表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/61

絵心と糸会心

絵心とは糸と会と心に分けられる。


つまり、刺繍・裁縫にも絵心は必要だ。


ポピュラーな蔦と花…を、ハンカチの真ん中に描いた花からツタが延ばしたつもりの刺繍が凄い事になっていた。


「…魔法陣ならかけるんだけどねぇ」


絵心ないせいか、刺繍になると立体感が出て無情にも未知の生物が生まれた。


「凄いぞアティ!刺繍された“魔物”がまるで動いてるようだ」


一針ずつ思いを込めたせいか、半分使い魔と化したツタを指差しエリックが喜んでいる。


「…うん、意味わかんないよ」


「新しい術式でも使ったのか、こんな動く魔物の刺繍なんて始めてみたぞ」


違うの魔物じゃないの、ガーゴイルとか魔除けの作り物でもなく、ただのツタだったつもりなの。


ただの刺繍だから害はないと思うが、ハンカチ自らエリックの胸ポケットに収まろうとする姿には軽く戦慄を覚える。


確かに、エリックにあげようと思ったけど、渡す前に行くのは違うと思う。


「アティ、これ貰っていいか?みんなにアティがくれたと自慢したい!!」


「あげるけど、エリックに何かあったら燃やすからね。それから吹聴するのは止めて?」


「…がーん!?まさか、秘匿技術と言う奴か」


口でがーんって、エリックのテンション高いなー。

秘匿でもなく、ハンカチが動くとか呪術的だと思いませんか。エリックが誉めてくれてるのは解るんだけど、こんなの他人に知られた日には刺された後ろ指で死に至るわ。


「…絶対教えたらダメだからね」


「二人だけの秘密と言うわけか。それもいいな…」


「…いや、やっぱりなんかあったら怖いし、洗濯とかもあるから、身の回りの世話してくれてる人には教えておいて?」


「洗濯するだなんて!」


エリックが、ウニャウニャと蠢くハンカチをギュッと抱きしめて私から遠ざける。


「え、あのね?」


「……」




いや、ギゥウュッとそんな大事そうに抱えられても生き物じゃないし!


子猫拾ってきてお母さんに怒られてる小学生みたいな絵面になってますけど、エリックは…いやまんま小学生とかわらない?

―ヤバい。


首絞められてたなんてなったら、私も仲良く縛り首にされる!?


どうにか取り戻さないと大変な事に(汗)


落ち着け私。エリックみたいな頭いい子供がキレたら何するかわからん。


前世は独身のオッサンだし子供の面倒なんか見たことないぞ!

オッサンの記憶全然やくに立たねー!!


むしろオッサンの記憶があるせいでマトモな恋愛出来なくて、ローリターン・ハイリスクなオッサン消してぇ!


しかもなんでか知らないけど、エリックが泣きそうになって来てるんだけど!?



「アティ頼む、セバスチャンには話すから…」


「……お願いだから、ご両親にも」


割と切実に!!なんで動いてるのか私にも分かんないから、むしろ、ご両親が取り上げて下さい。


「父上なら!街で拾ったと言えば大丈夫だと思う」


いや、それ街で拾ったなんて話したら絶対問題になるから止めて。

「私なら後でご両親になんぼ怒られても構わないから!」


「アティからのプレゼントだと知られたくない…」


プィッてそっぽ向いた姿は可愛いけど、後で私の刺繍だと知られたら大問題なんだからね!?

「…わかった。先に許可貰ってから来て下さい」


後で揉めるよりそのほうがいい。上手くしたら向こうで処分してくれるかもしれないし。


「わかった!後で取りにくるから!!」


ハンカチを抱えたエリックは、脇目も振らず図書館から飛び出していった。


テーブルにハンカチは残されていない。


―結局、連れて行きおった。


下手したら研究対象になるかもだけど、変なの出来てもうたぞ。


「なんか疲れた…」


もう、暇になっても刺繍はやらない。


はー、図書館に来る人に女らしさってなんだって聞いたら、みんな揃って刺繍だなんて言うから挑戦してみたのに、魔女かなんかみたいにクリーチャーが生まれるだなんて…。


淑女への道は遠い。

押収されたアティの駄書きも今頃…………

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