魔物襲来
べベルはコツコツと、リリーは劇的にレベルアップをしていた。
さて、スティンはどうか?
彼はずっと突っ立っていた。
もちろん、ただ突っ立っていたわけではない。
彼はマナを取り入れて、体内で循環させていたのだ。
だが、彼のできることはこれだけだという。
普通の人間であれば、魔力制御や、呪文の習得など、できること、やらなければならないことが山のようにあるのだが、魔力を全くもたないスティンはただ、外界からマナを取り入れて巡回させることしかできることがないのだ。
しかし、これをスムーズにこなすことができれば、より肉体強化ができるようになるのではないかと、老人は語る。
できるのではないかというのはもちろん彼以外に前例がないからだ。
事実上、魔導において、最高の頭脳と経験を持つこの老人ですらもスティンがこの先どのような成長を遂げるのかは未知数だという。
「うーん。なんかリリーはすごいことになってるぞ。いいのか俺こんなんで?」
正直に言えばすごいと言われても実感がわかない。
リリーのように見た目でも分かりやすい成果がほしい。
そんなことを考えていた時、どたどたと部屋の外から走ってくる足音が聞こえた。
飛び込んで来たのは学者風の若い男だった。
おそらくはここの職員だろう。
「導じい!」
職員はそう叫んで、老人を見た。
『導じい』というのはこの老人のあだ名だろうか。
「魔物が、街の外に!」
「なんじゃと!」