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悪魔が癒し目的で召喚されました▼

作者: 早瀬 小鳩

♂♀2人ずつ、悪魔が召喚されました。


下に順番と名前、属性を載せています。お好きなところから、スクロールしてお読み下さい。


貴方のささやかな癒しとなれたら幸いです。

悪魔シルク♀(クーデレ×真面目)

悪魔クヴェレ♂(ダンデレ×微ツン)

悪魔チェシー♀(ロリ×小悪魔)

悪魔アスタ♂(純情×ツンデレ)

――――――――――――――――――――

悪魔シルク


「シルク」

「呼びましたか、マスター」



傍に来るよう手招きされ、大人しくマスターの隣に座る。背筋を伸ばした私に、マスターは微笑を湛えた。



「ねえ。シルクにお願いがあるんだ」

「なんでしょうか」

「うん。ちょっとだけ癒して欲しくて」

「癒し、ですか」



うん、と縦に首を振ったマスター。私は顎に手を当て熟考する。お粗末ながら、これでも数百年悪魔をやってきた身。今までに癒しを求められたことだって……待って、無かった。


人間は実に業の深い生き物だ。これまでの召喚者はみんな憎しみや怒りに呑み込まれていた。それに比べてマスターは温かい。初めて人の優しさというものに触れ、感動した。


だから私はマスターの傍に居る。彼の願いは願いとも言えない、ちょっとしたことだけだというのもある。初めて会った時に願われた『トイレットペーパー買ってきて』は、たぶん忘れることなど無いだろう。


と、回想に浸っている場合ではなかった。とりあえず、全身全霊をかけてマスターを癒さなければならない。イマイチやり方はわからないが……やってみるだけやってみよう。


お互いソファの上に正座をして向かい合う。マスターが大きく唾を飲み込むのをぼーっと見つめてから、行動を開始した。



「のわっ!?」



まずは、ハグ。ハグをすることで一日分の何割かのストレスを解消することができる……などと言う文言を知っている。癒しもきっと、目的は同じはず。私はマスターの背中に回した腕に力を込めた。



「マスター」

「つ、次は何だい」

接吻(キス)の許可を」

「ええっ!?」



マスターの心拍数が上がった。もしかして駄目だろうか。表情を動かさず、相手の反応を待つ。暫しの沈黙の後、おそるおそるといった様相でマスターは頷いた。



「いいけど……シルクはそれでいいンッ」

「……」



最早聞くまでもない質問は遮った。私はマスターなら接吻(キス)をしても構わない。むしろ、気分が高揚する。何故かは、わからないけど。


30秒くらいたった頃合を見計らって、そっと唇を離した。マスターの目がぐるぐるして、だんだんと元に戻ってくる。私はその様子を間近で見つつ、首を傾げた。



「如何でしたか」

「い、如何っていうか」

「気持ちよくは、なりませんでしたか」

「エッあのっ」

「私は気持ちよかったです」

「シルク!?」



余計なことまで言いすぎてしまっただろうか。反省。


マスターは顔を赤らめながらも、うんうんと細かく頷き始めた。視線は合わないが。



「で、でも僕も……気持ち、良かった、です」

「____そう言えば、フレンチ・キスを30分行うとストレス解消になると」

「も、もう勘弁して!」



……久々に笑えた気がした。


悪魔シルク Fin

――――――――――――――――――――

悪魔クヴェレ



「クヴェレさん癒してください」

「……あのなあ」



ほんのり赤みを帯びた目尻。また仕事でヘマしたのか?なんにせよ、悪魔(オレ)の使い所間違ってんじゃねえか。


玄関で迎えてやったら、なんか褒美を貰えるんじゃないか。そう思って待っていたのが運の尽きだったのか。こいつ、扉開けて俺を見るなり、唐突に変なこと言い始めやがった。


持っていた買い物袋を落として詰め寄ってくる。仕事で使う薬草とかも入ってんだろうに、扱いがなってねえ。いちいちイライラする。


しかしまあ、アレだ。こいつのブサイクな泣きっ面を拝むくらいなら、ふにゃふにゃのあほ面見た方が興が湧く。悪魔は楽しくねえことは好かねえタチだ。そうだよな、俺。



「____やれやれ」



ぼふん、と自分の胸にこいつを閉じ込め、強く抱き締めた。うるせえ口が閉じたのは結構だが、しばらくするともがきながら俺をぶっ叩き始める。まじで意味がわからん。仕方なく胸板から顔を解放させる。



