幕間(1)
「さっきの報告は本当かね?」
「はい、副院長。間違いはありません」
「ふむ、そうか……。よし、下がっていいぞ」
「はっ、失礼いたします」
教頭は私にお辞儀をすると部屋から出ていく。私は彼が完全に部屋から出たのを確認すると、先ほど受け取った今回の騒動をまとめた報告書をもう一度確認した。
学院近辺に突然現れた強力な魔物、報告書によると子鬼が巨大化したような姿だったようだが、それは実に妙な話であった。
授業や依頼などで生徒たちにこの辺りの強い魔物を掃除してもらっている。そのため、本来ならばそのような予兆のある強い魔物は倒され、『変異』などどいう事態にはならなかった筈だからだ。
……そういえば、少し前も。
私は実地訓練を担当しているディーン講師の報告……というなの自慢を思い出した。ある班の生徒たちが授業中にとても見事な牙を取ってきてくれた、と。
その時は流してしまったが、よく考えればそれも異変の一つのように感じる。ならば一度、学院周りの調査を徹底的にするべきだと私は考えた。特にその、子鬼の住処だった洞窟は早急に調査する必要があるだろう。
まぁ、それとは別に、だ。
私は報告書を捲り、目的のページを見つける。
「1学年の身で単独討伐とはな……くくく」
魔物の第一発見者は生徒、しかもまだまだヒヨっ子の新入生たち。そんな彼らの一人が倒したという情報は、私を大いに楽しませた。
私はひとしきり笑ったあと、報告書を机に置いて外を見る。
窓から覗く世界は、ちょうど日が暮れ、橙色の空が広がっていた。
「更なる成長が楽しみだ」