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21.アヒル

 電車に乗り込んだカラスとハトを覚えているだろうか? 彼らはあの後、人間が立っているのに二席分堂々と座席を占領して遠出をすることになった。

 飛ぶより楽ちんと彼らはぐあぐあと鳴いていたという。

 なんと乗り換えまでした彼らがぼーっとしていると電車は終点まで来てしまったのだった。

 

 電車からよちよちと歩いて降りるカラスとハト。

 駅を出たら……

 

 湖が広がっていたではないか。

 

「そんなわけでやってまいりました。湖です。しかし、どこにいるのか分かりません」

「細かいことは気にするんじゃねえ。せっかく来たんだ。遊ぶぞ」

「そうっすね。くああ」

「くええ」


 あくまで陽気な二羽は、戻りはどうするとか割に重要なことを考えもせず目の前に広がる湖へ向かうことにした。

 

 湖のほとりでは、何やら騒がしい集団がぺたぺたと列になって行進している。

 ぐあぐあぐあぐあぐあ。

 

「うるせえやつらだな!」


 ぐあぐあぐあぐあぐあ。

 

「そうっすね!」


 ぐあぐあぐあぐあぐあ。

 

 だああああ。うるせえええ。アヒルが集まるとこうもうるさいのかよ。カラスは憤る。しかし、彼がくえええと威圧してもアヒルたちはまるで動じない。

 なんとかしてこいつらに一泡吹かせてやれないものだろうか……カラスは周囲を見渡す。

 それにつられて、ハトも首を回した。

 

「あ、先輩、あんなところに巨大なアヒルがいますよ」

「ん……あれは人間たちのおもちゃのボートだよ」

「そうなんすか! あれでぐあぐあしたらアヒルたちもビビるんじゃないっすか?」

「よおおし、やってみるか! ハト」

「はいっす!」


 悪そうな目をした二羽は急ぎアヒルボートまで飛んでいくと、ボートの中へと侵入を果たす。

 ボートの中は自転車のようなペダルが左右についていて、このままでは動きそうにない。

 試しに、勢いをつけてペダルへアタックしてみたが、まるでビクともしなかった。

 

「ハト……」

「先輩……」

「ダメだなこれは」

「そうっすね……」


 ぐあぐあ集団はいつのまにか水の上で隊列を組んでいて、水中の魚を獲ろうと頑張っているようだった。

 どうしたものか……カラスとハトはアヒルボートの上にとまり奴らの様子を伺う。

 

「ハト……奪うか……」

「先輩……その獰猛な目……やる気っすね!」

「おう、見ていろ」


 カラスはアヒルの動きをじーっと観察し、タイミングを見定める。

 やるのは奴らが水の上にあがってきた瞬間だ。カラスは目を細め、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

――ここだ! まぬけなアヒルども!


 ちょうど魚をくわえて水面に顔を出したアヒルめがけてカラスは一直線に襲い掛かる。

 そして見事、カラスの嘴が魚に突き刺さり、勢いがつきすぎたカラスはそのままアヒルたちの元を抜けていく。

 

 肝心の魚は水の中にぽちゃんと落ちてしまった……。

 せっかくとった餌を落とされてますます「ぐあぐあ」が激しくなるアヒルたち。一方のカラスは憮然とした顔でハトの元へ戻る。

 

「惜しかったっすね。先輩」

「俺としたことが……」

「でも、あいつら悔しがってますって」

「うるさくなっただけだったな……」


 その時、派手な爆竹の音が響き渡りアヒルたちは一斉に飛び立っていく。


「先輩、静かになりましたね」

「あ、ああ……」


 なんだか納得のいかないカラスなのであった。

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