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トリコロ

「まったく、仮にも栄えある我が校の生徒の一人に、バカだバカだとは言いたくはないのだが、君はいつになったら生徒指導室の場所を覚えるのかね」


「もうし(ね。反省する)わけありません」


心の本音に蓋をして、素直に謝る私を見て糞えっらそうにイスにふんぞり返った教頭。


細面のくせに弛んだ顎と首の肉、外にでたら問答無用で太陽拳を放つ油顔の糞爺。

学園長は50過ぎてるらしいけど、この人は70近いと思う。

正直、定年がない世界を恨みたいわ。


生徒指導室なんて密室だし、どんな理由であれ男性教諭が女子生徒と二人きりなんてあってはならないはずなんです。


宦官とかなら話は別なんだろうけど、玉を取ろうが竿が無かろうが、心が女性でなければ危ないのは一緒だよ。

だいたい、この人学校にいる女性にセクハラしまくったせいで、事務から何から毛嫌いされて派閥が男しか居ないから、生徒指導室の会話を聞かれちゃったら学園から追い出されかねないから絶対呼べませんよね。


でも、80生きたら長生きな世界なのに、生徒の考えを奪って他に流したりすんのよ?


私だけじゃないって話だし、やってる事は産業スパイと一緒だよ。


「最近は、勉強は頑張ってるようだがあまり芳しくないようだね」


いや、教頭のあんたが自分の派閥の教諭に指示さえださなきゃ句読点のたりないくらいでバツになったりしないの、他の教科は平均できても四教科ゼロ点じゃ最下位にもなるってーの。


それをあたかも、こちらの努力が足りないなんて言い換えられるアナタのお味噌は腐ってます。


天才なら、他で満点とれてんだろな。


チクショー。


「まあ成績が最下位でも私がいるのだ、キミは何も心配する事はない」


「はい、いつも(邪魔してくれて)ありがとうございます」


もったいぶった前振り長いの。


「でだ、何かをするにもタダと言うわけにもいかん。しばらく前からの話だが、貴重な資料が足りなくては軍の開発も低迷しているというのだよ。勿論、全く君とは関係の無い話ではある訳だが…」

何というか、グニャグニャしたり振り返ったり、西田〇行さんならやってくれそうな動きをしてます。


けど、この爺がやると頭のヅラは傾くは気持ち悪いわ加齢臭は飛んでくるわて気持ち悪いわ。

「…なんでしょうか」


「ラムジェットとかいう理論の完成品が君の手元にあったとしてだ」


ラムジェット理論?


「…私は空想として、ふざけて書いただけなので、あれ理論なんかないですが?」


詳しくはググれ、説明するのも面倒いがジェット機は燃料なしでは飛ぶわきゃないんだ。


「では、太陽光飛行装置とやらもないと言うのかね」


「まあ、ありません。光にまつわる魔法を使える人なんて過去にも伝説の勇者くらいしかいませんし、よく考えたらそんな速さに生身が耐えられる訳がなかったんで、物理科学に強い先生に話したら法則を加えたら加速段階でまずグシャグシャになるってりますよね」


太陽光をうけて光の速さまで加速する魔法装置なんか出来るわきゃなかった。


「だいたい、現代の魔法理論に物理が組まれてる時点で、まず物理計算からやらないとなんにも出来ないんですよ?

あの意味が分からない数字を解読しなくちゃ使えない時点で私には無理でした!」


魔法の可能性は無限らしいけど、人の体に関わる魔法には必ず限界点があり、肉体強化魔法も、骨にヒビはいったり筋肉断裂したりするらしくて、物語みたいに限界突破なんかできないよ。


大地が溶けるような熱量の高い高位火魔法は距離が離れてないと、熱で術者が死ぬが距離が離れると威力が落ちるらしい。


しかも、古代魔法はなんでも出来たらしいけど、ランダムで奇跡をおこす“パル分テ”的に悪い事も起きたとか意味分からん。



「ふむ?確かに、学生でいる間に生み出した技術は学園名誉となるし、名誉欲しさに卒業までひた隠しにする者も少なからずいるが…キミは違うと思いたかったんだかねぇ」


ちげーよ。元ネタが漫画の中の技術で細かい事知らないだけだよ。


「とある資料を元にした技術を参考にしたおかげで、私の知り合いが大変な窮地に置かれていてねぇ。誰のせいだと責めてる訳ではないし責任を感じたその心を苦しめたい訳ではないんだ」


「はぁ、ソウデスカ」


いや、グニャグニャ動きながら話されるとうっとおしいんでやめて。

だいたい、らくがきを元に開発なんか推し進めすんなってーの。

あんたが横流してくれたおかげで国の費用を無駄にしてたんだからな。

部屋のもん勝手に持ち出して預かり知らん所で窮地に陥るとかバカすぎるでしょう?


