師匠と呼ばれて 第七話
「意外と質素な部屋ですね」
女の子は部屋に入るなりそういった。質素で悪いかよ。
「だけれども、気に入りました」女の子は笑顔でそう僕に言う。まぁ、それならよかった。
「気に入ってくれて良かったよ」
「気に入らなくても、我が家ですけどね!」そうか、我が家か・・・・・・?
我が家?僕にとってこの部屋は我が家になるけれども、なんでこの子が我が家って言っているんだ?小さい子だから、言葉を知らないのか?いや、もしかして・・・
「我が家ってどういうことかな?」
そう、僕が聞くと女の子はきょとんとした顔で「どうゆうことですか?」と疑問形で聞いてきた。疑問形を疑問形で返すとは、この女の子はすごい女の子だ。
「いや、ここは僕の我が家だけれども、君の我が家じゃないでしょ?」
そういうとさらに女の子は首をかしげて、「いや、私の我が家でもありますよ」と返してきたのだ。どういうことなのだろうか。
女の子は続けて言った。
「現在、私とお兄さんは師弟関係を結んでいるわけじゃないですか」
「確かにそうだね。無理矢理だったけど」
「私、個人的にこう思うんですよ」といった後、女の子は深呼吸した後こういった。
「師匠と弟子は一緒に住むべきだと思うんですよ」と。
いや、今日は本当にいろいろなことがあった。ゲームセンターであった女の子にいきなり話しかけられて、家までついてこられて、一緒に住もうだなんて言われて。本当にいろんなことがあったな・・・。
「師匠。聞いてますか?」
・・・聞いているさ。だけれども今返事はしない。今僕は、思考停止しているのだ。厳密に言えば今現在起こっていることを、強制的に頭が終了させようとしているのだが。
「とりあえず!今日からお世話になります」にっこりとした顔で僕を見つめている。かわいらしい。だけれども、なぜだろう。僕の心の中のどこかにあった怒りというものが今、ふつふつと沸いてきているのだ。
だけれども、僕にだって理性はある。ぎりぎり、僕は激怒することを抑えているのだ。
そして激怒することを抑えながら、どうやったらこの女の子をこの家から出ていかせることができるのかを考えているのだ。
どうすれば・・・僕は今まで女の子、女子というものとあまりかかわったことがない。だから女子がされてうれしいこととか、女子がされて嫌なこととかが良く分からない。
本当はここで女の子に対して嫌なことをして、自分が嫌われる代わりに出ていってもらおうと思うのだが、そういうことだから、僕には今現状としては女の子を出ていかせることは不可能なのだ。どうすればいいのだ・・・・はっ!
そうだ、女の子がされて嫌なこと。そうだ、そうだ。なんで僕は気が付かなかったのだ。
だけれどもこれをやってしまったら。もとい、これを行ってしまったら自分自身の紳士的な心が崩れてしまうどころか、こんな女の子に言うのだから変態というよりかは、犯罪者じゃないか!これこそ通報ものだ。
だけれども、これ以上にここから出ていかせる手段がない。どうすれば・・・・。
ええぃ!ままよ。僕だって男だ。いつだって嫌われる覚悟はある・・・・ないけどね。だけれども、今回はこの家から一刻も早く女の子を出ていかせることが先決だ!プライドなんか捨ててしまってやる!
「ねぇ」僕は女の子に問いかける。
「は、はい?」女の子は、いきなり僕が問いかけたのでびっくりした感じで僕に疑問形で返してくる。
そして僕はこういったのだった。
「ぱ、ぴゃんちゅみしぇて!」
お父さん、お母さん。おばあちゃん、おじいちゃん。先祖の皆さま並びに今までご迷惑をおかけした人たちみんな、ごめんなさい。僕は今、人として死にました。
絶望感に浸りながら、女の子の状況を確認すると、口をあんぐりと開けたままフリーズしていた。 さすがに、女の子にも悪いことをしてしまったな。だけれども、仕方がない。これで、「この人変態なんだ」と思って出ていくに違いない!
「・・・い、いいですよ」
・・・・ん?