね、リーシャ。依頼が終わり次第また戻ってくるわね」カトレアがリーシャに挨拶し、ギルドを後にする。


帰り道を歩きながら、依頼をどうこなすか話し合う4人。一応、馬一頭に荷馬車を引かせ依頼に行くという流れになった。ワイルドボアを倒せたときに二重の手間にならないようにだ。ユーリックは薬草探しを任された。一束で十分よ、とシンシアに言われたが5束は簡単に集められる。とにかく銀貨5枚稼げたら、シンシアたちも喜ぶだろうと思っているユーリック。


その夜、ユーリックは村へ帰らずシンシアたちの家で寝た。精霊たちから明日帰る時には街からいろいろな食べ物を持って帰ると伝えたので、明日の夜には帰らなければいけない。


『これから、村と街を行ったり来たりするのは、大変だな』と思いながらも、ソファで眠りにつくユーリックだった。

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