第二章 貧乏生活の始まり
え……怪盗? こんな可愛い子が? シンタローはそんな事ばかり考えていた。
ミルフィアは照れながら、もじもじしている。
シンタローは絶句した。
「あ……そうなんだぁ」
「うん! それでね、商売してお金を貯めるの」
可愛い、ハーフエルフのミルフィアは怪盗そして、犯罪者だった。
お金には、シンタロー自身も余裕がない。所持金は……100ゴールドらしい。
100ゴールドは日本でいう、100円と一緒の価値だ。
とても、生きていけない……。
(ミルフィアの仲間として、着いて行きたい)
それが、シンタローの本心。
一人だと、飢え死にしてしまう。だが、ミルフィアの仲間になればお金も手に入る。
そして、ミルフィアが美人だからという、理由もシンタローにはある。
意を決して、シンタローは言った。
「ミルフィア、その、仲間になってくれ……」
「もちろんよ! 強い人は大歓迎だよ!!」
ミルフィアは笑顔で承諾した。
シンタローは目の前に天使でもいるのか、という表情だ。
しかし、シンタローの強さは全て、能力だと本人も分かっている。
「そいえば、ミルフィアは怪盗歴何年?」
「さっきのが初めてよ」
「はああぁぁ!?」
シンタローの驚きの表情、対して微笑むミルフィア。
「え、じゃあ何で、盗ったの?」
シンタローが聞くと、ミルフィアの表情は一変し。
まるで、氷のように冷たかった。
シンタローは、不味いこと聞いたかと思い、謝罪した。
「ああ、ごめんね。私は、母の大切な物を盗り返しただけ」
人にはいろんな事情がある。ここは触れないでおこうと、シンタローは裏路地を出てみた。
そこには、まるで西洋の芸術を見ているのかと、思うような町並みだった。
見た事ない建物、風景に心躍るシンタロー。
シンタローは感動に浸った。
「さて、どうしたもんか……これから」
「それなら、私に着いてきて! 知り合いに何でも屋がいるの、とりあえず会ってみましょ」
「おう」
ミルフィアの何でも屋を頼りに、ミルフィアにとことこ、着いて行くシンタロー。
二人は、歩きながらこの世界の事について、話し合った。
そして、この世界について、シンタローはいくつか知った。
一つは、この世界は剣と魔法のファンタジー世界。まさにゲームやアニメの中の話だ。
だが、現実に起きている、これは断言できる。
二つは、ここ、ルーガ王国は腐敗しているらしい。無理な税を民に押し付け、兵士は暴力で支配している事だ。ミルフィアは王国にご立腹のようです。
三つは、やはり、ファンタジーだけに、モンスター、職業などたくさんあるようだ。
因みに、シンタローの職業は、剣士とシェフ。裏職業に商人がある。
シンタロー曰く、商人は裏の顔らしい。
―と、のんびり話していると、何でも屋に着いた。
店は、木造のシンプルなデザインだ。
だが、そのデザインとは対象的な大男が立っていた。
「おお! ミルフィア! しばらくだな、何か用か?」
「お久しぶり、ゴドック。彼はシンタロー、私の仲間よ」
さっそく、仲間扱いされて喜ぶシンタローだが、ここは紳士的に。
「シンタローです。非リア、童貞、ボッチのオタです、よろしく」
「後半、よく分からんかったが、よろしく頼む、タロー」
「シンタローです」
「ああ、すまない……しんちゃん」
「もう、それでいいです」
別に悪くないあだ名だったので、受け入れたシンタロー。
少し、外れ気味のミルフィアが、口を開いた。
「本題だけど、彼の装備と怪盗セットが欲しいわ、お願い」
「よし、まかせろ!!」
気合のこもった返事だ。何かと、頼りになりそうで安心したシンタロー。
ゴドックがシンタローに尋ねた。
「しんちゃん、あんた防具にこだわりとかあるか?」
「うーん、黒色の服の上に、さらに黒のマントがいいな」
厨二が好むような、服装。
シンタローには、まだ、後遺症があるかも知れない。
ゴドックが奥の部屋に入って行った。
二分位経つと。
「おーーい! あったぞ!」
「あったの!?」
まさか本当にあるとは思わなかったシンタロー、驚きが隠せない。
ゴドックから、服とマントを受け取り、試着してみる。
うん、リアルだと厨二と思われて、当然の格好だった。
俺をジロジロと見ていた、ミルフィアが目をキラキラさせ、呟いた。
「かっこいい……素敵……」
「「え!?」」
シンタローとゴドックの声が重なった。
シンタローは学んだ。
(なるほど! ミルフィアの好きな服装は厨二なのか!!)
ニヤニヤしている、俺をゴドックが我に返した。
「しんちゃん、武器はどうする? どんなのがいい?」
「もちろん、黒で!」
「悪い、それはない、すまんな」
絶妙なタイミングで返答したゴドック。狙っていたのだろうか。
「そっか、んじゃ、店長のオススメで!」
「うーん、お前なら……こいつだな!」
ゴドックが自信気に武器を差し出した。
「こ、これは!?」
<<木刀>>
…………一同静寂に包まれた。確かに自信気に言って木刀はない。
シンタローは自分は木刀が合っているのを、いろんな意味で解釈して、落ち込んでいる。
ミルフィアは、呆れていた。
「買います……」
「え、買うの!?」
ミルフィアが驚いた、シンタローは剣が似合うと思っていたのが本心。
でも、本人がそう言うなら、仕方ないと諦めるミルフィア。
「まいど! 今回は無料サービスだ、感謝しろよしんちゃん」
「お、おう」
「で、怪盗セットは1000ゴールドだ。半額にしてやんよ」
「ありがとう!」
ミルフィアは、礼を言いながら、1000ゴールド出した。
怪盗セットの中身が気になるが、ここは見てのお楽しみという事で、スルーした。
ゴドックが、ミルフィアに声をかけ尋ねた。
「今度の目標はどこだ? 民家か?」
笑いながら言った、ゴドックに対して、ミルフィアも微笑んで。
「王宮よ! 財産の四分の一を頂くつもり」
「おあっはっはっはっは!! 大きくでたなこりゃあ」
「行きましょ! シンタロー。ひとまず宿を借りましょ」
シンタローはコクリと頷き、足を進めた。
すると、後ろから轟音が聞こえた。
「しんちゃああああんん!!!」
「聞こえてるよ! 何?」
声がでかいのはイメージどおりと感心する、シンタロー。
「おまえ、シンタローって言うのか!? 今知ったよ!!」
「おせーよ!!」
異世界生活は今のところ、順調? である。