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ロクな物ない

右手はエリック、ITTOKANを抱えてひた滑る。


これ以上はやらせん。これ以上はやらせんぞぉーっ!?


いや、運命とか云々からどうしてこうなったのだろ。

数学の先生んとこ顔出したの失敗だったかなー。


まじカオスし。


まじか・カオス・おすし・のオッサン三段活用。


テストにでないから覚えておいて、忘れたら承知しないからなー。



「教頭、一時休憩にしましょう」


「…ふぁい」


洗脳系統の魔法は、薬品と交えてかけると上手く作用する。

反動で、使用者がしばらくネガティブな感情になるのが難点ではあるが、スルテカの手が止まるよりましだ。


喚きちらすだけでは何も進まん。過ぎた野心さえなければの話になるが、スルテカは仕事していたならば優秀な男だった。


元々、血統派と言うのは、数百年ほど前解体された古代帝国“サンドラ帝国”の貴族の血を引くと主張する者達の“魔術研究会”集まりだ。


当時は、全体的に魔法水準が高かったが、一般に広まっている魔法でも貴族が使うのと平民が使うのとでは効果が桁違いだったらしい。


平民と貴族の魔法違いは、その血がそうさせるのではないかという集団で、魔法の繁栄の為に人に語れぬような行為にも手を染める。


一時は大陸を支配していたサンドラ帝国、その貴族の血を引くものは大陸中におり、現代に存在する大貴族と呼ばれる一族のほとんど古い時代から同じ領地を受け継いて来ている。


故に、古い貴族は血を軽んじず血統派を指示する者も多い。

また、当時より数段落ちるらしいが平民などより血統派の貴族ないし参加者の魔力は高い。


たまに平民に高い魔力を持つものもいるのは、そうした血が平民の中に薄まりながら広まっているのだろう。


散らばった血を集め当時の支配者と同等の濃さを取り戻し、極まった血統派の力で大陸に覇を唱えると言う考えだったようだ。


…正直、選民意識の極みなのだろうが、王を筆頭にした国政に参加して居るものまで傾倒している意味がわからん。


平民が参加する過激な思想の血統派と、直系の貴族では考え方が違うのかも知れないが、少なくともスルテカと元大臣は前者であり、近年の開発が上手くいっていたのとおこぼれに与ろうと近寄る者達のおかげで派閥が勢いをつけ始めていた矢先にだ。


あの研究に着手し国庫に少なからぬ損害を与えた。


摘発により取り戻した資料を元に開発を始め、貴重な素材を使いつぶし無謀な実験を繰り返したおかげで、半年ほどの人的被害は決して軽視できる人数ではないと言う。


あれだ職を追われるのも致し方なしか。


スルテカも血統派を転々としていなければ、それなりの地位を手にしていたのだろう。


選民意識と欲深さこそが血統派万人に受け入れられない理由なのだろう。


同じ血統派から派生した、ボランティア活動で有名な慈愛の会は慈善事業の団体として支持者から集められた寄付で活動しているというが、貴族から多額の寄付金が寄せられていて、上層部は貴族関係者で埋められているらしい。


此方は、血統派よりかなり行動的で何度も統治を敷いている権力者と対立している。


他にも、血統派の流れを汲む組織はあるが、新興国以外の王族・貴族は皆少なからず血統派の思想の影響を受けているだろう。


大陸中に広がる有名な組織だが、国に対しての影響力がないのはそれが理由なのだろう。

絶対的な権力者の王がいるなら、誰が古い高貴な血を引いていようが“多大な勘違い”であり反逆者以外の何物でもない。


それこそスルテカのように私財の全てを投げ打ってしまうのは少ないだろうが、貧しい立場であればあるほど、血統派に傾倒する傾向が高いのは、貧しい暮らしを経験したからこそ、あるかないかわからない“血”に誇りを求めるのだろう。


「…まあ、こうなってしまっては全て無駄だったろうがな」


思うままに敷地から出られなくなった老人は虚ろな顔で手を止め休んでいる。


「この状態だと痴呆とあまり変わらんか」


そして、口元は常に何かを呟き震えている。

紡がれる言葉に意味があるのなら我が身に起こった“理不尽”への怨みだろうか。


「……がっ!?ま、スルテカ!!」


気を抜いた一瞬の隙に、目を血走しらせたスルテカが机を乗り越え、行きずりに進路上にいた元暗殺者を何度も床に叩きつけて意識を奪ったスルテカは、自らも混濁した意識のまま脱走したのたのだ。


当日教頭と廊下ですれ違った生徒は皆様口を揃え同じ証言を残している。


―痴呆による徘徊。


あんなみっともない年の取かたはしたくないと悲しげに呟いたと言う。


そう、オッサン的にならはシンクロ率で言うならば充血100ヨダレ100鼻水100糞尿100合計400パーセントを超える危険な状態で教頭は歩き出したのだった。

ロクな話にならない予感。

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