23羽
「堕?」
「絶対今字が違ったよなぁ! エターナルにもちょこちょこ出してたけど、厨な感じの病の間に二をはさんだ三文字の方々が好みそうな方だったよねぇ! 絶対!!」
「うお、すげーなよくわかったな」
「エスパーですから!」
「あ、脇腹かゆい」
「そんな態度も嫌いじゃない!」
「受け入れ始めやがったこいつ……」
「ウサギたん限定でね」
実の親からのは受け入れるのが難しいと言うか、事実として受け入れたくない物があるからね。でもウサギたんからのなら愛情表現の一種だと脳内変換させれば問題ない、愛とは偉大なり。
「にしてもおっちーさぁ」
「うん?」
「あ、ちょっと待ってね」
「うん」
僕の初期あだ名で呼びながら、ベッドの上によじ登るウサギたん。ちょっと待ってねとはベッドに昇りたいからか。言ってくれたら僕が乗せてあげるんだけど、多分嫌がるだろうな。
ウサギたんの小さなお尻に着いた柔らかそうな尻尾が、足を動かすたびに連なってふりふりと揺れ動く様子はさながら猫じゃらしの様だ。飛びついても良いかな? いや、さらなる出血の未来しか見えねぇ。
ウサギたんがベットによじ登るのに苦戦している間に救急箱と、スタンドタイプで文庫本くらいの大きさの鏡を用意。それなりに放置していたけど、そろそろ自分で何とかしないとね。……待ってても誰もやってくれないし。
「うぅぁあああ、あっいっひぃぃぃぃ」
ガーゼに含ませた消毒液が傷口に染みる所為で情けない声が出る。とりあえず傷が額と頬、それと鼻の頭だけでよかった。ああでも、暫くは絆創膏フェイスになっちゃうなぁ。
「お? おっちー何その鏡、女くせー」
若干息が荒く偏見丸出しの声がベットの方から僕の方へ、どうやらウサギたんはようやくベットに上がれた様だ。軽く肩が上下している姿も愛くるしいと思います、はい。
「女くさいって、そんなこと無いだろ」
僕が使っているのは真っ白で長方形の鏡で、特に装飾もなければ柄ものでもないシンプルなものだ。僕自身が消毒液臭いなら分かるけど、女くさくは無いだろう。……前者は別にいらなかったな。
「鏡は女の持ち物か或いは軟派な野郎のする事よ、おっちー。まあ、床屋や服屋で大きさを確認する時はしょうがねえやな」
ウサギたんは腕を組むように交差させるが、まあウサギだし? 腕短いし? 出来てないよねー、うん可愛い。言わないけど、すっごく可愛い。
「ほんとにラブリーだ」
「は?」
「ああ、いや。そうかな~って思っただけだよ」
無理だとは思うけど、とりあえず誤魔化す。可愛いとは言わなかったけど、別の本音がにゅるっと漏れ出てしまった。
「男だって鏡くらい見るよって話。今の時代は髪型決めるのにも鏡がないと不便だし、男の人でも化粧するからね。勿論僕はしないけど」
化粧なんてよくらからないし、面倒くさそうだからね。
「男で化粧? そいつは歌舞伎かなんかの役者かよ」
「そこまで真っ白にしてる人は見たこと無いかな……」
「確かになぁ、そんな奴が街中を歩いてたら五人中四人は振りむくよな」
「僕は振り向かなかった一人の方が気になるけどね」 (時)




