7羽
うぉおおぉおおぉおお! 何か叫んでごまかさないと!
リビングの扉は空いている。僕は扉の向こうへと、幅跳びをするかのように羽ばたいた。
「母さん! 爆発するぜぼく!」
「あら、もうその話はやめましょう……」
……ドサッ。僕は膝から崩れ落ちた。
燃え尽きたよ……真っ白な灰のようにな……。なんで一発目に出てきた言葉がこれなんだろう。
やっぱり一回冥界のほうで余生楽しんでみるのも悪くないかもな……。
「それよりもるっくん! このかわいい子なに?」
捕縛されているそれは項垂れていた。捕まったんだねウサギたん! ……なんかヒットポイントがゼロに近そうだけど!
ウサギたんを助け出さねば!
「えっと、それはですね。昨日公園で拾ったんですよ。捨てられている動物は放ってはおけないでしょ?」
僕ながら見事な返しだ。これなら納得して、無事にあれと食料を部屋へと持って行けるだろう。
あ、家動物禁止だったんだっけ……。
「いや! ウサギの前に子どもじゃない! ほらこれ!」
たかいたかいをされつつ空中を旋回するあの子。あれ完全に目回ってますわ。
「母上様、どうか、どうかお恵みを……」
――スサッ。
美しく上品なこの頭の角度。洗練されたこの土下座は言うまでもなく僕の十八番である。
「るっくんのその綺麗な土下座は確かに強いわ。でも、今回は訳が違うの」
やっぱり子どもだもんねー。テイクアウトは出来なかったかー(テヘッ。
「この子名前は?」
目が回って完全にぐったりしているウサギには答えられない。というか名前聞いてたっけ。ウサギとしか聞いていないよね。きっとそうだよね。
「……ウサギです」
「そうね、ウサギね」
「ウ、サギ、だね」
沈黙が続いた。真顔で母上はぐったりウサギを見つめる。その目の前で固唾を飲んで見守る僕。静かな空気に風穴を開けたのは母上様であった。
「ウサギならオーケーねっ♡」
ふぇ!? 今まで犬も猫も小鳥もモモンガも認めてくれなかった母上が承認しただと!
「え、今まで動物ダメって……」
「るっくん、よく聞くのよ」
ゴクリと息を飲んで目で合図する。
「これはウサギ。でも、これはどう考えてもウサギの着ぐるみを着た子どもよね?」
「そ、そうですね母上」
「私はもう一人人間という動物を育てている。それが二人になるなら構わないじゃない?」
「……」
えーっと、それってー、育ててるっていうのはー……
「どうしたのるっくん」
「僕も飼育中?」
可愛く首を傾げながら自分に指を突き刺す。どうか、どうか飼育中なんて言わないで。
「子育て中よ!」
「この状況でそれ言われても意味変わらないよ! 飼育中と変わりないよ!」 (バ)