「クっ、クヴェレさんっ。苦しかったですっ!」

「そうか、良かったな」

「もう!」



なお、体はくっついたままだ。俺もこいつも互いに相手の背中に手を回した状態で、顔を付き合わせている。呼吸を弾ませ、赤みを帯びた頬、濡れた瞳。悪魔の好む3点セットを携え、俺を見上げてくる。面倒臭え女だが、なかなかやるじゃねえか。



「離すか?」

「……もうちょっと、このままでいいですかね」

「仕方ねえ奴」



にしても、帰りを出迎えるだけでこんな有様だ。とんだ甘えん坊に召喚されちまった。


俺は、こいつの首元に唇を寄せる。契約の印を、こいつを壊さねえようにそっと食んだ。



「んっ」



こいつは甘い嬌声を上げ、俺に抱き縋る力を強める。悪くねえ。口の端に笑みを浮かべて見下ろした。



「まあ、なんだ。____お疲れ」

「……はい」



幸せそうに微笑まれた。眉が下がるのが、こいつの笑い方の特徴。なんて、気づいちまうくらいにはなったんだがな。釈然としねえ。そもそも悪魔ってのは____



「クヴェレさんも、いつもありがとうございます」

「……まったくだ」



本当、面倒臭え女だよ。



悪魔クヴェレ Fin


――――――――――――――――――――


悪魔チェシー


「エッエッ、チェシーちゃんちょっと!」

「なんだあるじー?」



うんとこしょっと、あるじの膝の上に座った。今のチェシーはあるじの膝くらいしか身長が無いから、重すぎることはないと思う。



「まだ髪が乾いてなくてなー?あるじに乾かしてほしい!」

「いいんですか!?」

「いいんだよー」



おっかなびっくり、あるじはチェシーの髪に触れる。召喚されてからまだ3日。あるじは全然チェシーと仲良くなってくれない。なんでかわからないが、悪魔よりもチェシーの願いをなんでも叶えようとしてくれる。不思議だー。


でも、このままじゃ悪魔としてのチェシーの、めんつ?が危うい。むん、と決意して、チェシーは今頑張ってあるじに近づこうとしたわけだ。とはいえどうすればいいのか知らないから、ぶつりてきに近づいてみた。


あるじはチェシーの渡したドライヤーを持って、緊張しながらもチェシーの髪を乾かしてくれている。濡れていた髪がどんどん乾いていく。あったかくて、心地がいい。



「で、できたよチェシーちゃん……」

「んあ、ありがと……なあ」



だんだん眠くなってきた。目をこすったら、そっと手を止められる。あるじは優しくチェシーを見下ろした。



「もしかして、眠いの?」

「……うーん」

「だったらっ、俺のベッド使ってくれて構わないから!」

「あるじは寝ないのかー?」

「おっ、俺はー……寝ないというか、眠れないといいますか……」



何やら独り言を喋ってるみたいだけど、よく聞こえない。膝の上から降りて、ズボンをちょっとだけ引っ張る。



「な、なに?」

「一緒に寝よ、あるじー」

「ひえっ!?」



変な声を上げたあるじは、途端に真っ赤になった。勢いよく立ち上がって、ソファを避けつつ後ずさりし始める。


ああ、そうか。



「……あるじは、チェシーのこと嫌いなのかー」

「えっ」



納得した。嫌いだから、チェシーのこと嫌いだから、挙動不審なんだ!


