31羽
「おっちー」
あはは、ウサギたんが僕の膝の上にちょこんと可愛く座って上目使いでこっち向いてるー。ちょうかわいいー。
「なんだいウサたん」
伯爵のような紳士的な返事でウサギたんへと返事をする。
「おっちーおっちー」
「うん? なんだい、ウサギたん」
「生きてるかー」
ハッと目が開いて自分の部屋の天井が見えた。
「う、ウサギたん! 僕はいったい」
「そんな某中二病の主人公のようなセリフで起きないでくれよ」
某小説、百三十六ページ、三行目のマイ台詞まで覚えているなんて、もうこれは僕のファンだね!
そうは思いつつもやっぱり心に刺さるゲイボルグ。
「幼気な、心に刺さる ゲイボルグ 僕の気持ちは ああどこへ行くかな」
「なに起きた途端に意味わからん短歌述べてるんだよ。大丈夫か? 主に頭が」
「あ、うん。最後の台詞無ければ完治してたよ」
ナデナデ……。
ベチッ!
「そうか、なら別にいいや。母上様がさすがに血が出すぎてきも……じゃなかった、心配だからって言ってたのに。これじゃ心配もいらねえかな。(あぶねえ本音が出るところだった)」
「そっか、母さんも心配するくらい血が出てたんだね。本音出てるからもう精神的にゲイボルグされてるから色々手遅れだけど」
ああー、目が死んでいくー。
「なら、もう俺がここにいる理由はねえな」
「えっ! もうこの物語は終わっちゃうの!?」
「いや、一階に降りるだけだよ。なんだよそれ」
「なーんだ。ならちょっとの間僕は安静にしておくよ」
「おう、そうしとけー。じゃなー」
「寂しいn――」
バタンッ!
「くっそう……最後まで僕の声聞いてから行こうよウサギたん……。 (バー)
風邪をひいて寝込んだ時とか怪我をして入院した時って、健康時よりも精神的に弱まるって言うかなんか寂しくなるよね。入院はしたこと無いけどさ。
「ふっはぁ~あ……。んー、目が覚めたばっかりだけどちょっと眠いな。時計……はここからじゃ暗くてよく見えないか」
眠気もそうだけど、食事の途中で意識を失った事もあって若干空腹気味だ。
「……痒っ」
頭にむずむずする痒さを感じて手をあてると包帯が巻かれた上に、ネットみたいなのを被せて固定されていた。帽子をかぶると痒みを感じる時があるけど、それと同じ感じかな?
そう言えば母さんは昔病院で働いていたらしいし、きっと母さんが捲いてくれたんだろう。正直信じてなかったんだけど、実際に処置をされると信じざるを得ないなぁ。いや、これくらいは一般的にできる処置なのだろうか? やったこと無いから分からないけど、とりあえず下手に触って崩すといけないから痒みは我慢しよう。
「おーいおっちー、生きてるかー?」
僕が大人しく寝ようとした直ぐにノックと同時にウサギたんの訪問。というか、ノックと同時にドア開けるって、ノックの意味なくないか?
「生きてるよ、生きてる。ウサギたんの可愛さを五感フルスロットルさせて生きてるよ」
「ははっ、止めさしてぇー」
「僕の現状から考えて冗談に聞こえないよ」
声質的には笑っているみたいだけどさ。
「まあ、それはその辺に置いといて」
「僕の生死はその辺に置いておける程軽いのか……」
「ほれ、食糧支給」
ウサギたんはベットの近くまで寄ってくると僕の顔に小さな箱と袋、最後にペットボトルを投げてきた。普通に痛い。
「ありが、超いてぇ」
「蟻か蝶どっちかにしろよ、モハ○ド・アリかよ」
「蝶のように舞い蜂の様に刺す……って違うでしょ色々と。誰だって顔に固形物三連撃喰らったら痛いわ!」
特にペットボトル。お手軽サイズ! とラベルに書かれているが、軽い気持ちで人の顔に投げるもんじゃないね。他にもこのカロリーをメイトする箱の角とか、大豆楽しいの袋のギザギザとかが地味に痛い。
「てかこれどうしたの?」
「父上からのプレゼント。食事の途中で倒れて腹減ってんじゃないかって俺様が言ったらよ、これをおっちーに届けてきてくれないかって頼まれたんだ」
俺も一緒に食べて良いんだってさ、とウサギたんはポシェットからスニッカーな感じのズを数本取り出す。僕は大豆楽しいよりそっの方が好きだから好感してほしいけど、「なんか遠足みたい」と言うウサギたんの楽しそうな雰囲気を味わう事が出来たのでもうお腹いっぱいデス。
「父さんにあとでお礼のメール、いや直接言わないとね。それとウサギたんもありがとう」
「おう気にスンな、おっちーも早く食え食え」
「うん、そうだね。でもできればボロボロこぼさず食べて欲しいかな」 (時)




