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学園時代にあった事1

―そこまでやるか?


あられも無い姿で床に押さえつけられていた少女は、侵入者が部屋から運び出されていく荷物を眺めさせられながらそう思うしかなかった。


数少ない私物は言うに及ばず、備え付けのベッドのマットレスすら運び出されていく。


「隊長、衣類箱も回収でありますか?」


「当然だ。令状に“盗まれた資料”は巧妙に隠されている疑いがあると記されている以上、部屋にあるものは全てが対象だ。室内にあるものはショーツ一枚残さず回収せよ」


「はっ!では取り押さえられている衣類も回収いたしますか?」



そうして荷物がまとめ終わる頃、指示を出してい男にお伺いを立てた兵隊は無防備な姿で組み敷かれたアティアの、組み敷かれた際にまろびでた胸に視線を向けニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていた。


「ふむ、本来ならば着ている服すら対象になるが、寛大な我々に感謝していいいと思うのだがね?」


「…ありがとうございます」


「ふむ…、とてもそう思っているようには見えないな?」


「ありがとうございます!」


「良かろ我々は寛大だからな!」


そのやりとりを見ていた男達はゲラゲラ下品な笑い声をあげ、男はその様子を見ながら上機嫌で部屋から出て行った。


そして、足音が遠ざかり部屋に残されたのは下着同然の姿のアティアだけとなった。普通の少女であれば、塵一つ残されていない部屋で半狂乱になりそうな有り様だが、諦念を浮かべガックリと肩を落とすだけに留め辺りを見回した。


抱えてきた風呂に入る前に着ていた服すら残されていなかった。


「…ここまでします?」


「忘れ物だ」


取り残されたアティアが呆然としながら呟いた所で、開けっ放しだったドアから、軍人が再び入って来て、怯えたような仕草を見せ軍人から距離をとる。


「ふん、忘れ物だといっただろう」


軍人はその様子を鼻で笑い飛ばしながら、唯一の光源の魔石が置かれた燭台を手に皮肉めいた響きでもってこう告げた。


「風邪は引かないように」


アティアの肩をポンと軽く叩いて退出すると、光源のなくなった部屋の窓は真っ暗になった。足音が遠ざかる中、窓から差し込んむ月明かりに照らされアティアは床に大の字に転がり呟いた。


「…もう、煮るなり焼くなり好きにしろい」


彼らは強盗ではない。

他ならぬ国民を守る軍人が法の下に指示され行う正当な摘発行為である。


学生寮の風呂から上がってくると、部屋の中に軍人が上がり込んでいて、慌てて止めようとしたら拘束されてしまったのだ。

本来、大陸随一の規模を誇り多くの留学生を近隣から招致してきた学園はこうした事態を想定し治外法権を主張しているはずで摘発される事はないはずなのだが、この大公国が小国であるが故に国防の要である軍の権力は時に法律すらねじ曲げてしまう。

治外法権なれど国民に対しては国内における開発行為が全て軍の管理下にあると主張されている。


学園ではなく、一個人の私物に対しての摘発だと主張し、発表待ちの研究資料をかっさらって我が物顔で成果を発表し権力を強めていくわけだ。


「うぁー、足こぎボートのアヒルの資料なんか奪って何に使うんだよ…」


律儀に資料は作り直されず、制作者の名前だけ変更され国へ提出。

被害者には口止め料としてわずかばかりの協力費用が送らる。

有能であれば軍属するまでそれが続けられ、アティアはすでに複数回摘発は受けている。


辱め受けた自らの事より、数日後には発表した軍が利権を獲得するであろうアヒル様の未来に苦悩の言葉を漏らす。


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