掲げ筒
―追い風を背に帆を張れ旗を立てよ。
なーんて、カッコいい男達の物語は何処へやら、噂では水軍のアヒルが脚光を浴びているとか…。
でも、私間違えてますからー!
…一般的な池にあるのって白鳥ボートですよね?
そう!足こぎボートは本来スワンがモデル。白鳥であってアヒルじゃねぇ。アヒルじゃねぇんだよぉっ!
アヒル隊長とかお風呂関係だけだったのに、なんで私はアヒルと勘違いいしちまったんだ。
スワンボートはあるけどアヒルボートじゃなかっただろうが!
(by作)間違えてても、誰も突っ込んくれねぇし!
笑いの神様、そこらに違和感とかなかったですかね?
オラ、いますぐ降臨しろや。
まぁ、八つ当たりはこのくらいにしておくとして、本日も本館は閑古鳥がないている。
昼くらいまで、オッサン達に眺められながら窓掃除してから、ハタキで本棚の埃を払い乾いたモップで床掃除。
たまに茶殻ではき掃除。
素人仕事だから、万が一本が水気含んで‘華美’たりしたら目も当てられないし…。
「…今日も緑茶がうまい」
「…館長、植木鉢くらい移動させましょうよ」
「私非力ですから」
「理由になってませんよ?」
イケメン五月蝿い。
そういいながら、イケメンは用具箱の中をゴソゴソ漁り始めた。
私の代わりに、暇なイケメンがやってくれてんだからいいじゃないか。
「…ところで、整理整頓って言葉知ってますか?」
「噂には聞いた事がある…」
遥か遠い(前世)記憶ですが何か?
もともと、養女になる前は私物もない状態だったし、養女になってからは侍女さんが片付けてくれたし、学生時代は軍が勝手に片付けてくれましたから、薬品棚(隠しおやつ)の整理はしても他はした事ない気がしますね。
いえ、図書館の本棚や別館の掃除も片付けの内だとしたら問題ない?
いくらゴチャゴチャしてても、中からカビたパンは出て来る事はないと思いますが…。
今まで気を使った事なかったのですが、掃除用具入れくらい片付けるようにしましょう。
「お茶を飲んだら片付けますね…」
「そうしてください」
イケメンが鉢植えを動かして掃いてくれた。
もともと此処は、件の曾祖父様がカウンターに座っていたらしいので、この図書館に配属された時点で窓際役職なんでしょう。
彼もまた閑職に追いやられたようなものかもしれません。
だいたい、人が居なければ汚れもしませんから、掃除もそこそこでいいんですよ。
「そう言えば、館長の掃除は暇潰しだなんて言ってる人がいましたが、こうゆう所からきたんでしょうね」
最近、彼の作業中は愚痴が多い気がします。
「えっと、お煎餅食べます?」
「終わったら頂きます」
お煎餅への抵抗感はなくなったみたいですが、小言が増えましたね。
私はテキトーに過ごしてるんですから、警備兵が気にする事なんかないでしょうに。
「私、貴族の兵士ったら、下を見下して命令ばっかしてくるイメージだったんですが…」
「穿ちすぎです。王都ならまだしも、少なくともこの街にそんな人はいませんよ」
「…そんなもんですか」
「そうですよ。軍が学園に内密に乗り込むだなんて普通やりませんよ。外交問題に発展しておかしくないんですから考えが足りないんだと思いますよ」
「臭う生ゴミも回収していくあれは、週一でくる便利な家政婦でしたね」
「…それはどうなんでしょう」
令状に、回収した物は生活必需品以外は一定期間保管庫に保管する宗が記されてましたが、生ゴミも入れて置くんですかね?
だとしたら、半分嫌がらせに近いですよね。