師匠と呼ばれて 第六話
「な、なんでここに・・・?」僕は、動揺を隠しきれずにいた。
まず、第一についてきていたのが強盗ではないこと。刃物を持っている気配はないからね。次にゲームセンターにいた女の子が、僕についてきていたということだ。なぜついてきていたのか・・・。
アレ?まて。今この状況で、ほかの住人の人が帰ってきたら、僕、誘拐犯扱いじゃないか?もし通報されたら、今の現状的に無理矢理ではないにしろ、僕とは到底似ても似つかない女の子がそこにいて、たとえ僕が「僕は誘拐していない!この女の子がついてきただけなんです!!」と言っても「嘘付け、この犯罪者」といわれて、警察の人に連れていかれて、裁判所に行って、実刑を受けて、刑務所に行って、冤罪を反省し、更生する・・・。いやだ、いやだ。なんで僕がそんな目に合わなきゃいけないんだよ。僕はただ、ゲームをやって、女の子がやりたそうに見ていたから、やらしてあげただけじゃないか!むしろ感謝されるべき立場だよ。
だけれども、現状そんなことを言っていても、通報されたらひとたまりもない。
そんなことをぼーっと考えていると、女の子が「聞いてる?」と言ってきた。どうやら、考え事をしている間に、僕の動揺を隠しきれない質問に対して女の子が答えていたようだ。何にも聞いてなかったけど。
「ごめん、ちょっと聞いてなかったよ」正直に言ってみた。
「・・・ちゃんと聞いていてよね」 ごめんなさい。
そして女の子は再度、理由を述べた。
「私がお兄さんについてきた理由は、たった一つ。私がお兄さんのプレイに感動して、お兄さんに弟子入りしようと思ったからです!」
・・・へっ?
「・・・ど、どゆこと?」
「弟子にしてください!」
うん、理解ができない。僕は今、頭の思考回路が停止している。今物事を考える力がなくなっている。弟子にしてくれ?おいおいおい。冗談も面白い・・・冗談なのか?
ここまで来ていて、弟子にしてくれと言っているのだ。それは本当に僕に弟子入りしたいんじゃないのか?いや、だけれども、僕のプレイなんて、ひどいものなのに、それに感動した?どうゆうことなの?わ、訳が分からないよ。それに・・・
「師匠。聞いてますか?」
「・・・・・・し、シショウ」僕が師匠?ダメだよ、だってこの子、女の子じゃん。こんな僕を、師と崇めちゃだめだよ。これを口に出して言わなくちゃ。
「だ、だめだよ。き、君みたいな女の子が僕の弟子だなんてだめだよ」理由は、自分でも良く分からない。だけれども、倫理的に、道徳的にダメだよ。
「だ、ダメですか?」女の子が驚いた顔をしている。
「うん、ダメだよ」ちょっと冷静になれている自分がいる。
すると女の子は涙目になり、「だ、だゃめぇ?」とろれつが回らない、小さな声で僕に聞いてきた。ここまで来ると、かわいいというよりかは、なんか、そう・・・かわいそうになってきた。だけれども、ここは心を鬼しなければ。
「ダメです!」
「しょこをにゃんとか」
「ダメなものはダメです」
「・・・」
まぁ、ここまで言われたら、無言になるだろう。仕方がなしさ。
「・・・ごめんね。本当にごめんね」
「・・・・・・お兄さん。」
「何?」
「もし弟子にしてくれないんだったら」
「だったら?」
「ここで、誘拐された。助けて!って騒ぎますよ?」
「・・・」この子、自分の立場を上位に立たせた。この子、一瞬にして立場を逆転させた。
「どうしますか?」さっきまでの涙目とは打って変わり、にやにやとした目で僕を見つめてくる。
「えっ・・・」動揺してしまうよ。こりゃあ、動揺してしまうよ。
「まぁ、積もる話もありますし、あとは中で話しましょうよ!」
そういうと女の子は、動揺している僕を無視して、僕の部屋の中に入って行ってしまった。