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27羽



「そうだ、あなた達ちゃんと手を洗ってきなさいよ。一階にも聞こえる程暴れていたみたいだし」

「すまねぇな母上」

 ウサギたんってばそんな目で僕を見るなんて……。ふふ、そうかここが弱いんだねウサギた……。

「おっちーおっちー、今日のメシ何が出ると思う? 俺ラーメンが良いなぁ」

「え、あ……僕は煮魚だと良いなぁ」

「煮魚か、確かに悪くねぇ」

 僕が脳内で汚れた妄想を繰り広げようとしていた所に、ウサギたんとの何の変哲もない普通の会話が始まった。

 ウサギたんはさっきの騒動で疲れたと言い、今は僕の頭にしがみつく様に乗っかっているので声も息遣いも、そしてウサギたんの微かな心音も感じ取る事が出来る。ふふ、ふふふ……ふぎっ!

「アダダダダダ!」

 僕が心中で高笑いしようとしたらこめかみに物凄い圧があああああああ!!

「ウサギたんどうしたの!? いきなり酷いじゃないか……」

「いや、なんかキモイ気を感じたから」

「き、気の所為じゃないかな!! それよりウサギたん、僕が支えてあげるから手を洗いなよ」

「ん」

 ウサギたんは洗面所に手が届かないからね、縁に乗って洗おうにも幅が狭いし何より滑り落ちたら大変だ。だから今回のこれは邪な感情無しの提案で、それが通じたのかウサギたんもすんなりと受け入れてくれた。

 僕は左でウサギたんをバランス良く抱え、右でレバーを上げる。我が家の蛇口が捻るタイプじゃなくてレバーの上下で水量、左右で温度調節タイプだった事に喜んだのは小学生以来だろうか。

「おー、つめてー」

 ウサギたんのキュートでラブリーなおてての毛に水が当たり、すっとふわっとしていた所がどんどん本来の大きさをあらわにしていく。思っていたよりも一回りほど小さかったんだな、ウサギたんの手。……手、と言うか前足? まあ手でいいや。

「おっちータオルー」

「はい」

 洗面台の下にかかっているタオルでウサギたんの手を優しく丁寧に、宝石を扱うかの様な手つきで拭く。多分タオルを取ってくれっていう意味で言われたんだろうけど、僕はこの僅かな時間でもウサギたんとほぼ零距離を無駄にしたくないし長く味わいたいんだ!

「おー、このタオル柔らけぇ」

「新品の洗濯したてだからね」

 右手を拭き終えたから次は左。ウサギたんもタオルの肌さわりと僕の拭き方に満足しているのか、気持ち良さそうに目を細め出して僕の理性にコブラツイストをかける事によって押さえ込む。

「はい終わったよウサギたん」

「さんきゅー」

「いいのいいの」

 こちらこそありがとうございます!! と言葉にしないで、笑顔で他の言葉を吐き出す事に成功。僕はウサギたんに出逢ってから、声として出ない様に本心を叫ぶスキルをマスターしたようだ。    (時)


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