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三人称小説 15ページ
ユリの部屋に滑り込んだタケルは、父親に見つかったかどうかも分からず、彼女の指示でクローゼットに隠れた。
何故かユリも息を潜め、「ドキドキするね!」と一緒に隠れている。
沢山のドレスの隙間に身を寄せ、二人は向かい合い硬直していた。
「パパ、トイレに入ったみたい」
「ゆ、ユリは自分の家だから、隠れる必要あるのか?」
狭いクローゼットを内側から閉めているので、タケルは自分の心臓の鼓動がユリに聞こえるんじゃないかと不安な反面、強がりを言った。
ユリは頭をタケルの胸にあずけると、優美な気品で語り掛ける。
「お願い、今はこうしていたいの」
暗闇の中、手探りでタケルの腕を握りしめ。ユリの桃色吐息が思春期男の勃起を駆り立てた。同時に、理性と本能の狭間で、一本の光がタケルの心を揺さぶる。
「ユリ、お前にだけは、何もかも包み隠さず言う」
ユリの返事は、握られた腕の感覚で理解できた。
「俺は今、興奮している。ユリのお父さんが、この家に居ることを百も承知でだ」
ジャー
ヤスオは用をたし終え、一直線にユリの部屋へと向かった。
コンコン――
ノックの後、ドアが開く。
――カチャ