「一体責任は誰にあるんだろうねぇアティア君?」


キモイ顔近づけんな口が臭いし加齢臭するし最悪。


「そんなの…うぶっ!?」


背後から口を塞がれ、首筋に冷たい感触が当てられた。

鉄とか細くて長い板みたいな形状で動脈とか切れそうな短剣とかだね。


どうやら、教頭以外の何者かがいたらしく、口を塞がれた上で刃物を当てられているようだ。

拒否権はないとかやりたいんだろけど、マジ知らないとか言ったら殺されますかね。


「今日は素敵な人物を特別に呼んで来ていてね。ちょっと風変わりな法律家とでも思ってもらえるとありがたい」


担当は暗殺と口封じですか、ありがとうございます。


「私の知る生徒の一人がどうしようもないクズだとはなしたら、ぜひ教育に協力したいと彼がおっしゃったので招待したのだが、…どうだい、素敵な人物に敢えて嬉しいだろ?」



否定したら始末されそうだから、コクコクと顎だけを動かして頷こうとしたら抑えつけられた。


「今からキミは頷く必要もない」


意外に若い声が


「私は寛大でな、これから先に素晴らしい未来が待っている君に、二つ道を示してあげようじゃないか」


教頭は胸ポケットから鍵を取り出し、こちらに近づいてきた。

エロい事だったら舌噛んで死ぬつもりだったけど、どうやら違うようだから一安心?


いやニッチもサッチもいかんのはかわらないんだけど、どうしてくれる。


「冒険者の貧乏人はともかくとして、この学園には極稀に家の事情などで自主退学をしなければならない方々が利用する貴重な鍵でね」



私の腕に癒着するように嵌められた継ぎ目のない腕輪に差し込んでくれた。


「さあ、握ってご覧。もしそのカギを一捻ったりしたら、キミは学園生徒でなくなり不法侵入者として、学園に張られた結界からはじき出されてしまうからね。事故で外れたりしてしまう場合も考慮して本来は国の定めた地下牢に送るようになっているのだが、今回はキミのために高い空、地面の中、海の底と選べはしないが何処にだって飛ぶのかわ私にも解らなくしてあるのだよ」


同時に、首に当てられたナイフ少しだけ後ろに引かれた後、込められた力が一段強められた。


「そう、あり得ない話だが今ここで自主退学をするか、私に協力し素直可愛い生徒として…」

「…それはやめろ、スルテカ」


「…今は話を続けたいんだが、どうしたのかね」


「鍵から手を離させろ、コレと話を続けたいなら鍵を渡すな」


「ごびぶ!ぐっぶぶ!ばべびびびびっ!!(媚びぬ!屈さぬ!顧みぬぅっ)!!」


手袋のしたから有らん限りの声を張り上げ手首を返す。


ーカチ


「クソ、正気か貴様っ!ソイツから手を離せアンダグラフ!触れた部分だけ転移に巻き込まれるぞ」


「もう…遅い」


千切れたグローブと血まみれの手の平を見つめ呟く

視界と感触が急激に変化してゆく。

噛みついて手に入れたグローブと手の皮を吐き出すと、大気に溶けた。


屈伏するくらいなら首もいらぬ!くらいの事考えてえたんだけど、部外者の立ち入りを制限するために作られた結界は優秀なようで、刃物に切られるより早く私を異物として学園外に排除してくれた。


どことも知れぬ草原へと。


「…ふうわぁ、死ぬかと思ったぁっ!!」


思わず膝を付きそうになったが、地面がぬかるんでいたので踏みとどまる。


「生徒一人を脅すのに、アサシン使う辺り完全におかしいわ」

生えてる草を折り重ねながら倒し、腰を下ろして休める空間を作る。


青臭くなるけど、体内の魔力が急激に失われているせいでそんな事を気に出来るほどの元気はない。


「はぁ~、頭痛い。真面目に何処だよ」


あの状況から逃げるため、カギを捻った。


「今生は真面目に生きるつもりだったのに学園中退か~」


研究の真似事にハマってサボりまくってた期間も無駄になっただけ、でも連中への意趣返し位にはなっただろうと思う。


あの腕輪は基本的に門外不出で、腕から外れた場合は隣の学園長室に送られ、本人は部品(切断前提)と一緒に医療設備のある地下室だか地下牢に送られると校則に書かれていたはずだ。


それが、地下に送られないんだから、教頭だってただじゃ済まないはず。



「へっへっへっ、討ち死にじゃ!ざまぁみやがれ!一番割に合わねーのが俺だから意味ないけどな!!」


マジで何処だよ馬鹿やろう!

緑は果てなく、空はどこまでも青かった。



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