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6羽



 うな垂れる僕の肩にそっと、とても優しくウサギの手が乗る。

「俺はとんこつ派だ」

「なんの話だよ!」

 ちょっと期待しちゃったじゃん!

「おっちー、朝からうっせーよ」

「お前の所為って、あ」

 しまった! ウサギが変な事を言うからつい大声で突っ込んじゃった!

「と、時計! 今は……九時前……っく!」

 この時間はまだ母親が仕事に行ってない!

 残念……と言うべきかどうかは定かではないが、海外に出張中とかマイホーム購入した矢先に転勤、といった最近流行りの両親不在じゃないんだよ!ここも実家だし!

 そうこうしている間にトントントンと階段を上がる音が聞こえる。早く、早く何とかしないと……。

「ごめん、ちょっとこれ被ってじっとしてて!」

「うおっ」

 先ずはウサギを隠す為に少々手荒な感じではあるがタオルケットをかぶせる。次に小説をベットの下にスライド!それと同時に二階の廊下が軋む音がする。もうこの部屋まで数秒もないぞ!

「おい、おっちー! どうなってんだこれ!」

「おとなしくしてください!」

 ドアの前に人の気配!

「ちょっと、るっくん! 起きてるんなら降りてきて、早くご飯食べなさいよ!」

 声と同時にドアノブに手をかける音がし、既に回されつつある……もう、どうにでもなれ!

「母さんっ、今ドアを開けちゃだめだ! 爆発するぞ!」

 僕の精神が!

「え、おっちー爆発すんの?」

「お前は本当に黙っててよ!」

 もともと動物拾ってくるのすら許されるかどうか怪しいのに、こんなに喋って蹴って可愛いウサギなんてもってのほかだろうな。

 といっても僕も僕でなんで爆発なんて言ったんだ、どう考えても乗り切れそうにないだろ……。

「るっくん、爆発しそうなの?」

 のっちゃったよ!

「……そうよね、男の子だもんね。朝はデリケートよね……」

「そっちか!」

「食べる前にちゃんと手を洗うのよ?」

「わかった! わかったから!」

 もうこの際早く下りてくれるならそれでいい!

 そして母さんが何故か「そうよねぇ」と一言残して部屋の前を去った。助かったけど、助かったけど……!

「そうかそうか! おっちーのおっちーは爆発寸前だったのな、ワリぃな気がつかなくって。俺、ちょっと席外した方がいいか?」

「爆発しそうなのは僕の羞恥心だよ……」

 きっとこれから毎朝から元気な子扱いだ、色んな意味で。というか、『おっちーのおっちー』ってなんだよそれ……。

「もういいよ、僕元気だよ。それより本題だよ、本題……」

「本題か……、そんなことより腹へらね?」

「……そうだね、お腹すくね」

 確かに朝、しかも起きぬけにあんな騒動だ。問題が去ったことによる安心感の所為か、疲労感と一緒に空腹感までやってきた。

「だろ? ちょっと肩借りるぜ」

 そういってウサギは僕の肩に飛び乗り、更に肩を蹴ってジャンプすると器用にドアを開けた。開けた後に誇らしげに胸を張って、僕の方をどうだと言わんばかりに見てくる姿は本当に可愛いなぁ・・・。

「へへっ、んじゃ何か食いもん貰ってくる」

「うん、気をつけてね」

「おーう」

 母さんもやり過ごせたし、アイツが何か食べ物持ってくるまでにちょっと部屋を片付けておこう。いくら子供サイズとは言え、やっぱりごちゃっとした部屋じゃせまいからね。

 あのウサギは変に知識あるみたいだし、食べれる物とそうでない物の区別くらい付くだろう。もしわからなくても母さんに聞きそうだし大丈夫だろう。

「って、大丈夫じゃないだろ!」

 何の為に元気なコになって隠したんだよ! 余りにも自然な流れで普通に見送っちゃったよ!?

 くそ! まだアイツが見つかってない事を祈って早くリビングに行かないと!    (時)


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