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プロローグ

 怖いと思った。もう戦いたくないと思った。でも、誰も許してくれなかった。自嘲が聞こえた気がした。馬鹿じゃないの? と。今更だ、と。何度も、何度目だ、と。慣れろ、と。(わたし)は泣いていた。声が漏れていた。抑えられなかった。泣きたかった。誰かに助けて欲しかった。私以外の、誰かに。泣き止むと、少し冷静になれた。


 布団は心地好かった。完全な暗闇の部屋は救いだった。目を閉じても、開けても、何も変わらない暗闇。内側と外側の境界を曖昧にしてくれる気がした。そんなのは気の所為だと解っていた。だから、誰か。私じゃ駄目なんだ。


 心が暗闇に馴染んでいく気持ちがした。真っ暗な瞳、半開きの唇。このまま消えられるんじゃないかと思った。でも、無理だ、そんなことは。首輪を引き千切りたくなる。それをやってはいけない。やればどうなるのか知っている。もう14年も前に教え込まれた。あれは私の所為じゃないのに、私の所為になる。


 死にたい。死にたい。死にたい。


 嘘だ。本当は死にたくなんかない。死にたくないから、苦しんでいる、こんなに。死にたくない、「死にたくないよ……」。こんな人生に何の価値があるのかは解らない。とっくに台無しになった人生で、これからも台無しになり続ける人生だ。それでも死ぬのは嫌なんだ。もっと、自由に生きたいんだ。海峡を渡っていくように、地を這うようにではなく。


 私は助けてもらわなければならない。きっと、それは、本当だ。守護、それが必要だ。でも、そんなもの、この世界に存在するのかさえ疑わしい――。いや、あった。一つだけ、間違いなく存在していた。だけど、それは、私にとって儚すぎる。儚い、けれど間違いなく希望。それは例えば、繭の殻の堅さしかない。脆い、それで希望。畢竟(ひっきょう)、私には選択肢などない。希望を選ぶしかない私と、私のためにはない希望。そうして私は、いつもの朝を迎える――。





『求めたものはディフェンサー』

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