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星にコネクト  作者: さくらうめ
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ベベルとリリーの魔法属性

 ベベルとリリー二人の魔力識別が始まった。

 まずはベベルからだ。スティンの後では気が引けるベベルではあったが、やはり魔法の魅力は大きいのか、不安よりも期待(好奇心)の方が強いようだった。


「では、ベベル君。体の力を抜くんじゃぞ」


 老人はスティンと同じように両手を突き出し、魔力によってベベルの体を調べ始めた。


「うぉ。これは、確かにくすぐった・・・!」


 スティンの気持ちがわかる。何とも言えない奇妙な感覚に、ベベルも戸惑ったが、スティンに比べると比較的に早く検査は終わった。

 老人は両手を下し、満足そうにうなずく。


「ふむ。君の属性は土じゃな」

「土、ですか?」


 老人曰く、土属性はとてもバランスが良い属性だという。石、岩などによる攻撃、肉体強化、治癒。それらが万遍なく揃っているのが土属性という話だった。

 属性が判明してベベルは素直に喜んだ。特に治癒が使える属性が自分の備わっているということがわかって、薬師としてはやはり嬉しかった。これで、薬と魔法。両面から人を癒すことができるのだ。

 

「さて、それでは最後はお嬢ちゃんかの?」


 リリーは緊張した。魔法属性のことはもちろんだが、どうもこの老人の目がいやらしく光った気がしたのだ。リリーは思わず後ずさりした。


「ひょっひょっひょ。怖がることはないぞ。さあ、わしの前に立ちなさい」

「は、はい」


 老人が両手を突き出し、リリーも奇妙な感覚が襲った。どう表現すればいいのかわからない。話しに聞くスライムという魔物の体内にずっぽり入ってしまったような感覚、呼吸はできるのだが、その中で全身をくまなく触られているような触感に襲われたのだ。


「や、これ、ちょっと、んんー」


 男子二人も同じことをされたのだろうが、女の子の敏感な肌にこの感触はかなり危険だった。


「や、あん。ちょっとこれ、ん!」


 普段と全く違うリリーの艶っぽい声に動揺するスティン。隣で見ているベベルもハラハラしていた。


「ちょ、ちょっとじーさん。やりすぎじゃね?」

「導師様。いい加減にしてください!!」


 ミレイが殺気の帯びた声で一喝する。


「いや、待て待て、あともう少しなんじゃ」

「ど、う、し、さ、ま!!」


 ミレイは腰の剣に手を伸ばした。


「待て待て終わったぞい」


 老人は慌てて手を下した。するとリリーは糸が切れたようにその場にへたり込んでしまった。


「あぅう~」

「リリー大丈夫か?」

「うん。大丈夫大丈夫、あたしは大丈夫。大丈夫・・・」


 顔を真っ赤にして大丈夫と繰り返すリリー。ベベルは心配して老人を睨んだ。


「じーさん。嫁入り前の妹に何してくれるんだ!」

「ひょっひょっひょ。いいものを持っとる。将来が楽しみじゃぞい」

「・・・導師様。もはやこれまでです。主席宮廷魔道師の称号を与えられながら、その性格のせいでこんな窓際部署に送られても全然反省していないようですね」


 静かに剣を抜こうとしたミレイに老人は慌てて手を挙げ弁明した。


「ち、ちがうぞいミレイちゃん。わしがそのお嬢ちゃんの将来が楽しみといったのは発育などではなく、純粋に魔法使いとしての才能じゃよ!」

「「「「え?」」」」


 老人の意外な一言にリリー本人も疑問の声を上げた。


「かなりの魔力量を保有しておる。おまけに魔法回復力も相当あると見た。今からでもこの道に進めば将来は名のある魔法使いになるかもしれんの。それこそ宮廷魔道師も夢ではないぞい」

「きゅ、宮廷? あたしが?」


 宮廷魔道師とはつまり、王家直轄の魔法使いのことである。言われるまでもなくその実力は国内トップレベルの精鋭達が集められる。魔法使いのエリートである。

 仮にもかつての主席宮廷魔道師の老人が太鼓判を押すのだ。国の育成機関に入るなり、名のある魔法使いに弟子入りすれば、リリーは即座に頭角を現すだろう。それほどの才能を老人はリリーから感じた。


「属性は風じゃな。広範囲の攻撃魔法や速度強化等が一般には知られておる。お嬢ちゃんならば魔法制御を学べば空を自由に飛ぶことも夢ではないぞい」

「空! 空を飛べるんですか?」


 十四歳の多感で夢見がちな少女であるリリーの胸は高鳴った。鳥のように空を自由に飛ぶことができたら、それはどんなに素晴らしいことだろう。魔法の才能があると言われただけでも嬉しいのに、まさか空を飛ぶことができるようになるかもしれないとは。

 土の兄と風の自分。正反対の属性ではあるが、タッグを組むのは何とも素敵なことだとリリーは思った。


「これこれ。喜ぶのは早いぞい。空を飛ぶ魔法制御は困難極まる。もし、上空で制御に失敗してみぃ。地面に真っ逆さま。命はないぞい。昔から風属性の魔法使いはそれで何人か命を落としておる。くれぐれも安易に考えんようにな?」


 浮かれていた頭に冷や水を浴びせられた気分になった。上空から真っ逆さまに地上に叩きつけられて死ぬなどまっぴらごめんである。


「うむ。怖がるくらいでちょうどええ。では、魔法適正識別検査を終了しようかの」


 老人は腰に手を回しながら、座っていた椅子に戻ろうとしたが、にやりと笑いながらこちらに振り返った。


「とはいえ、この部署も言ったように窓際で暇での。素晴らしい逸材達に出会えたことじゃし。なによりもミレイちゃんの紹介でもある。ちょいと魔法の手ほどきをしてもいいと思うが、どうじゃな?」

「「「お願いします!」」」


 三人は口を揃えて答えた。

 

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