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星にコネクト  作者: さくらうめ
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平和の始まり

 魔王は死んだ。



 三百年ほど昔の話。

不老の秘術を極めた賢者がいた。

賢者はその長い年月でため込んだ魔力で動物実験を重ねていた。

動物に魔力を注入することで肉体強化、巨大化、そして異形の形となってしまう実験を

賢者の弟子たちはこの全く新しい生命体を魔物と呼んだ。


 実験はエスカレートしていった。

小動物から大きな動物に

そして、人間へと。


 賢者は知性と魔力は人並み外れていたが、けして人格者ではなかったのだ。

彼がその勢力を着々と拡大し、ついには国家勢力と渡り合えるようになった時

彼は自らを魔王と名乗った。



「魔王が倒されたってよ」


「は?」


 スティンは友人のその発言に顔をぽかんとさせた。

魔王の出現は今から三百年前。スティンが生まれた時から魔王の脅威は世界を覆っていた。

その魔王が、倒された?


「ベルル。何の冗談?」


 スティンは友人であるベルルにこう返した。

正直信じがたかったのだ。ベルルは実直で真面目な男だが魔王はスティンの中で

どう抗っても倒すことのできない存在となっていたのだ。


「本当なんだって!勇者アモン一行が遂に倒したんだよ」


 勇者アモン。

 確か、数年前に魔王討伐に向かった勇者一行。


「いたな、確かそんな勇者が」

「お前、ほんとに世間知らずだな!まあ、こんな山奥にいるんじゃしょうがないか」


 スティンはずっと街から離れた山奥に一人で住んでいた。

ここを訪れるのは唯一にして無二の友人ベルルくらいのものである。

よって情報に極めて疎かった。

食料などはほぼ自給自足で賄っていた。実家が薬師で時々薬を分けてくれる

ベルルくらいしか外界と接する機会がなかった。


「それじゃあ、本当に魔王は倒されたんだな?勇者はどうしてるんだ?」

「勇者はまだ北の大陸にいるよ。通信魔法で魔王を討伐したことだけはこうして広まってるんだ」

「そうか。ここからだと北の大陸はだいぶ離れてるからな。戻ってくるだけでどれだけかかるか」


 スティンは自分の頭に地図を思い描き、ここから魔王の根城であった北の大陸までの距離を

ざっと計算した。

おそらく帰ってくるだけで徒歩ならば数か月はかかる道のりである。


「今、街でパレードをやってるんだ。お前も来ないか?」

「っ!」


なるほど、今日べベルは自分を誘いに来たのか。

スティンは一瞬どきりとしたが、すぐに首を横に振った。


「悪いべベル。気持ちは嬉しいんだけどさ」

「今日は街を挙げての祝杯ムードだぜ?誰もお前のことなんて気にしないよ」

「それはそれでひどいね。うーん・・・いや、やっぱりやめておこう」

「・・・気に、し過ぎと思うけどな」

「そうもいかないって。いや、本当にお前が友達でいてくれて俺はよかったと思ってるんだよ」

「よ、よせよなんだよ!恥ずいじゃねーか!」


一瞬気まずい雰囲気になりかけたが、なんとか空気が和らいだと思ったその時。



ドーーーーーーーーーーーーーーン!


大きな音がこだました。


「なんだ!?」


 スティンはどきりとして顔を上げた。


「ああ、いやこれは花火だな」


 驚いているスティンをなだめる様にべベルは笑顔で答えた。

確かに立て続けに同じ音が街の方角から聞こえてくる。


「な、なんだ。脅かすなよ。へーすごいお祭り騒ぎじゃないか?」

「言ったろ?パレードをやってるって」

「わざわざ教えてくれたのに悪かったな。お前は戻って参加しろよ」

「いいって。急がないし。これからパレードは三日三晩続くらしいぞ?

今日そんなに急いで参加しなくたって大丈夫なわけ」

「は~ん。それはまた」


 それからしばらくべベルと雑談をした後。スティンは少し寂しそうに街の方角を見つめた。

風に乗って花火の音が聞こえてくる。魔王が倒れたのならこれからきっと幸せな時代が

訪れるのだろう。何かが変わるかもしれない。そんなことをスティンは考えて始めた。


 自分も参加したい。


 だが、自分の生い立ちを思い返し静かに目を閉じる

参加できるはずもない。したところで街の人間たちに何と思われるか。

その恐怖がスティンの胸を覆った時。ふと、あることに気が付いた。


「なあ、ベベル?なんか街から煙が上がってないか?」

「あ?火を起こしてみんなで周りを踊ってるとか?」


 それにしては煙の数が一つではない。

気づけば花火も上がっていない。


「っつ!」


 弾かれたようにスティンは高い木にするする登り始めた。

ある程度まで登り街の方角を見つめる。スティンの日々の食料の多くは狩りで捕った獣だ

視力には自信がある


「燃え、てる・・・」


先ほどまで花火を打ち上げ、祝杯パレードを行っていたはずの街が燃えていた




挿絵(By みてみん)





  




初投稿になります

お見苦しい点多々あると思いますがご容赦ください

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