予定変更
ギルドを飛び出したスティンたちは都が思った以上に混乱していることを知った。
位置的に外れのほうにあった魔術ギルドのほうまで喧騒が聞こえてこなかっただけの話なのだ。
べベル、リリーと職員たちは避難のために、移動を開始した。
リリーは最後まで自分も力になりたいと申し出たが、それは無理な相談だ。
べベルに説得され、泣く泣くといった風情で避難していった。
さて、残るスティンたちは?
「まずはどうする?」
「城門の外のほうに向かうとしよう。そこで、む!」
指示を仰いだスティンに今後の説明をしようとした老人の顔色が途中で変わった。
視線の先には小型の魔物が目に映った。
「こんなところまで!」
スティンとミレイが剣を構えようとしたが、それよりも早く。
ボウ!
音を立てて魔物が燃え上がった。
驚いたスティンだったが、すぐに理由は分かった。老人の魔法である。
老人のほうを見れば、杖を伸ばして凛と立つ老人の姿があった。先ほどまでとはまるで別人である。
「さすがです。導師」
「ふむ。短時間であればまだもうろくはしておらんようだの」
腰をとんとんと叩きながら、老人はつぶやく。どうやら老いてなおその実力は健在のようだ。
が、それを誇るでもなく、老人は顔をしかめる。
「まずいの。もう魔物が城門を飛び越えて入ってきているとは思わなかったぞい」
老人はひげをいじりながら思案する。
手を打って老人は二人を見つめた。
「わしは予定通り、城門前に向かう。二人は手分けして都の中に入ってきてしまった魔物たちを退治して回ってくれんか?」
「手分けしてほうがいいでしょうか?」
「う、む。そうだの。不安であれば二人で回ってもいいのだが、どこまで魔物が入り込んでいるのかわからん。できれば、手分けしてもらいたいのだがの」
「わかりました」
ミレイはうなずき、スティンを見つめた。
「と、いうことになったわ。スティン、無茶はしないで」
「ああ、わかった。そっちも気をつけてな」
三人はうなずき合うと、三方に分かれ、走り出したのだった。