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52.影が薄い

 都内某所の駅舎の上にカラスとハトは戻って来ていた。青木から「おみやげ」までもらった二羽はホクホク顔でさっそくそれを突いている。


「いい暇つぶしでしたね、先輩!」

「そうだな、たまにはよいな。青木は交尾したがってたみたいだが、番の女はまるで相手にしてなかったな」

「そうだったんですかー。いもむしうめえ」

「お前、ほんといもむし好きだな。青木からもらったパンに乗せて食べるとか」

「おしゃれ食ですよ。先輩。人間たちはおしゃれなものに惹かれるそうっすよお」

「くええ!」

「くああ!」


 ハトからいいことを聞いたカラスは、今度青木に食パンライドオンいもむしを進めてやろうと心の中でくあくあした。

 これで雌の気をひけるだろ。俺ってなんていいやつなんだ。

 カラスが満足気に頭を前後に揺すっていると、久しぶりにトンビの奴がやってきた。

 

「よお、お前ら」


 トンビは足に掴んだ缶詰を床に置く。


「トンビか」

「トンビさん、最近影が薄いっすね―」

「おい、ハト!」


 ハトがとんでもないことを言いやがったので、さすがのカラスも止めに入る。

 一方のトンビは真っ黒なオーラをまといながら相当ダメージを受けているようだった。

 

「トンビ……き、気にするな」

「お、お、おう……」

「たまにはどっかに遊びにいくか?」

「お、おう。そうだな。どこかオススメはあるのか?」

「うーん、そうだなあ……」


 悩むカラスへハトがくるっぽーと鳴くと、彼の頭に電球が浮かぶ。

 

「先輩、暑いですしサーフィンにでも行きます?」

「そうするかー。トンビ、それでいいか?」

「サーフィン? 海にでも行くのか?」


 行ってみないとサーフィンができるか分からないところだが、トンビの様子が元に戻ってほっと胸を撫でおろすカラスなのであった。

 

 ◆◆◆

 

「そんなわけで、やってまいりました動物園です」

「お前は変わらないな、ハト……」

「そんな褒めなくてもいいっすよ!」

「褒めてねえよ!」


 彼らは動物園にあるアザラシの飼育小屋に来ていた。ここはアザラシが泳げるよう大きな人工池が作られている。池は地中でガラス水槽と繋がっていて、観光客は建物の地下に入ることでアザラシが水中で泳いでいる様子を観察できるというわけだ。

 カラスはその場でくええと舞い上がると泳いでいるアザラシの背に乗っかる。それに反応したアザラシが背を水面に出したままスイスイと泳ぎはじめたではないか。

 

「さすが先輩、うめえっす! パネエッス!」

「おう、当たり前よ!」


 盛り上がる二羽に対し、トンビは冷や汗をたらりと流しドン引きしている。

 

「お前らの遊びは理解できん……」


 トンビはそう言い残すと、しっかりとゴザを敷いてお弁当を開いた家族連れからおにぎりを奪い取って海辺の公園に帰って行ったという。

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