元気すぎて困る
身体は若いがアティの中身はだらしのないオッサンである。
言われた事や任された仕事はきっちり終えるが、自ら進んで体を動かす事はしないため、慢性的に運動不足である。
「よし、あそこの街灯まで競争だぞアティ!」
―いやちょっとお待ちになって?
足のもつれたアティを物ともせずに手を掴んだまま走り出したエリックに脳内でツッコミをいれる。
ズザザザー
半ば引きずられる形で街灯についた私は、図書館の制服が丈夫な皮で出来ていた事に感謝した。
ただの布だったら今頃私の膝から下は石畳にザリザリされて血塗れのスプラッタだよ?
全身黒こげになってた昔の女の子くらいなら回復魔法で、自分で直ぐ治せるのはわかってるけど、瀕死の自分は流石に自信ないんだから、無邪気な市中引き回とか手加減してくれー。
「私の勝ちだな!」
「…そうだろうね」
エリック後(将来)で覚えていろ。
お前が大人になって好きな人や婚約者が出来た時に、相手にコッソリ話してやるから冷たい目で見られるよいにしてやる。
無体を働いた輩として結婚に苦労するといいわっ!!
そして、私がその子を貰ってやる…今女だった!!
100メートルくらい余裕で引きずられたし、将来生まれた子供にこんなこと強要したら子供死んじゃうんだからな?
何度か引きずられながら、色町のど真ん中の寂れた本屋についた。
もうエリックの事は、ベトナムとかのバスとか新手のタクシーとでも思おう。
「で、アティはどんな本が欲しいんだ?」
「全部」
ガタガタの木戸を苦労しながら動かしていたら
潰れかけ家を前にしたエリックが後ろから聞いてきたので正直に答えたら驚いていた。
物陰でアンパン食べかながら、護衛についてきた男の人も驚いてるけど気にしない。
私が向こうからリスペクトした新商品は人気だね。
まあ、何だかんだで数百冊はエロ本が積まれてるから驚くのも仕方ないとは思うけどね。
「…全部いかがわしい本ばかりではないか」
「けど全部だよ」
料金は先払いしてあって店主は華麗に転職済みさ。
本での経営は失敗したが、本で得た知識はあるから小さな学習院を開くらしいよ。
48手も詳しいらしいから、女人禁制らしいけど、どうにかならいにいけないかしら?
ちな、転生してからオナはしてません。
回復魔法がやたら上手いのは、細胞の組織から弄って男になろうとしてきた経緯があるからです。
ミトコンドリアやDNAまでは変えられないみたいねぇ。
授精段階なら男女の切り替え出来そうな気はするけど試したくないな。
運搬には冒険者を雇って、図書館の倉庫に運ばせた。
「すみません、ちょっといいですか」
「はいはい何でしょう」
「………………」
作業中に若い冒険者が話かけてきたので返事をしたら、冒険者の間を遮るようにエリックが割り込んできた。
「…エリックは向こう行きなさい」
「アティに手をたしたら承知しないからな…」
エリックは冒険者を睨みながら渋々としたがった。
何がしたかった。エロ本だらけの場所でその年で発情でもしたの?
さて、予想はついているが若い冒険者とのお話だ。やはり本館には興味ないけど、倉庫のほうに出入り出来るようにしてくれないかとコッソリ相談してきた。
一冊欲しいでないのは本がたかいからだよ。
個室作って、レンタルルームとかやってみようかな。
それとも中庭を提供して、堂々と優雅なエロ本ティータイムの方がいいだろうか?
図書館に帰ってイケメンに相談したら人で遊ぶのは止めなさいと止められた。
「解せぬ」
「いや、館長わかってますよね?」
いや、遊び心だけど“少女”に相談してきた“漢”だよ。
―何か問題があったかね?
そして、会話中もエリックは腰にしがみついて居ました。