あるじは慌てたように、涙目になっていくチェシーに詰め寄ってしゃがむ。そして、チェシーの肩を掴んでは揺すった。びっくりした。



「そ、それは違う!断じて違う!俺は全然嫌いなんかじゃなくて、」

「嫌いじゃないなら、なんなんだ……?」

「だあかあらあ、……きすぎるっていうか……」

「聞こえないぞ、あるじ」



怪訝な顔をして、聞き直す。あるじはしばらくもじもじしていたが、やがて意を決したように大声で叫んだ。



「大好きすぎるっていうか!まじその、俺の性癖貫いてるっつーか」

「せーへきってなんだ?」

「大好きってことです!」



ぽかんとしてしまう。言われたかった言葉のはずなのに、いまいち笑顔になれない。目に溜まった涙が落ちた時、ようやく口角が上がった気がした。泣き笑いってやつかー。



「そっかあ、よかっ……たーっ」

「チェ、チェシーちゃん、ごめんね!好きだから、その、ためらってしまうと言いますか……」

「せーへきだから?」

「そう!性癖だから!」



そっかそっか。チェシーはしゃがんで目線を合わせてくれたあるじに抱きつく。首に腕を回して、ぎゅーっと抱きしめた。



「チェシーもあるじのこと、せーへき!」



(この後滅茶苦茶一緒に寝た)



悪魔チェシー Fin


――――――――――――――――――


悪魔アスタ



「あ゛あ!?誰に物を言ってやがる!」



召喚者を壁に追い詰め、両腕で逃げ場を無くした。この女、召喚して早々「私を癒して(裏声)」とか抜かしやがったじゃないか。


この完璧で無敵な悪魔アスタ様に、癒せだと?世界征服ならまだしも、ふざけているのか!



「でっ、でもアンタ悪魔なんでしょ!それくらいできて当然じゃないの?!」

「そういう問題じゃない……いいか?俺はぶっ壊すのが大好きなんだよ。女とそんな、破廉恥なことすんのはガラじゃないんだ。わかるか?」

「破廉恥……」



女は黙りこくる。破廉恥だんなモン、聞けばこの女、伴侶も居ねえ処女だと言いやがる。悪魔は、だ、堕落した女しか好まない。こんな、聖女みたいな奴に召喚されるなんて、とんだ悪運だ。


こんな、綺麗な髪を俺の前に晒しやがって。肌だって食いたくなるくらい真っ白で柔らかそうだ。瞳も、身体も、唇も!なんなんだこの女、ふざけるな。くそ、調子が狂って仕方がねえ……!


俺が顔を下げて悶える間に、何か思うことがあったのだろう。俺の頬を両手で包んで、無理やり顔を上げさせた。畜生、俺が意図せず仕組んだとはいえ、顔が近いんだよっ。



「癒しは破廉恥とはまた違うでしょ!別に、キスとかましてや性交渉なんてものも望んじゃいないのよ。ちょっとハグとかしてくれれば、それでいいから」

「はあ!?ハグだと!?それで子を為したらどうするんだ、悪魔の子でも産みたいのかお前は!!」

「……はっ?」



もしかしておバカ?みたいな顔で睨まれた。実に不服だ。バカはお前の方だ、俺の方が事の重大さを理解しているだろう。やはり人間は愚かだそうだそうに決まってる!!



「一応聞くけど、アンタは子供の作り方知ってるわけ?」

「えっ、だからそのー……アレだろ。は、ハグとかしたらコウノトリが運んでくるんだろ」



もじもじしながら答えると、女は楽しそうな顔で「ふーん」とだけ言った。言わせておいてその反応はなんだ!バーカバーカ!



「アンタ意外とウブなのね。悪魔も色々居る訳だ」

「何一人で勝手に納得してんだ?」

「別に。可愛く思えてきたかも」



急にフレンドリーになり始めた女は微笑みを浮かべて、ドキッとする。いやドキッてなんだ?ドキッてなんだ!?!?(二回目)


よしよしと頭を好き勝手に撫でられたこっちは溜まったモンじゃない。俺は世界最凶にして偉大なる悪魔、アスタだ!こんなっ、こんな犬みたいな扱いを受けるために召喚されたわけじゃない!



「やっ、やめろバカ!」

「あら。撫でられるの嫌い?」

「確かにちょっと気持ちいいが……って、あ!!俺は何も言ってない!言ってないからな!」



だから撫でるのやめろって言ってんだろ!バーカバーカ!



悪魔アスタ Fin

如何でしたでしょうか。少しでも良いなと思っていただけたなら幸せです。


よろしければ、どの悪魔が一番良かったか教えて下さると嬉しいです。


若干恋愛を絡ませたような話を書くのが初めてで緊張しましたが、またこういったものを作れたらいいなと思います。


最後になりましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました!

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