【三月二八日午前十一時新着 『全国キキカイカイ ~奇々怪々特報~サイトより】
巡査長、パトロール中謎の行方不明! 失踪? 誘拐?
静岡県静岡市原川交番の青木二郎巡査長(41)が、二十六日深夜のパトロール中に行方不明となり連絡が取れなくなった、と同行の高村卓巡査(26)より通報があった。
県警によると、青木巡査長と高村巡査は10日深夜11時半過ぎ、無線で不審者を見かけたとの110番通報で静岡市北新町の静岡バイパス鈴沢インターチェンジ近辺に急行、巡査長が現場近くで不審者を発見した。巡査長が車から降り、不審者に声をかけて近づいていったものの、しばらくしてから青木巡査長は高村巡査に向かって車内で待機するよう指示、そのままその人物について高架下の道路をくぐり抜け、姿を消した。
現場は原川交番から北に二キロ離れた、人通りのほとんどない田園地帯。
県警は捜査員三百人態勢で巡査長の行方を追い、捜査を続けている。
青木巡査長は拳銃を所持していたが、拳銃の行方も分っていない。
***
―― 知り合いなのかな、と最初思いました、はい。車内で巡査長が
「あれ、アイツ」
そう言って、窓を開けたんです。側道に立っていた人物は、こちらを向いてはいませんでした。でも、巡査長は誰だか判ったように
「おい、何だ、どうしたんだよ」
そう、声をかけました。
普段でしたら、けっこう丁寧な口調で話しかける人で、例え相手が不審者でも
「だいじょうぶですか?」
とか
「どうされました?」
みたいな口をきく人でした。それが、案外ぞんざいな口調だったのが印象的でした。
しかも、意外そうでしたが、どちらかというと嬉しそうに。
それからすぐに車を止めて、と僕に言って、止まったと同時に外に出て行きました。
誰なんですか? と訊ねようとした時には、小走りにその人物の元まで行ってしまっていて。話している間も、巡査長は時々笑顔を見せていました。相手は、全くこちらから顔が見えませんでした。男なのか女なのかも、はっきりとは。たぶん男だったかな、と。はい、成人だろう、という程度です。巡査長より背は高そうでしたし。
心配になって僕も車から降りようとドアを開けました。それに気づいて巡査長は、あわてて手を振りました。追い払おうとするような手つきでした。口が『くるま』と動いたように見えたので、てっきり車内で待つように、という合図かと思い、車に戻り、ドアを閉めて待ちました。
巡査長は話しながら相手について行って、高架になった道路をくぐったきり、それで戻って来なかったんです。
その時飲んでいたか? ですって?
冗談でしょう? 僕はもちろん素面でしたし、巡査長が真面目な方だったのは、皆さんご存知かと。