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少女とゴリラ(仮)  作者: はいむまいむ
第一章 師匠と呼ばれて
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師匠と呼ばれて 第二話

その日はとても暑い日だった。日差しが僕を照り付けていて今にでも体が溶けてしまいそうだった。だからこそ、自分の中にある自制心というものが溶けだしてしまったのかもしれない。あぁ、涼しいところ、涼しいところへ行きたい・・・・。そんな気持ちがあの建物へと僕を誘導していったのだろうか。

僕は無意識のうちに、あの重厚な扉を開けてしまった。扉を開けた瞬間に建物の中からあふれ出る冷気、音楽の響き、微かな煙草のにおいが僕の体を包みこんでいく。そして、扉の中には僕が想像していたような情景は広がっておらず、代わりに様々な形の機械が建物の中に押し込められていた。建物の中にいる人間はその機械を動かし、汗をかき、時に喜びを、時に涙を、時には感動をしていたりしていた・・・・・。

「なんなんだここは・・・」

思わず口に出てしまった。思わず、この私が、口に、出してしまったのだ・・・。

冷静に頭を働かせてみた。いったいこの建物は何なんだろうかとか? すぐさま思い出せたさ、というかなぜ今まで考えたことがなかったのだろうかと、今更疑問に思えてきた。

そうだ、ここはローマ様式の宮殿でもなければ、ギリシャの神殿でも歴史的な建築物でもない。そうこれは、これは現代の建築技術によって建てられた“ゲームセンター”なのだ。

・・・・・ゲームセンター。僕は、この年になるまでゲームセンターに行ったことが全くない。 だからこそ、今僕が見ている景色はとても新鮮で、とても過激的なものだった。

正直言って、僕の今までの人生の中でゲームというものに対して行動を示すというものがなかった。簡単に言うと僕にとってゲームというものは神話上の神様でのようなものの一つだった。つまり、実態のないただの想像上のものでしかなかったのだ。それが今僕の目の前にあるのだ。すでに自分の自制心は溶けだしてしまって無くなっている。それが僕の好奇心と、行動力の進出を許し、僕はその日初めてゲームというものに触れた。

シューティングゲーム、パズルゲーム、レースゲーム、クイズゲーム、UFOキャッチャー・・・。どれも新鮮で、どれも楽しかった。だけれどもその楽しさとは裏腹に自分の不器用さがあふれ出てしまい、どのゲームをプレイしても、ぎこちない動きになってしまった。

そんな不器用な僕が最後に遊んだゲームこそ、僕の今までの人生を変えるものになったんだ。

そのゲームはほかのゲームに比べてプレイしている人が少なかった。そしてほかのゲームに比べて周りの声やプレイヤーの言動が非常に静かだった。だからこそ、僕はこのゲーム着実に興味を惹かれていったのかもしれない。少しだけ、自分に似ているような気がしたからだ。

順番を待ち、前のプレイヤーが立ち去り、ついに僕の順番が回ってきた。その機械には表面にボタンが5☓5あり、そのボタンの中?の液晶が規則的に動いていた。

百円玉を入れ、その機械の中から音楽が流れ始めた。チュートリアルというものが流れ始めた。どうやら、このチュートリアルでこのゲームのシステムを覚えるらしい。チュートリアルの音楽は、かの有名なバッハのメヌエットといわれていたペツォールトのメヌエットだ。

かろやかな曲調とは裏腹に、果たしてチュートリアルなのかと疑えるレベルの「ほら、今がボタンを押すときだよ!さぁ、押せよ!!」みたいな感じでプレイヤーを焦らしてくるtouchのも字が5×5のボタン中に出まくっていた。もちろん僕は不器用だから全部のボタンを押すことができなかったけれども、僕はなぜだか「楽しい」という気持ちになったのだ。なぜか達成感というものを得たのだった。


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