みいちゃん 1
「みいちゃーーーん」
大声で、ボクは叫ぶ。
「待ってよ! 待ってったら!」
息がきれる、その合い間をぬってボクは叫び、山の小道をかけ登って行く。
目の前にうねうねと続く山道、木立のすき間に時おり、白いシャツの切れ端がひらめき、またすぐに遠くなる。
どんなに追いかけても、みいちゃんには追いつけない。
幼なじみのみいちゃんは、少しだけボクより背たけも大きい。
だからなのか、ボクよりかずっと、強かった。
ボクよりずっと、勇気もある。
「いっしょに、さんかく山にのぼろう? ふたりっきりで」
目をくりっと見開いてみいちゃんがそう誘った時も、ほんとうは、
「いやだ」
そう、言いたかった。
みいちゃんはさんかく山にのぼるのなんて、平気だろう。小学生は子ども会の時に、みなであの山に登ったりする。もちろん大人も必ずついて行くけど。
でも、ボクたちはまだ、一年生にもなってない。
それを、たったふたりで? ムリだ。
でも、
あの大きな瞳でじっと見つめられたら
心臓を、ぎゅっとつかまれてしまう。
「……いいよ」
いつの間にか、ボクはそう答えていた。
そして、ボクは今、けんめいにみいちゃんを追うことになってしまった。
山をのぼるだけでも、せいいっぱいだと言うのに。