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49.特別編10 タイマン

「こら、足をあげるな!ハト!」

「なんすか?」


 ハトの体の下から見上げる形になっているので、俺が見上げてもハトがどんな顔をしているのか確認することはできない。

 しかし、奴はきっといつもの知性をまるで感じさせないくるっぽーな顔をしているのだろう……。

 ってそんな無駄なことを考えている場合じゃねえ。踏まれる、踏まれるって!


「ほう、食いがいのあるサイズになったものだ……」


 ソーセージをむしゃむしゃと食べながら、猫の目が光る。

 食うなよ、食うなよー。喋るハトを目の前であんぎゃーされたら後味が悪すぎるからな。


「ハト、だから虫なんて食べるなって言ってんだよ」


 カラスがハトの背に飛び乗ってくあくあと鳴く。

 そうか、そういやハトのやつ気持ち悪い色をしたウネウネのいもむしを食べていたよな。


「良一さま、街に向かわないのですか?」


 ミオが可愛らしく首を傾けるが、何でそんな普通なんだよお!


「どうすりゃいいんだよ。追い剥ぎするわ、ハトがでかくなるわ……」


 もう俺には何ともできんわ。


◆◆◆


「そんなわけで街にやってまいりました」

「変わった姿の人間がいるな」


 街の人たちは馬車より大きくなったハトの姿に騒然となっている。

 とりあえず何も見なかったことにして来たはいいが……やはりやめておいた方が……。


 って、カラスとハトよ。何でお前らいつもの調子なんだよ。やばいやばいって、武器を持った人が門までやってきたぞ。


「ミオ、ハトのサイズが戻るまで街は無理なんじゃないかな」


 元の姿に戻るのか知らんが!


「良一さま、猫さんが門へ向かってますよ」


 お、おおい。猫お。何してんだよ。

 巨大なハトに警戒して出てきただけの善良だろう武器を持った人たちへ猫は数人ヤッてそうな眼光を向ける。


「おい、人間。鶏肉をよこせ」


 と、鶏肉だったらそこにいるだろ?

 この際仕方ない。え? 鶏じゃないじゃないかって? この際細かいことは気にしないぞ。俺は。


「おい、そこの男。この猫はお前の使い魔か?」


 またこのパターンかよおお。


「おい、青木。こいつらは俺の獲物だ。さっさと鶏肉を持ってこい」


 えらそうにのたまう猫へ当然ながら困惑をあらわにする人たち。


「ほう、面白そうじゃねえか。そこの猫、俺に勝てたら鶏肉をやろう」


 問答を聞いていただろう筋骨隆々の武道着を着た屈強な男が前に出てきた。


「ほう、少しはやるようだな。かかってこい」

「なかなかやる。オーラで分かるぞ、猫。お前の実力がな……」


 ゆらりと体を揺らす武道着の男へ対し、猫はあくまで自然体そのものだった。


 飛びかかる武道着の男。

 猫はというと、目を伏せ右前足をちょこんと折り曲げる。

 次の瞬間、武道着の男と猫が交差し……突き抜ける。


「や、やるな……猫……」


 どさりと倒れ伏す武道着の男……。


「お、おおおお」


 何故か歓声をあげる集まった人たち……。

 不審なハトをどうにかしようと集まって来たんじゃなかったのかよお。

 なんかもうどうにでもしてくれ……。


 俺はその場でガクリと項垂れるのだった。

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