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4羽


「といっても目と鼻の先なんだけどね」

 このウサギとは本当に家まであと少しの所で遭遇したもんだ。どんなエンカウント率だよ……。

「は?」

「いえ何も」

「頭でも打ったのかオッチセイ」

「いい感じにおっちーとラッカセイ混ぜんな! オットセイの親戚みたいじゃないか!」

 それに打っていたとしてもお前の所為だろ!

「そうカッカしなさんな、こちとらただのウサギでっせ?」

「ただのウサギがこんなに流暢に喋るわけがない!」

「どうでもいいけど結構でかい声で喋るね、ご近所さんに噂されちゃうぜ?」

「う……」

 確かにこんなのはたから見たら『ウサギに話しかける愉快な大きいお友達』か、『狂った男』のどちらかにしか見えないだろう。どっちも嫌だけど。

「どうしてこうなった……」

「おん? どったのナマオチ」

「本当にどうしてそうなった」

「ヒナセの生のとこと」

「もういいや、入るよ」

「おーう待ってくれよ、こちとら一歩が短いんだ。階段だけでもしんどいのに歩くのはえーよ」

 そう言ってウサギは僕の後ろをぴょこぴょこと二足歩行でついてくる。玄関前の階段にいたっては、両手両足を一生懸命に使ってよじ登る感じだ。

 正直に言おう、何この可愛い生き物。

「ふぃー、この年でまさかこんな運動すっとはなぁ……ん? どうしたいおっちー」

「いや、なにも、ない。だいじょうぶ」

「あ、そう。それともう疲れた、後はおっちーが運んでくれ」

「は? それどういう……!?」

 僕が尋ねるより早く、ウサギは脚をかけのぼるとあっと言う間に僕の頭に。

「ほれ、おっちー。さっさと家に入れてくれ、おらぁもう疲れたよ」

 ウサギが催促するかのように頭をその柔らかな肉球で、肉球でぇぇぇぇぇっ!!

「何故眉間ばかりをたたくんだ!!」

「そりゃ急所だからじゃね?」

「狙うな!」

 途中までウルトラキュートだったのに……。

「あーもー、うだうだ言ってねーではいろーぜー」

 今度は頭の上でじたばたと暴れる所為で、なんとも言い難い柔らかなウサギの肌と毛が僕の首筋に触れては離れる。

 これは、いい。凄くイイ。

「ふ、ふへへ……」

「おっちー、きめぇよその笑い方」

「え? なんですか?」

「いや、何でもないさ」

「そうなの? じゃあ入るよ」

「さっきから入れつってんだろ」

「そうだったね」

 玄関の施錠を解いてこの辺じゃおしゃれな方の扉を開ける。

「ただいまーって言っても真っ暗か」

 家の中は明かりが点いておらず、迎えてくれたのはセンサーに反応したライトだけだ。

「なんでぇ、真っ暗じゃねぇのよ」

「そりゃ夜だからね、もう何時だと思ってるのさ」

「渚のシンドバットか」

「は?」

「今何時、そ~ねだいたいねぇ~っとくらぁ」

「はぁ……」                   (時)


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