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zero
「ちょっと見て! ここ、何かヘンじゃないですか?」
成島みずきがそう叫んで画面を指さした日。
落合エレンが楽しげに
「すたんぽんの穴、見に行きましょうよ~」
そう言った時、
すでに、
僕たちは
底なしの穴の縁に立たされていた――地獄の入口。そう
『すたんぽんの穴』の。
七月始めのこと。
システムは大まかに完成して、生徒や教員に配布するWi-Fiタグも発注済みで手元に届いていた。
後は始めるだけだった、実験を。
しかし惨劇は、実はもっと前から始まっていたのかも知れない。
ずっと、ずっと前から。