こうしてやる
この世界の本には娯楽性がない。
一般的には、実用書など高価な資料くらいしか存在しないと思われているが、恋愛本や英雄譚を記した娯楽本も存在する。
図書館の鍵を握るのは大衆の興味を引ける本を如何に見つけてくるかにかかっているのである。
娯楽本を自ら嗜む(執筆)も文法がおかしく正直つまらなかった。
挿し絵まで書いたんだが、イケメンにコレは新種の魔物図鑑なのかと聞かれたね。
説明すると首を傾げて何度も見直されたが、私が書いたのは、馬を引く旅人のつもりだったんだ。
な の に
イケメンの一言で、怪獣にブレスを吐かれる冒険者にしか見えなくなった。
消し切れなかった指の後なんかが、おどろおどろしさをブーストさせる悪いアクセントとして、“いい仕事”をしてくれていたんだよ。
―ちくしょう、イケメンが憎い。
そうして、本は仕入れるしかないと思い知らされた。
雑嚢を背に図書館を後に……。
「館長、お客様でs…」
「アティ!朝から夜逃げか!?」
イケメンの言葉を、職員通路から姿を表した少年が掻き消した。
「誰が夜逃げかっ!」
「そうか!出掛けるなら私も共も連れていけ!」
一回り小さいエリックさんが元気過ぎてツラい。
「あのね、これから潰れた本屋の売れ残りをのきなみ買いたた…仕入れに行くだけだからつまらないよ?」
「…なぜ、言い直したのかはわからんが連れていけ」
えー、人に言うのはばかられるような所だからあんまご同行願いたくないんだけどなぁ。
予定変えるか…。
「歓楽街の路地裏の店はだいたい把握しているから問題ないぞ?」
バレてる。
「…なんで知ってた」
「アティの行きそうな所はだいたい見張りがついているからな」
「…えぇ~、私プライバシーないの?」
「いや、治安維持の為に常に配置されているから、アティの話は私の耳に優先的に入るだけだ」
偶然を装ったつもりが失敗してるパターンだろうか。
「私は、エリックの向かう先の方が心配だよ」
「そうか?礼を言う」
イケメンになるだろうに、こんなんでこの子の将来大丈夫なんだろうか。
難産すぎて筆が壊れてた。年明けたから書いてみました。