歴史を変える未練
ヨセフはベッドに横たわり過去の回想に耽っていた。周りには彼を愛する家族、多くの臣下がいたが彼らの声はだんだんと遠くなっていく。
「今思えば実に様々なことが起きた人生であった」
ヨセフはそう懐古する。
「私は一度全て失い、そして多くの大切な家族に恵まれた。私の生まれたイスラエルの家族、私を受け入れ育ててくれたエジプトのものたち。すべて私の大切な宝だ。本当に幸せな人生であった」
「しかし、私がいなくなった時代に私の一族は平和に生き、恵まれた生活を送っているだろうか。それが気がかりである」
「私の一族は肩身の狭い思いをしていないだろうか、他の民族たちによって蹂躙されてはいないだろうか。もしそうであれば死んでも死に切れない思いである。もしその光景を目の当たりにした時、私は何を思うのであろうか。怒りで我を忘れるだろうか、あまりの悲しさで知らない方がよかったと後悔するのであろうか。」
「今の私には最悪の結末を迎えないよう主に祈ることしかできない。寿命が限られた人間の無力なことよ」
「見ない方がいいのかもしれない。本当は見てはいけないものなのかもしれない。しかし、主よ、もし私の願いをお聞きになっているのであれば、遠い未来にて私の一族がどのような暮らしをしているのかを見せてはくれませんか」
「私はいったい何を言っているのであろうか。そのような叶わぬ願いをして。、、、なんだか眠くなってきた。、、、もうお迎えか、、、」
そして彼は静かに深い眠りへと落ちていった。