5ヶ月
あの日から、5ヶ月が経っていた。
もう、そんなに経つんだなぁ…とお店の自動ドアが開く度に入ってくる風を感じながら、考えていた。
その風は、草の香りが混ざった暖かい風である。
もう、4月の後半だもんね…なんて、考えていたら、後ろから気配を感じた。
振り向くと、深瀬さんが礼儀正しく手を合わせて立っていた。
「…お疲れ様です」
『お疲れ様です。今日、暑いね』
深瀬さんとは、以前いた頃よりお話出来るようになった。
それに、こうしてタメ口で話し掛けられる事もよくある。
深瀬さんとお話していると、安心出来て、自分の本音も言えるんだよね。
「暑いですね。どうしたんですか?」
『あっ、そうだった。星村さんにお願いしたい事があるんだけど…大丈夫?』
相変わらず、忘れっぽい所は変わっていないけど、可愛いな…と思う。
時々、イライラしてしまうけど…。
「大丈夫ですよ。今、手空いてるので」
『ありがとうございます。それじゃ、これなんですけど…』
深瀬さんの説明を聞きながら、深瀬さんの顔を見ていた私は、ある事に気付いた。
基本、メガネを掛けているから気付かなかったけど、下を向いた時に見えた目は、まつげが長くてきれいだなぁ…なんて思っていた。
『じゃ、お願いします』
深瀬さんが私の顔を見て、そう言ったので慌てて、「わ…分かりました」と返事をした。