32羽
二人で楽しい食事が始まった。
「おっちーはさ、将来何になりたいのか決まってんのか?」
ボロボロこぼしながら聞いてきた質問が意外に真面目っ!
「将来なんてわかんないなー。ウサギたんあと、こぼさないでねっ」
「そっかそっかー。まあそんな年じゃまだ分かんねえよなあ」
ボロボロ……。
「う、ウサギたんって時々年寄みたいな発言するよね」
「え、ああ。もうかなり年いってるからなあ。仕方ねえ」
可愛い見た目と違って中身は年がいっているだとっ! ありえないっ!
「いや、その見た目からだとショt……、十歳いってないよね!」
「うーん、まあ、そうなんじゃね? 俺もよく分かってねえし」
「強がりなウサギたんもキュートッ……。あ、ごめん、爪研ぎ始めないで」
しゃんしゃんと両方の手の爪を鳴らしてウサギたんがこちらを睨んでいる!
1、睨み返す 2、道具 3、餌 4、逃げる。
さすがにこれ以上ケガをすれば最後の晩餐になっちゃうからね。
「ウサギたん、僕の机の引き出しにお菓子入ってるから食べていいよー」
「おっ、まじか! おっちーも気が利くようになってきたなあ」
机をガサゴソと漁るウサギたんの後姿が果てしなく可愛い。可愛い。大事なことなので――
「おっちー……」
「ど、どうしたんだいウサギたん」
鼻血が出そうになるのを必死に食い止める。ハアハア。
「なんで……」
「うん?」
「なんですこんぶじゃねえんだよ!」
「チョイス渋っ!!」 (バ)
なんですこんぶ!? ウサギさんからのご注文はすこんぶですか!?
「す、すこんぶなんて持ってないよ。だって食べた事すらないし……」
商品はお店や祖父母の家でみた事あるけど、あのスッパイデスヨーと主張しまくる臭いがどうも好きじゃない。
「食べたこと無いだと!?」
「え、あ、はい」
「じゃあ茎ワカメは!?」
「なにそれ」
「Oh~マイガッ!!」
僕の即答にウサギたんの耳は完全に萎れ、キュートなお手手で顔を覆う。マジで可愛い、お持ち帰りしたい。いやここ自室か。
「水あめ!」
「聞いた事ある」
「べっ甲あめ!」
「高そう」
「かるめ焼き!」
「するめ焼き?」
「きな粉棒!」
「あれは美味い」
「なんでそれだけ味を知っているんだああああああああああああああああああああ!?」
だって美味しいもん。
さっきからちょいちょい近付きながら声を荒げていたウサギたんは、「ああああああ!!」と言いながら僕を可愛くて柔らかなお手手で突いてくる。
僕の状態を考慮しているのか、突いてくる力は結構弱くてただひたすらに可愛いです。
下手したらこれ、目覚めるかも。 (時)




